2016年のニュース

季節性インフルエンザ (ファクトシート)

2016年11月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

季節性インフルエンザは容易にヒトからヒトに感染する急性ウイルス性感染症です。
季節性インフルエンザウイルスは、世界中で流行しており、すべての年齢層で誰にでも感染を引き起こす可能性があります。
季節性インフルエンザウイルスは、温帯地方では主に冬に流行しますが、熱帯地方では季節性は明らかではなく、流行が年間を通して起こります。
季節性インフルエンザは、リスクの高い集団で重篤な病態を起こしたり、致死的になったりして、深刻な公衆衛生上の問題となります。
インフルエンザの流行は、労働生産性に損害を与えることで経済に打撃を与えたり、医療サービスに負担をもたらしたりします。
インフルエンザ予防接種は感染を予防する最も有効な方法です。
抗ウイルス薬を治療に用いることもできますが、インフルエンザウイルスは、薬剤に対する耐性を獲得する可能性があります。

概要

 季節性インフルエンザは、世界各地に流行し、インフルエンザウイルスが起こす急性呼吸器感染症です。

 季節性インフルエンザウイルスには、A、BおよびC 型の3つの型があります。インフルエンザ A型ウイルスは、種々のウイルス表面タンパク質の組み合わせによって、さらに各種の亜型(サブタイプ)に分類されます。現在、人に流行しているインフルエンザ A型ウイルスの亜型は、インフルエンザA(H1N1)とA(H3N2)です。流行性インフルエンザA(H1N1)は、A(H1N1)pdm09とも書かれます。2009年以前に流行した季節性インフルエンザA(H1N1)ウイルスに取って代わり、2009年に世界流行(パンデミック)を引き起こしました。インフルエンザA型ウイルスだけは、パンデミックを引き起こすことが知られています。

 流行性インフルエンザBウイルスは、B / Yamagata系統とB / Victoria系統と呼ばれる2つの主要な群(系統)に分けられます。インフルエンザB型ウイルスは亜型による分類はされていません。

 インフルエンザA型およびB型ウイルスは感染が伝播し、集団感染や流行を引き起こします。このため、季節性インフルエンザワクチンには、インフルエンザA型およびB型の関連ウイルス株が含まれています。

 インフルエンザC型ウイルスは、はるかに低い頻度でしか見つからず、現れる症状も軽度です。公衆衛生への影響はほとんどありません。

所見と症状

 季節性インフルエンザの特徴は、突然に生じる高熱、咳嗽(通常乾性咳嗽)、頭痛、筋肉痛および関節痛、強い倦怠感(体の具合が悪い感じ)、咽頭痛、鼻汁です。咳嗽は激しくなり、2週間以上続くこともあります。ほとんどの人は、特に医学的に対応しなくても、一週間以内に発熱や他の症状から回復します。しかし、インフルエンザは、後述のように特にリスクの高い人の場合には、重篤な疾患を起こす場合や、致死的な状況を引き起こす場合があります。潜伏期と呼ばれる、感染から疾患発症までの期間は約2日です。

誰にリスクがあるか?

 毎年発生するインフルエンザの流行は、すべての人に深刻な影響をもたらす可能性があります。しかし、合併症が生じるリスクが最も高いのは、妊娠女性、6か月から59か月の小児、高齢者、およびHIV/AIDS、喘息、慢性の心臓、肺の疾患などの特別な慢性の病的状態を保つ人や医療従事者です。

感染経路

 季節性インフルエンザは、学校、老健施設など人が集まる場所で短時間に伝播し、簡単に広がります。感染した人の咳やくしゃみで、ウイルスを含んだ飛沫(感染性飛沫)が空気中に飛散し、その飛沫を近くで吸い込んだ人に拡がります。また、このウイルスは、ウイルスで汚染された手を介しても拡がります。感染伝播を防ぐために、咳をする際にティッシュペーパーで自分の口と鼻を覆い、定期的に手を洗わなければなりません。

季節性の流行および疾病の脅威

 温帯地域では、季節性の流行は主として冬に発生します。一方、熱帯地域では、インフルエンザは年間を通じて発生する可能性があり、結果としてより不規則に流行を起こしやすくなります。

 症状は、軽度から重篤、さらには死に至ることさえもあります。入院や死亡の発生は、主にハイリスクの人々で起こります。全世界では、この毎年の流行によって約300~500万人が重症となり、約25~50万人が死亡するとみられています。

 先進工業国では、インフルエンザ関連死のほとんどが65歳以上の人で発生しています。インフルエンザの流行は、労働者の欠勤率や学生の欠席率を上げ、生産性を低下させる可能性があります。診療所や病院は、インフルエンザの流行がピークに達している期間、忙殺されてしまいます。

 発展途上国での季節性インフルエンザの流行については、正確な影響はわかっていません。しかし、調査結果によると、5歳未満の小児におけるインフルエンザ関連の下気道感染症での死亡の99%が発展途上国でみられています。

予防

 この疾患を予防する最も有効な方法は、予防接種です。安全で有効なワクチンが利用でき、60年以上使われてきました。健康な成人では、流行しているウイルスがワクチンウイルスと完全に一致していなくても、保護をしてくれます。

 しかし、高齢者では、インフルエンザワクチンは疾患予防の効果はそれほど大きくありません。それでも、疾患の重症度、合併症の発生率および致死率を低下させる可能性はあります。ワクチン接種は、特に、重篤なインフルエンザ合併症の起こるリスクの高い人や、ハイリスクの人と一緒に暮らしている人、又はその人の世話をしている人にとっては重要です。

 WHOは、以下の人に毎年の予防接種を推奨しています。
・妊娠周期を問わずすべての妊娠女性
・6か月~5歳の小児
・高齢者(65歳以上)
・慢性に治療状態にある人
・医療従事者(ヘルスケアワーカー)

 ワクチンのウイルス株が、流行しているウイルスとよく一致した場合には、インフルエンザ予防接種は非常に有効です。インフルエンザウイルスの特性は絶えず変化しているため、全世界の国家インフルエンザセンターとの協力機関である、WHO世界インフルエンザ監視・対応システム(Global Influenza Surveillance and Response System: GISRS)が人に流行しているインフルエンザウイルスを監視しています。

 長年にわたってWHOは、代表的な3種(インフルエンザ A型亜型2種とB型インフルエンザ1種)を構成成分とする推奨ワクチンを更新してきました。2013年~2014年の北半球のインフルエンザシーズンからは、4価で構成されるワクチンが推奨されるようになりました。4価のインフルエンザワクチンは、従来の3価のワクチンのウイルスに加え、インフルエンザB型ウイルスもう1種を加えています。これにより、インフルエンザB型ウイルス感染症に対して今までよりも広い系統でも保護作用をもたらすと期待されています。たくさんのインフルエンザ不活性化ワクチンとインフルエンザワクチンが、注射剤で使用できます。弱毒化インフルエンザ生ワクチンは、鼻スプレーで使用できます。

治療

 国によっては、インフルエンザに対する抗ウイルス薬が使用でき、重篤な合併症や死亡を低減している可能性があります。理想的には、抗ウイルス薬は感染の初期に(症状が出現してから48時間以内に)投与する必要があります。抗ウイルス薬には以下の2つの種類があります。

1.インフルエンザノイラミニダーゼ阻害薬(オセルタミビル(oseltamivir)およびザナミビル(zanamivir)、いくつかの国では、ペラミビル(peramivir)とラニナミビル(laninamivir)も認可されています。)
2. M2プロトンチャネル遮断薬アダマンタン(アマンタジンおよびリマンタジン)。これらは、ウイルス耐性が高頻度で報告されており、治療の有効性は限られています。

 WHOは、流行性インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤の感受性を監視し、臨床上の管理および潜在する薬剤予防投与における抗ウイルス剤の使用に対して、適時ガイドラインを示しています。現在、流行性インフルエンザウイルスの大部分はアダマンタンに耐性があるため、WHOは、抗ウイルス療法を必要とする人々への第一選択薬にはノイラミニダーゼ阻害薬を推奨しています。

WHOの取り組み

 WHOは、GISRSネットワークを通じて、他の支援組織と協力して、全世界でインフルエンザの活動を監視し、1年に2度、北半球および南半球に対する季節性インフルエンザワクチンの構成成分の推奨を発表し、加盟国に対して、その疾病予防および疾病管理の戦略への取り組みを支援しています。

 WHOは、抗ウイルス感受性モニタリング、疾病監視および流行対策など国家的、地域的、世界的なインフルエンザへの対応能力を強化し、ハイリスク群のワクチン接種率を高め、次のインフルエンザ・パンデミックに備えています。

出典

WHO. Fact Sheet, Media centre. November 2016
Influenza (Seasonal)
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs211/en/