ギラン・バレー症候群について(ジカウイルス感染症の関連を含む)[ファクトシート更新3]

2016年10月 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要点

●ギラン・バレー症候群は、免疫システムが自己の末梢神経を攻撃する稀な疾患です。
●すべての年齢層の人に罹る可能性がありますが、成人と男性でより多くみられます。
●最も重症のギラン・バレー症候群患者であっても、ほとんどの人が完全に回復します。
●重症のギラン・バレー症候群症例は稀ですが、ほぼ完全な麻痺を起こす可能性があります。
●ギラン・バレー症候群には、生命を脅かす恐れがあります。ギラン・バレー症候群の患者は治療を受け、経過を監視しておかなければなりません。ときに、集中治療が必要となることがあります。治療には、支持療法といくつかの免疫療法があります。

概要

ギラン・バレー症候群では、身体の免疫システムが末梢神経の一部を攻撃します。この症候群は、痛覚や温度覚や触覚を伝える神経とともに、筋肉の運動に関与する神経にも影響を与えます。これにより、下肢そして/または上肢に筋力の低下や感覚の消失を引き起こす可能性があります。

全ての年齢層で発症する稀な疾患ではありますが、成人、そして男性で多く見られます。

症状

通常、症状は数週間続き、ほとんどの人は長期化することも、重度の神経学的合併症も起すことなく回復します。次のような経過を示します。
●ギラン・バレー症候群の初発症状は、脱力感やヒリヒリ感です。通常、下肢から始まり、上肢や顔面に広がることがあります。
●このうち何人かの患者では、これらの症状に続き、下肢、上肢、顔面の筋肉が麻痺してきます。患者の20~30%で、胸部の筋肉が麻痺して、呼吸が困難になります。
●重症のギラン・バレー症候群患者は、会話や嚥下機能に影響が出ることもあります。このような患者には生命の危険があり、感染者には集中治療室での治療が必要となります。
●脱力感が続く患者もいますが、かなり重症のギラン・バレー症候群でもほとんどの患者は完全に(症状が)回復します。
●設備が整っている環境でも、ギラン・バレー症候群患者の3-5%が合併症で死に至ります。呼吸筋の麻痺、血液感染、肺塞栓、心停止などを起こします。

原因

ギラン・バレー症候群の原因は、しばしば感染によって誘発されます。これは、細菌感染でも、ウイルス感染でも起こります。ギラン・バレー症候群はワクチン接種や手術を切掛けに発症することもあります。

感染の発生している国では、ジカウイルス感染症が発生する状況において、ギラン・バレー症候群患者の予想外の増加が報告されています。ジカウイルス感染症とギラン・バレー症候群の集団発生から得られた科学的根拠によれば、ジカウイルスがギラン・バレー症候群を誘導しているとするのが、もっとも可能性の高い説明となっています。

診断

診断は、深部腱反射の低下または消失などの神経学的検査に基づきます。治療を遅らせることはできませんが、補足情報を得るために腰椎穿刺も行われます。ギラン・バレー症候群の切掛けとなった原因を突きとめるための血液検査やその他の検査は、診断の確定には必要なく、治療を遅らせるべきではありません。

治療とケア

ギラン・バレー症候群の患者の診断と治療には、次のことが勧められています。
●ギラン・バレー症候群は、生命を脅かす恐れがあります。ギラン・バレー症候群の患者は、入院させ、厳重に監視する必要があります。
●支持療法では、呼吸、心拍数、血圧の管理などを行います。患者の呼吸力が障害されている場合には、通常、人工呼吸器が装着されます。全てのギラン・バレー症候群で、不整脈、感染、血栓、高血圧や低血圧などの合併症に対する監視を必要とします。
●ギラン・バレー症候群に対する治療法は分かっていません。しかし、治療はギラン・バレー症候群の症状の改善を支持し、病期を短縮することはできます。
●この疾患は自己免疫疾患の特性をもつことから、通常、急性期には血液から抗体を除去する血漿交換や免疫グロブリン点滴療法で治療が行われます。症状の出現後7~14日で(治療を)開始したときには、ほとんどの患者で効果があります。
●この症状の急性期の後に筋力低下が持続する場合には、患者は筋肉を強化し動きを回復するためのリハビリテーション療法を必要とすることもあります。

WHOの取り組み

WHOは、ジカウイルス感染症が発生する中でのギラン・バレー症候群を管理・治療する国々を、次のようなところから支援しています。
●ジカウイルス感染症が発生する国では、ギラン・バレー症候群の調査活動を強化すること
●ギラン・バレー症候群の診断・評価と管理のためのガイドラインを準備・配布すること
●ギラン・バレー症候群患者の治療管理を向上させるために、ガイドラインを実行し、医療体制を強化する国々を支援すること
●ギラン・バレー症候群の調査・研究の協議事項を明確にしておくこと

出典

WHO.Media center. 10 October 2016
Guillain-Barré syndrome
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/guillain-barre-syndrome/en/