世界のインフルエンザ流行について(更新15)

2016年8月8日:WHO(原文[英語]へのリンク[PDF形式:711KB]

WHOから発表された2016年7月24日までのデータに基づくインフルエンザの活動状況です。3月末以降、アメリカ大陸およびヨーロッパ地域からの報告が各地域のサイト情報で掲載されるようになりました。そのため、今回はアジア熱帯地域の詳細情報のみを追記し、これらを除く地域については要約のみを記載しています。詳細は、参考に示された各サイトを基に原文をご覧ください。

要約

南半球温帯地域の国々では、インフルエンザの活動にバラツキがみられました。この数週間、南アフリカでは着実に活動が高まってきましたが、オセアニアではほとんどの国で活動が全体的に低い状態でした。北半球温帯地域におけるインフルエンザの活動は、オフ・シーズンのレベルにあります。

  • 南米熱帯地域では、チリとパラグアイで、インフルエンザ様疾患(ILI)および重症急性呼吸器症候群(SARI)の指標が上がり続けていました。チリでも、インフルエンザの活動が高まりを続け、パラグアイでは平衡状態となりました。ウルグアイからは情報が入ってきていません。チリとパラグアイでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBウイルスとが同時に伝播していました。アルゼンチンでは、インフルエンザの活動が低下してきていました。しかし、インフルエンザ様疾患(ILI)と重症急性呼吸器症候群(SARI)の活動は高い状態のままでした。増加傾向は示していません。南米熱帯地域では、RSウイルスの活動が高い状態に留まっていました。
  • アフリカ南部温帯地域の国々では、インフルエンザ様疾患(ILI)による受診者の間で、インフルエンザの検出数が増えてきました。注目すべきことに、体勢がインフルエンザBウイルスからインフルエンザA(H3N2)ウイルスに移ってきました。
  • オセアニアでは、インフルエンザ・ウイルスの活動が僅かに高まってきましたが、まだ低い状態でした。オーストラリアとニューカレドニアでは、この数週間、インフルエンザA(H3N2)を主体にインフルエンザの活動が高まってきていましたが、ニュージーランドでは、インフルエンザの活動は低い状態が続いていました。ニュージーランドでのインフルエンザ様疾患(ILI)の活動は、年間のこの時期としては低い状態でした。
  • カリブ海地域の国々では、インフルエンザBの検出が低いレベルで続いていました。この他の呼吸器系ウイルスの活動は、総じて低い状態でした。いくつもの国で、重症急性呼吸器症候群(SARI)の患者数および入院患者数が少しずつ減ってきました。
  • 中米のエルサルバドルでは、インフルエンザと他の呼吸器系ウイルスの活動が低い状態に留まっていました。パナマでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の検出数が減少を続けていましたが、インフルエンザ以外の呼吸器系ウイルスの検出数は増加してきました。コスタリカではインフルエンザの活動は低い状態したが、他の呼吸器系ウイルスの活動はRSウイルスの活動を主体に高まってきました。
  • 南米熱帯地域では、ほとんどの国で、この数週間はインフルエンザA(H1N1)pdm09とRSウイルスの活動が低下してきたか、低い状態に留まっていました。コロンビアでは、重症急性呼吸器症候群(SARI)の活動が低下してきましたが、昨年の同時期と比べると高いレベルにありました。エクアドルでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の検出数が減ってきました。ペルーでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBの同時流行は終息しつつありますが、RSウイルスに伴い、他の呼吸器系ウイルスの検出数は増加していました。エクアドルでは、レベルは低いものの、RSウイルスとインフルエンザ・ウイルスの検出による重症急性呼吸器症候群(SARI)がやや増加しました。
  • 南アジア熱帯地域では、インフルエンザAとインフルエンザBが同時に伝播しながらも、総じてインフルエンザの活動は低い状態でした。
  • アフリカの北部温帯地域と中央部熱帯地域では、全体的にインフルエンザの活動が低い状態でした。この間に報告のあった国の中で、アフリカ西部では主にインフルエンザA(H3N2)の検出が、アフリカ東部と北部では主にインフルエンザBウイルスの検出が、それぞれに報告されました。
  • 北米およびヨーロッパでは、インフルエンザの活動が低い状態でした。その中で、インフルエンザBが検出されました。インフルエンザ様疾患(ILI)のレベルは、流行シーズンの基準値を下回りました。
  • アジア温帯地域では、インフルエンザの活動が低い状態でした。その中で、インフルエンザBが検出されました。
  • 2016年7月11日から2016年7月24日までのデータが、FluNet(協定世界時間2016年8月5日 03:43:59まで)に基づき、63の国と地域にある国立インフルエンザセンター(NICs)とその他の国立インフルエンザ研究施設から集められました。WHO世界インフルエンザ・サーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、この間に33,674本を超える検体が検査されました。インフルエンザ・ウイルスが陽性となった検体は1,772本で、このうち1,149検体(64.8%)がインフルエンザA型、594検体(33.5%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、453検体(50.3%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、447検体(49.7%)がインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、75検体(29.6%)がB-山形系統で、178検体(70.4%)がB-ビクトリア系統でした。

アジア熱帯地域

アジア南部では、インフルエンザの活動が低い状態でした。その中で、インフルエンザAウイルスとBウイルスが伝播していました。バングラデシュでは、この数週間、主にA型(H3)、ときにB型ウイルスによるインフルエンザの活動の高まりが報告されました。

東南アジアでは、インフルエンザの検出数が増えてきました。その中でインフルエンザA(H1N1)pdm09、A(H3)、およびインフルエンザBウイルスの何れもが検出されました。インフルエンザA(H3N2)とBウイルスの何れもが報告されたシンガポールでは、この数週間で検出数が増えてきました。カンボジアでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とB-ビクトリア系統のウイルス検出数の増加が報告されました。インフルエンザA(H1N1)pdm09とB型のウイルス検出数の増加は、インフルエンザA(H3N2)の伝播をともなって、フィリピンとベトナムでも着目されました。

出典

WHO. Influenza Update number 269. 8 August 2016
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/2016_08_08_surveillance_update_269.pdf?ua=1[PDF形式:703KB]

参考サイト

アメリカ大陸[北米、中米、カリブ海、南米の熱帯地域、南米温帯地域]

AMRO

ヨーロッパ、中央アジア

EURO

https://flunewseurope.org/