2016年のニュース

条虫症/囊虫症について (ファクトシート)

2016年8月 WHO(原文[英文]へのリンク)

要点

条虫症は、成熟した条虫による腸管感染症です。
条虫症は、加熱が不十分の豚肉に潜む条虫の幼虫嚢胞(嚢虫)を摂取することで人に感染します。
条虫を保有する人は、便中に条虫卵を排出するため、その便が外部に排泄されると環境を汚染します。
(したがって)人は、衛生状態の悪い場所で、汚染した食べ物や飲料水を摂取することで有鉤条虫に感染することもあります。
摂取された卵は幼虫(囊虫と呼ばれる)に成長し、体内に侵入します。これらが中枢神経系に入り込むと、てんかん発作などの神経学的症状(神経嚢虫症)を引き起こすことがあります。
有鉤条虫は、人が放し飼いの豚とともに緊密に生活する環境で疾患が常在する地域では、てんかん患者の原因の30%を占めます。
世界でてんかんを罹っている5000万人のうち80%以上は低所得や低から中所得の国々に住んでいます。

概要

 条虫症は2種類の条虫によって起こされ腸管感染症です。最も重要なヒト条虫感染症は、有鉤条虫(Taenia solium:ブタ条虫)と無鉤条虫(Taenia saginata:ウシ条虫)によって起こります。

 人は加熱が不十分な牛肉を摂食したときに無鉤条虫に感染することがあります。しかし、無鉤条虫による条虫症は人間の健康環境に与える衝撃は軽微です。

 人が生または加熱が不十分な(有鉤条虫に)感染した豚肉を食べると、有鉤条虫の感染が起こります。この感染は、人間の健康に破壊的な影響を与えることがあります。その主な理由は、不衛生な環境が招く結果として、(human cysticercosis:ヒト囊虫症からの)条虫を含んだ食べ物や飲み物を摂取し、有鉤条虫の虫卵によって感染することがあるからです。この場合、条虫の幼虫(cysticerci:囊虫)は、筋肉、皮下組織、眼や中枢神経に達します。囊虫が脳内に達したときの病態は、神経囊虫症と呼ばれています。症状は、激しい頭痛、失明、痙攣、てんかん発作などで、それは致死的です。世界的には、神経囊虫症はてんかんの中でも最も頻繁にみられる予防可能な原因ですが、寄生虫が常在する国では全てんかん患者の約30%にもなります。

 嚢虫症は、主にアフリカ、アジア、ラテンアメリカの発展途上国で、その中でも零細な農業地域に住む人々の健康と生活に影響を与えています。また、嚢虫症は、豚や牛の市場価値を低下させ、食品としての安全性のない豚肉を作ります。2015年には、WHOの食品媒介性の疾病負脅威と疫学の基準グループは、障害調整生命年(DALYs)が合計で280万年になると算出し、T. soliumを食品媒介疾性患による主な死亡原因と認めました。

 T. soliumによる有鉤条虫囊虫症は、2010年にはWHOの主要な顧みられない熱帯病のリストに追加されました。

感染経路

 条虫症は、加熱が不十分な豚肉や牛肉に潜む囊虫を不用意に摂食することで人に感染を成立させます。

 一旦、人の体内に入ると、囊虫は腸管内で成熟した条虫となって寄生し、便とともに卵保有分節片(セグメント)を排泄します。

 囊虫症は、片節や虫卵を摂取したときに感染し、幼虫(囊虫)が身体中を移動して、臓器組織で嚢胞を形成します。これは、豚や牛からの自然感染の経路ですが、有鉤条虫症はT. soliumの虫卵を含む土壌や飲み水、食べ物(主に野菜)を取り込んだときにも、人に容易に感染します。

 条虫症や(神経)囊虫症は、豚や牛が人の糞便と触れる環境で畜産が行われる地域では身近にみられます。

症状

 有鉤条虫や無鉤条虫による条虫症は、通常、軽度で非特異的な症状で特徴づけられます。囊虫を経口摂取し6-8週間が経過すると、腸内で条虫にまで十分に成熟し、その頃に、腹痛、吐き気、下痢や便秘が発現します。

 これらの症状は、その後の治療で条虫が死ぬまで続く可能性があります。治療しければ何年も寄生する可能性があります。

 有鉤条虫T. soliumの囊虫症の患者では、潜伏期間は様々で、感染者でも何年も症状がないことがあります。

 いくつかの流行地域(特にアジア)では、感染者の皮膚の下(皮下)に肉眼的または触知可能な結節(触知で検出できる小さい瘤や結節)が形成されることがあります。神経囊虫症は、宿主の免疫応答や寄生虫の遺伝子型に加え、寄生虫数、大きさ、病期と病理学的変化を起こしている場所に応じて様々な症状や所見が関係してきますが、臨床症状がないこともあります。症状には、慢性頭痛、失明、発作(再発性の場合はてんかん)、水頭症、髄膜炎、認知症および中枢神経系病変の占拠部位に起因する症状などがあります。

治療

 条虫症は、プラジカンテル(5-10mg/kg、一回投与)またはニクロサミド(大人と6歳より大きい子供:2g、下剤使用2時間後、軽い朝食後に1回投与; 2-6歳の子供:1g; 2歳未満の子供:500mg)で治療することができます。

 現在は、神経囊虫症に対する標準ガイドラインが存在せず、治療は個々の症例に合わせて調整する必要があります。嚢胞を破壊すると炎症反応につながる可能性があるため、活動性疾患での治療には、プラジカンテルおよび/またはアルベンダゾールの長期の治療を行い、平行してコルチコステロイドおよび/または抗てんかん薬による支持療法、そして時には手術が行われます。投与量と治療期間は、主に嚢胞の数、大きさ、場所、嚢虫の成長段階、嚢虫を取り巻く炎症性浮腫、臨床症状や所見の急性度や重症度に依存し、大幅に変わります。

予防と制御

 有鉤条虫T. soliumを予防し、感染管理し、できる限り排除するには、獣医学、人間の健康学、環境学にまたがるアプローチからの適切な公衆衛生上の介入が必要とされます。有鉤条虫T. soliumを感染管理するためには、各国の発生状況に基づいて設計されたさまざまな組み合わせによる8つの介入法があります。

 有鉤条虫の制御のため8つの主要な介入:
・ 予防化学療法の利用(アクセス)
・ 条虫症患者の発見と治療
・ 健康教育
・ 衛生環境の改善
・ 豚の飼育環境の改善
・ 豚の駆虫治療
・ 豚の予防接種
・ 食肉検査と食肉加工過程の改善。

 まだ、人と豚の有鉤条虫T. soliumの条虫症/囊虫症の分布地図に関して信頼できる疫学的データは不足しています。

 リスクの高い地域社会を特定し、その地域での予防と感染管理に焦点を当てることを支援するため、人とブタの囊虫症の新規発生例を記録する適切な監視体制が必要とされます。

WHOの役割

 獣医学および食品安全当局が他の部門とともに活動することは、疾患の脅威を軽減させ、食品の関連する価値(価値連鎖)を守ることの長期的な成果を得るために不可欠です。WHOの顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NDTs)のチームは、他の部門(精神保健、研究開発、食品の安全、飲料水、衛生環境など)並びに国連の食糧農業機関(FAO)や国際獣疫事務局(OIE)などの支援機関と密接に連携しながら、未然に人々が神経嚢虫症に苦しむのを防ぐことを最終目標として、​​T.soliumを感染管理するために必要となることを学術的協調活動の中で満たしていきます。

 WHOは、加盟各国や主要な支援組織とともに、現在、利用できる機器を用いて、T.soliumの感染伝播を遮断し、患者の発見や神経嚢虫症の管理を向上させる「best-fit(最適)」戦略を形成するための第一歩を踏み出しました。

 いくつかの国では、使用可能な機器を使った先行計画を行いながら、一方で、効果のある対策の運用に対する研究と戦略の練り直しを行っています。これまで以上に多くの国が条虫症/嚢虫症を制御・駆除するためにWHOのネットワークへの参加に興味を示しています。

 実際の現場で、依​​然としてT.soliumの保虫者並びに人とブタの嚢虫症を発見し、直接、駆除プログラムを立て、これを監視するには、改良され、簡便で、経済効率が高く迅速な診断機器の使用が必要です。2015年12月には、条虫症、嚢虫症、神経嚢虫症(NCC)に対して物的・人的資源に乏しい環境で患者への医療支援と調査を行うための適切な診断機器の在庫が不足していることを提唱するために、T. solium条虫症/嚢虫症の診断機器の出資者会議がWHO本部で開催されました。

出典

WHO Fact sheet N°376, Update August 2016
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs376/en/