2016年のニュース

オンコセルカ症について (ファクトシート)

2016年10月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

オンコセルカ症は、河川盲目症とも呼ばれ、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)という寄生虫によって引き起こされます。
オンコセルカ症は、寄生虫を保ったブユ(Simulium属)に人が繰り返し刺されることで感染します。
症状には、激しい掻痒、外観を損なう皮膚の変化、永久失明を含む視覚障害などがあります。
感染者の99%以上がアフリカの31か国で発生していますが、ラテンアメリカやイエメンの一部地域でも発生しています。
アフリカでは、イベルメクチンを用いた地域主導型治療を行うことがオンコセルカ症を撲滅するための中核的な戦略となっています。アメリカ大陸では、広範囲でのイベルメクチンを用いた年2回の治療が撲滅のための戦略となっています。
2016年7月に、グアテマラが、コロンビア(2013)、エクアドル(2014)、メキシコ(2015)に続いて、数10年にわたり撲滅活動を実施したことにより、オンコセルカ症の終息が確認された世界で4番目の国となりました。

概要

 オンコセルカ症—河川盲目症—は、ブユ(Simulium spp.)に繰り返し刺されることで回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)に感染する寄生虫症です。ブユは流れの速い河川で繁殖し、ほとんどは人間が農業を営む肥沃な土地の近くにある僻村に生息しています。
 回旋糸状虫の成虫は、人の体内でミクロフィラリア(被鞘幼虫)を産みます。ミクロフィラリアは、皮膚、眼、その他の臓器に移行していきます。メスのブユは、感染した人の血を吸う際にミクロフィラリアを同時に吸い込み、体内で回旋糸状虫を成長させ、次に人を刺した際に人に感染させます。

所見と症状

 オンコセルカ症は眼と皮膚の疾患です。症状はミクロフィラリアによって引き起こされます。ミクロフィラリアが皮下組織に移行して炎症を起こし、特に、それらが死滅したときに激しい炎症反応を誘発します。感染した人は、激しい掻痒や様々な皮膚症状を発現します。ほとんどの場合、小結節が皮下に現れます。感染した人の中には、視覚障害や永久失明に繋がる眼病変が現れることがあります。

地理的分布

 オンコセルカ症は主に熱帯地域で発生しています。感染者の99%以上は、以下に示すサハラ以南のアフリカにある31か国で発生しています。

アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コンゴ共和国、コートジボワール、コンゴ民主共和国、赤道ギニア、エチオピア、ガボン、ガーナ、ギニア、ギニア・ビサウ、ケニア、リベリア、マラウイ、マリ、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、シエラレオネ、南スーダン、スーダン、トーゴ、ウガンダ、タンザニア

 オンコセルカ症は、イエメンやアメリカ大陸でも発生しています。2016年7月20日現在、オンコセルカ寄生虫症の伝播は、ブラジルとベネズエラ続いています。

予防、感染制御、撲滅計画

 回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)の感染を予防するワクチンや医薬品はありません。

 1974年から2002年にかけて、オンコセルカ症によって引き起こされる病気は、オンコセルカ症感染制御計画(Onchocerciasis Control Program; OCP)の活動によって西アフリカを感染制御の下に置かれていました。主に、ヘリコプターや航空機でブユの幼虫に対して殺虫剤スプレーを散布するというベクター・コントロール(媒介昆虫の駆除)という対策を行っていました。1989年以降は、広範囲でイベルメクチンの配布も行われてきました。
 OCPによって、4,000万人の感染を予防し、60万人の失明を防ぎ、1,800万人の小児が疾患と失明の脅威に晒されずに済みました。また、2,500万ヘクタールの土地が開墾され、人が居住し、農業生産を行えるようになり、1年間に1,700万人の食事を賄えるようになりました。
 1995年に、オンコセルカ症が常在する国でのオンコセルカ症の感染制御を目的として、アフリカ・オンコセルカ症対策計画(the African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)が開始され、オンコセルカ症の撲滅への変化が出始めたことで、2015年末をもって終了しました。その計画の主な戦略は、環境にも安全な方法で適切に媒介昆虫を駆除しながら、イベルメクチンを用いた地域社会での地域主導型治療を確立させることでした。
 2015年には、地域主導型治療(community-directed treatment with ivermectin; CDTI)の戦略を実施しているアフリカの1億1,000万以上の人々に治療が行われました。これは、治療対象者の約60%に(薬が)配布されたことになります。
 APOCの終了後、アフリカ地域では新たな計画が開始されました。アフリカでの顧みられない熱帯病(NTDs)の撲滅のための特別拡大計画(ESPEN)が、2016年5月のWHO総会で公式に始められました。この多くの役割の中では、初めて、いくつかの国にオンコセルカ症の計画を含めた顧みられない熱帯病(NTDs)を優先的に支援することに焦点を当て、全ての加盟国に技術支援を提供できるような専門家の準備組織を創設こととなっています。ESPENは、OCPやAPOCと同様に、WHOアフリカ地域事務局内に置かれています。

 アメリカ・オンコセルカ症撲滅計画(the Onchocerciasis Elimination Program of the Americans; OEPA)は、2012年までにアメリカ大陸全域で眼に対する罹患をなくし感染伝播を阻止することを目的に、1992年から開始されました。大規模でイベルメクチンによる年2回の治療が実施されてきました。2006年には全13地域における85%以上の人が治療され、2011年末までに13地域のうち10地域で感染伝播が止まりました。
 国際的な関係機関の支援により、感染地域の住民への大規模な治療が成功し、コロンビアでは2007年に、エクアドルでは2009年に、それぞれこの疾患の感染伝播を止めることができました。グアテマラとメキシコでも2011年に感染伝播を止めることができました。現在、撲滅に向けた取り組みは、ブラジルとベネズエラに住むヤノマミ族に焦点が当てられています。
 2013年4月5日、WHOの事務局長は、コロンビアがオンコセルカ症の撲滅を達成したことを承認する公式文書を発行しました。コロンビアの大統領は2013年7月29日にボゴタで開催された式典で、このWHOの証明を公表しました。コロンビアはWHOによってオンコセルカ症の撲滅が証明され宣言された世界で最初の国となりました。これに、2014年9月にはエクアドルが続きました。メキシコは、2015年7月にオンコセルカ症の終息を宣言しました。

治療

 WHOは、オンコセルカ症の治療として、約10年間から15年間、イベルメクチンを少なくとも年1回投与することを推奨しています。回旋糸状虫とともにロアロア(Loa loa)という別の糸状虫が常在しているカメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、南スーダンでは、重篤な副反応が起きたときの管理のために、メクチザン(イベルメクチン)の専門家会議(the Mectizan Expert Committee; MEC)/APOCが推奨する使用方法に従うことが勧められます。

WHOの取り組み

 WHOのアフリカ地域事務局は、過去40年間、即ち、オンコセルカ症感染制御計画(Onchocerciasis Control Program; OCP)の1975年から2002年までと、アフリカ・オンコセルカ症対策計画(the African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)の1995年から2015年までに、この大陸で河川盲目症と戦う2つの地域計画の全体的な指揮を取ってきました。現在は、顧みられない熱帯病(NTD)の感染制御と撲滅活動の調整に重要な役割を持つESPENを指揮しています。WHO本部は、行政管理、技術および運営面での調査・研究を支援しています。アメリカ・オンコセルカ症撲滅計画(OEPA)の協力関係を通して、WHOはアメリカ大陸地域事務局の地域で感染症常在国と国際的な支援組織と協調しながら活動に取り組んでいます。

出典

WHO. Fact sheet, Media centre. update October 2016
Onchocerciasis
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs374/en/