ポリオウイルスの国際的拡大に関する国際保健規則(IHR)緊急委員会第10回会議でのWHO声明

2016年8月22日 WHO (原文[英語]へのリンク

国際保健規則[IHR(2005)]に基づき、ポリオの国際的感染拡大に関する第9回緊急委員会が、事務局長の要請により招集され、2016年8月11日にテレビ会議によって開かれました。
緊急委員会では、野生型ポリオとともにワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)の感染伝播についてもデータが検討されました。
事務局は、これまでに緊急委員会によって議論されたIHRに加盟する全ての感染発生国の進展状況に対する報告書全文を提出しました。アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリアのIHR各加盟国からは、前回2016年5月12日に開かれた委員会の後の一時勧告の実施状況の更新情報が提出されました。

野生型ポリオ

委員会は、ボルノ州GwozaとJereの2つの異なる地方行政地域(LGA)から、7月に野生型ポリオ1型による急性弛緩性麻痺の小児患者2人が新たに報告されたことに深い憂慮を示しました。委員会は、遺伝子解析で、2つの検出されたウイルスが数年間は検出されていなかったウイルスの伝播であることが示されました。これらの患者の存在は、ボルノ州からは2016年5月にワクチン由来のポリオウイルス2型も報告されており、数年前からポリオウイルスが検出されることなくこの地域で伝播しており、調査活動との間に大きな解離があることを示しています。このような解離は、この州では最近になって調査できない地域が増えているために悪化しています。委員会は、Gwoza地区がカメルーンの極北州との間で長く国境を接し、調査にも入れないことを考え、懸念を示しました。ボルノ州がカメルーン、チャド、ニジェールと国境を接し、チャド湖の湖岸地域ではポリオウイルス伝播の歴史があることから、委員会は、これら4か国における国際的な(ウイルスの)拡大へのリスクが極めて高くなっており、既に起きていても不思議ではないと結論づけました。さらなる拡大は、世界における(ポリオの)撲滅に向けた進展を大幅に遅らせることになります。緊急委員会は、ポリオ対策のための政府基金の供給が遅れていたことを理由に、2016年にはナイジェリア・ポリオ大統領諮問委員会が開かれていなかったことに懸念を示しました。

委員会は、アフガニスタンとパキスタンの間で行われている活動が両国間で(ウイルスの)疫学的なブロックを作り上げていることから、両国の長い国境における協力体制が重要な役割を果たしていることを改めて賞賛しました。委員会は、パキスタンでは2016年に感染伝播が減少していることの一貫した証拠があり、力強い進展が見られることと、パキスタンが今年中に撲滅を終える決意を示していることを歓迎しました。委員会は、これらの取り組みの結果、前回の会議以降、パキスタンとアフガニスタンの間で野生株ポリオウイルスが国際的に広がっていないことに満足の意を示しました。

両国の国境でのワクチン接種は、年齢が10歳未満の子どもに限られているものの、空港から出発する旅行者には、全ての年齢層の者にワクチンを接種する努力が行われています。委員会は、一部の外国大使館がアフガニスタンから出国する旅行者のビザ申請手続きの一部として、ポリオワクチンの接種証明を含むことを採用し、一時勧告の実施を行いやすくしていることでアフガニスタンでも(対策が)進展していることに満足の意を示しました。

委員会は、赤道ギニア(最後の患者発生は2014年5月3日)とカメルーン(最後の患者発生は2014年7月9日)では24か月以上に亘りポリオウイルスの新たな感染がなく経過しているものの、どちらの国も、まだ最終報告書を提供していないことを指摘しました。また、赤道ギニアは(感染への)調査体制の指標が弱く、定期予防接種に対する懸念があり、カメルーンは現在、ナイジェリアからの野生株ポリオウイルスの感染輸入に対して脆弱な状態にあります。

ワクチン由来ポリオウイルス

委員会は、前回2016年5月の会議以降、新たにワクチン由来のポリオウイルスの感染例がなかったことを議題に取り上げました。
ギニアでは、患者の発生は、最後の患者が2015年12月に発症した1つの地域(カンカン)に限定されたようです。しかし、積極的な調査活動は最近始まったばかりであり、見逃している感染伝播の可能性が否定できないため、委員会は周辺地域に広がるリスクが中等度から高度にあると見ています。また、隣接するリベリアとシエラレオネの調査体制の指標は必要な基準を下回っており、これらすべての国では、調査活動を強化するためにさらに多くの取り組みが必要とされます。

委員会は、ナイジェリア北東部ボルノ州Maiduguriで2016年3月に環境中の試料からワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)が検出されたことへの大きな懸念を示しました。委員会は、ナイジェリア政府によって極めて厳密な感染発生への対策が進められているものの、新たに発生した野生型ポリオウイルス1型が発生しており、感染対策を複雑にしていることを議題に取り上げました。

2015年10月5日にミャンマーのRakhine(ラカイン州)で、2016年1月11日にラオスのVientiane(ビエンチャン県)で、2015年8月22日にマダガスカルのSud-Ouest 地方で、最近、それぞれに感染発生したことの評価は大きな進展を示すものでした。しかし、感染伝播の持続が不確実なことから、状況と調査結果との間には解離があります。

ウクライナでは、2015年にワクチン由来のポリオウイルス1型2例が発生し、ポリオウイルスの感染伝播が停止し、今では最後に発生した患者(2015年7月7日)から13か月が経っているため、感染の発生は終息したと結論付けられています。

国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に対する結論

委員会は、ポリオの国際的な感染拡大が、現在も国際的な懸念に関する公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)にあることに全会一致で合意し、さらに3か月間一時勧告を延長することを助言しました。委員会は、この結論に達する中で以下の点について議論しています。
●ナイジェリアでの新たな野生型ポリオウイルス1型の発生は、何年間も発見されることなく野生型ポリオウイルスが存在し続けていたことから、調査に入れずに妥協されていたハイリスクの地域があることの強調。チャド湖周辺での感染伝播のリスクは極めて高くなっているとみられていること。
●2015年も2016年もパキスタンとアフガニスタンでは野生型ポリオウイルスの国際的な感染拡大が続いていること。
●これまでの歴史の中で、現在の特別な、いままでにない状況は、ポリオ根絶にさらに近づいていること。
●世界で最も深刻ではあるがワクチンでの予防が可能な疾患の一つを地球上から根絶することに失敗したときに発生するリスクと結果としての費用は莫大であること。世界規模での感染伝播は劇的に減少し、国際的に拡大する可能性が低下しているものの、国際的な拡大が起これば、その結果と衝撃は深刻なものとなること。
●ポリオ患者の数が減り続け、撲滅の可能性が見え(現状に対し)世界が自己満足する可能性があること。
●野生型ポリオウイルスに対して予防接種とサーベイランスを向上させ、国際的な感染拡大の阻止および新たな感染リスクを軽減させるために国際協調の下での対策を続けることの必要性。
●紛争や複雑な緊急事態によって予防接種体制の弱体化や崩壊が生じた国が増えることで、さらに国際的な感染の拡大が深刻な社会的影響をもたらすこと。これらの不安定な地域の人々はポリオに集団感染しやすくなっています。感染しやすい状態での患者の発生は感染の制御を極めて困難とし、最終局面で世界からポリオを根絶することの完結を脅かします。
●ポリオの国際的な感染拡大は国境を越えて発生することが多いため、地域での感染対策の推進と国境での協力体制の強化が重要であること。一方で、ポリオの感染伝播が活発な地帯から遠隔地に感染が国際的に拡大するリスクがあることの認識が必要であること。
●さらに、ワクチン由来のポリオウイルスに関して以下の点について議論しています。
・cVDPVsは国際的な拡大に対するリスクを有しており、適切な措置と緊急の対策を講じなけれ
ば、特に、既に述べられたような感染しやすい人々では脅威となること。
・4つのWHO地域事務局の地域でのワクチン由来のポリオウイルス(VDPV)の出現と伝播は、
ポリオ根絶の終盤の重要な時に、地域の人々の免疫応答には大きな解離を示していること。
・2016年4月に2型の経口ポリオワクチンを世界同時に撤退させたことに続き、ワクチン由来の
ポリオウイルス2型(cVDPV2)を撲滅させることの緊急性が特に高いこと
・エボラを含めて、環境の不安定な状態やその他の緊急事態によって感染が発生する地域で
定期予防接種を向上させる取り組みを継続させること
・不活化ポリオワクチンは世界中で不足しており、新たな取り組みが必要であること

リスクの分類

委員会は、リスク分類に基づいて、野生型ポリオウイルスとワクチン由来のポリオウイルスの国際的拡大のリスクを軽減することを目的とした以下の助言を事務局長に提出しました。

野生型ポリオウイルス
●現在、野生型ポリオウイルスを感染輸出している国
●野生型ポリオウイルスの感染はあるが、現在は感染輸出していない国:もはや野生型ポリオウイルスの感染はいないが、国際的な拡大に対し脆弱な国

ワクチン由来のポリオウイル
●現在、ワクチン由来のポリオウイルスを感染輸出している国
●ワクチン由来のポリオウイルスの感染はあるが、現在は感染輸出していない国
●もはやワクチン由来のポリオウイルスの感染はいないが、国際的な拡大に対し脆弱な国

委員会は、新たな感染輸出の検出に対する期間と野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来のポリオウイルスの新たな患者または環境分離株の検出に対する期間の以下の基準での評価に更新し、適用しました。

もはや感染輸出のない(新たな野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスの感染輸出の検出がない)国の評価に対する判断基準:
●ポリオウイルス感染者:最新の感染輸出による最初の症例が発症した日に加えて、患者発見、調査、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月、もしくは、最新の感染輸入により発生した直近の患者から12か月以内に発症し報告された急性弛緩性麻痺の全患者がポリオに対し検査され、新たに感染輸入された野生株1型とワクチン由来のポリオウイルスが除外され、かつ、最初の患者から12か月以内に集められた環境サンプルも陰性となり、何れもが続いているとき。
●感染輸出された野生型ポリオウイルスの環境下からの分離:新たに感染輸出を受けた国の環境下での最初の陽性検体の採取に加えて、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。

もはや感染のない(新たな野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスの検出のない)国の評価に対する判断基準:
●ポリオウイルス感染者:最新の患者が発症した日に加えて、患者発見、調査、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。もしくは、直近の患者から12か月以内に発症した急性弛緩性麻痺の全患者がポリオに対して検査され、野生株1型とワクチン由来のポリオウイルスが除外され、かつ、直近の患者から12か月以内に集められた環境サンプルが陰性となり、何れもが続いているとき。
●野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルス(ポリオウイルス感染者がいないこと)の環境下からの分離:最新の環境下で陽性検体が採取された日に加えて、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。

一時勧告について

現在も野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスを感染輸出している国
現在の対象は、パキスタン(野生株ポリオウイルスの最後の感染輸出日は2016年2月1日)とアフガニスタン(野生株ポリオウイルスの最後の感染輸出日は2015年6月6日)です。

感染輸出している国には、以下の行動の実行が求められます。
●もしまだであるなら、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝播の阻止が国家の公衆衛生上の緊急課題であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われている国では、この緊急課題が継続された状態にあることを宣言すべきです。
●全ての年齢での、全ての住民と4週間以上の長期滞在者は国際渡航の12か月前から4週間前までに1回のポリオ生ワクチン(OPV)又は不活化ワクチン(IPV)の接種を受けていることを確認すべきです
●4週間以内に急な旅行を行う人々で、12か月前から4週間前までにポリオ生ワクチンもしくは不活化ワクチンを接種していない人は、出発までに1度はポリオワクチンを接種していることを確認すべきです。これでも、有益性があります。特に、これは頻繁に旅行する人に当てはまります。
●そのような渡航者には、IHR(2005)別添6で明記された国際予防接種証明書がポリオワクチンの接種記録としてまた接種の証明書として発行されていることを確認すべきです。
●適切なポリオ予防接種の書類を欠いたままではいかなる住民も海外渡航を出発の時点で制限すべきです。これらの勧告は、渡航の手段(例えば、陸、空、海)に関係なく、すべての出発地から海外渡航する者に適用されるべきです。
●パキスタンとアフガニスタンとの国境を越える人々の移動は野生型ポリオウイルスの感染輸出を助長し続けることを認識しておくべきです。両国は、実質的には、国境を越える渡航者とハイリスクの国境に住む人々に対してワクチン接種率を高めるために、国、地域、地方レベルで協力体制を確実に向上させる国境での努力をさらに強化させる必要があります。両国は長年にわたり主要な国境検問において永続的な予防接種チームを維持してきました。国境での努力の協調体制の改善には、より密接な管理、国境通過点での接種ワクチンの品質の監視とともに、国境を越えた後にワクチンを接種していないと識別される渡航者の割合を追跡することを組み入れる必要があります。
●これらの対策は以下の基準が達成されるまで継続されるべきです。(i)新たな感染輸出がなく、少なくとも6か月を経過すること、(ii)すべての感染地域やハイリスク地域で質の高い根絶活動が完全に実施されたことの証拠となる書類を提出すること、そのような書類が提出できない場合には、その国が "もはや感染輸出のない国"の上記の基準を満たすまでこれらの対策は継続されること。
●渡航が制限された住民の数とワクチンを接種し出発の地点で適切な予防接種の書類を提供した渡航者の数を含め、海外渡航での月別実施件数に関する一時勧告の報告書を事務局長に引き続き提供することが求められています。

野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来ポリオウイルスの発生があるが現在は感染輸出のない国

野生型ポリオウイルス1型の感染が発生している国
・ナイジェリア(最後の感染発生は2016年7月13日)

ワクチン由来ポリオウイルスの感染が発生している国
・ナイジェリア(最後の環境試料からの分離が2016年3月23日)
・ギニア(最後の感染発生は2015年12月14日)
・マダガスカル(最後の感染発生は2015年8月22日)
・ラオス(最後の感染発生は2016年1月11日)
・ミャンマー(最後の感染発生は2015年10月5日)

これらの国には、以下の行動の実行が求められます。
●もしまだならば、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝染の阻止が国家の公衆衛生上の緊急課題であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われているならば、この緊急課題が継続されていることを宣言することが必要です。
●全ての住民と4週間以上の長期滞在者は海外渡航の12か月前から4週間前までに1度ポリオ生ワクチン(OPV)又は不活化ワクチン(IPV)の接種を受けることを推奨すべきです。4週間以内に急な旅行を行う人々には、出発までに1度はポリオワクチンを接種することを推奨すべきです。
●そのようなワクチン接種を受けた渡航者はポリオワクチン接種状況の記録を適切な文書で所有していることを確認すべきです。ポリオウイルスの早期発見のためのサーベイランスを強化するために、地域の協力体制と国境を越えた協力体制を強化し、実質的に難民、渡航者、国境を越える集団でのワクチン接種率を高めることが必要です。
●これらの対策は以下のような基準が達成されるまで継続されるべきです:(i)少なくとも6か月間、国内のどのような検査検体からも野生型ポリオウイルスの感染伝播が検出さずに経過すること、(ii)すべての発生地域とハイリスク地域で質の高い根絶活動が完全に実施された証拠文書を提出すること。これらの対応の証拠文書が提出できない場合には、その国が "もはや感染輸出のない国"の上記の基準を満たすまでこれらの対策は継続されること。
●感染伝播の証拠なく12か月間を終えたときには、一時勧告を実行するために取られた対策の報告書を事務局長に提供することが求められています。

もはや野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルスの感染のない、しかし国際的な感染拡大を受けやすく、ワクチン由来ポリオウイルスの出現と伝播が起こりやすい国

現在の対象は、ソマリア、赤道ギニア、カメルーン、ニジェール、チャド(WPV1)、ウクライナ(cWDPV1)です。

これらの国には、以下の行動の実行が求められます。
●地域の人々の免疫機能を押し上げるために、定期予防接種を早急に強化すること。
●検出されなかった野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスが伝播するリスク、特にリスクの高い移動民と感染しやすい人々の間でこれを軽減するために、調査活動の質を向上させること。
●移動民、国境を越える人々、国内避難民、難民やその他の感染しやすい人々へのワクチン接種を確実に実行する取り組みを強化すること。
●野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの速やかな発見とハイリスクの集団へのワクチン接種を確実に実行するために、地域協力と国境を越えた連携を強化すること。
●質の高い調査活動とワクチン接種活動の全てに適応性のある手順書を作成し、これらの対策を維持すること。
●野生型ポリオウイルスまたは新たに出現し伝播するワクチン由来ポリオウイルスの再侵入の証拠なく12か月を経過させたときには、一時勧告を実施するために講じた対策について事務局長に報告書を提出すること。

採集報告の提出が必要とされる国と予定は以下のとおりです。

160824_polio_table.jpg

註1:ニジェール、チャドは、これまで一時勧告の対象となっていませんが、委員会は、ナイジェリアでの特殊な状況がこれらの国(とカメルーン)を感染に対し極めて脆弱なものにしており、脆弱性をもつ国には一時勧告が国際的な拡大へのリスクを制限するためにが適切であると結論付けました。
註2:赤道ギニアとカメルーンでは延滞報告があり、現在、疫学的な状況は脆弱性が高まっていることを示しています。

全ての感染国に対する追加の検討事項

委員会は、IHRの下で一時勧告の実施計画に重要な時期にすべての感染国に最適な支援を行うことを、強く世界の加盟国に求めました。ワクチン由来ポリオウイルスがこれ以外のポリオが撲滅された国における定期予防接種計画の中で(現状との)深刻な解離状態があることを認識しながら、委員会は、定期予防接種の国際支援組織(例えば、GAVI Alliance[ワクチンと予防接種のための世界同盟])などが感染の発生している国に対して国全体の予防接種計画の向上を支援することが必要であると促しました。チャド湖に対しては、早急にポリオ合同対策委員会を結成するなどの地域的な機構への投資が必要とされます。

委員会は、感染輸出が発生している国に出発する前に国際渡航を行う者にはワクチン接種が求められるという一時勧告を実行する上での公衆衛生状のコストとベネフィットの分析を検討しました。最初の分析では、この方法は航空旅行がポリオを伝播させる十分な証拠があることからコストに見合う効果があり、国際的に長距離の拡大を防ぐ効果があることが示唆されています。委員会はさらに、空港での予防接種への介入を実施するための人的資源を投入することによる機会費用を考慮した対費用効果に対する分析を求めました。そして、委員会は、この結果にかかわらず、パキスタンとアフガニスタン両国は航空機による移動を利用するたくさんの出稼ぎ労働者を抱えていることから、これらの国際旅行における勧告の実施は、両国および支援機関によって援助を続けられる必要があることを議題に上げました。

委員会は、簡単にポリオの再興に繋がる自己満足を避けることを全ての国に促しました。特に、調査活動では、あらゆる再興による感染伝播を素早く発見するために細心の注意を払う必要があります。

野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの伝播に関する助言、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリアからの報告書に基づき、事務局長は、委員会の評価を受け入れ、2016年8月22日にポリオウイルスに関する状況が、野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの両方に対して、国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に該当すると決定しました。事務局長は、「現在も野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスを感染輸出している国」、「野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来ポリオウイルスの発生があるが現在は感染輸出のない国」、そして「もはや野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルスの感染のない、しかし国際的な感染拡大を受けやすく、ワクチン由来ポリオウイルスの出現と伝播が起こりやすい国」に対する委員会の一時勧告に署名しました。そして、事務局長はIHRの下で委員会によって改定されたものとして、2016年8月22日から有効となるポリオウイルスの国際的な拡大のリスクを軽減させるための一時勧告を延長しました。

事務局長は、委員会委員とアドバイザーの助言に対して感謝を述べ、3か月後に現在の状況の再評価を行うことを要請しました。

出典

WHO.Media center news.WHO Statements. 22 August 2016
Statement on the10th IHR Emergency Committee meeting regarding the international spread of poliovirus.
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2016/10th-ihr-emergency/en/