太平洋における症状・疾患サーベイランス報告 (更新9)

2016年44、45、47-49週に報告されたWHO西太平洋地域事務局(WPRO)のサーベイランス情報をまとめて掲載いたします。

  1. 註1:発生時期に時間差がありますので、詳細は原文でお確かめください。
  2. 註2:[ ]の数字は報告週です。

太平洋地域での症状・疾患サーベイランス報告システム(PSSS)では、伝染性感染症の発生を示唆する情報の報告をしています。データは、急性発熱と発疹、下痢、インフルエンザ様疾患、遷延性の発熱の4つの症状群について、太平洋地域の23か国200以上の医療施設から収集されています。PSSSは、伝染性感染症に対する極めて貴重な早期警報ツールとしての、また、太平洋諸島の地域と国々、WHO、太平洋共同体のようなその他の国際機関との間で定期的に連絡をとる機構制度としての役目を果たしています。

概要

  • 急性発熱と発疹:北マリアナ諸島[45]
  • 下痢:ミクロネシア連邦[44、45、47-49]、フランス領ポリネシア[44]、サモア[44]、トケラウ [44]、トンガ[44、45] 、グアム[47]
  • インフルエンザ様疾患:バヌアツ[44、49]、アメリカ領サモア[47-49]
  • 遷延性発熱:ミクロネシア連邦[44]、パラオ[45]、ソロモン諸島[45、47]

疾患別の発生状況

ジカウイルス感染症

アメリカ領サモア:2016年1月1日から12月1日までに、疑い患者が1,004人発生し、58人の診断が確定しました。確定診断された患者のうち、33人は妊娠女性でした。週毎の患者数は減少してきています[ここまで、第48週より]。11月3日の時点では、疑い患者944人が発生し、55人の診断が確定していました。この確定診断されたうちの23人が妊娠女性でした[44]。
ミクロネシア連邦:コスラエ州では、11月30日までに患者238人が発生しました[47]。11月2日の時点では、患者数が157人で、このうち23人がRT-PCR法検査で陽性と確認され、21人がIgM抗体陽性で感染の可能性が高いとされました。直近で感染が確認されたのは、第33週でした[ここまで、第44週より]。
パラオ:第44週に、初めてジカウイルス感染症の患者が確認されました。患者に、海外への渡航歴はありませんでした[ここまで、第44週より]

デング熱

バヌアツ:2016年11月11日から12月15日までに、200人を超える疑い患者が出ました。これらの患者のうち194人が簡易の標準診断手順(NS1/IgM/IgG)で検査され、55人が陽性(IgM&NS1+ve(ウイルス検査?)、NS1+ve、IgM+ve)でした。患者2人からの検体でデング熱2型であることが、ニュージーランド・環境科学研究所(ESR)で確認されました [ここまで、第49週より] 。12月8日時点では、疑い患者は30人、11月30日時点では、疑い患者は10人で、このうち7人が簡易の標準診断手順(NS1/IgM/IgG)でNS1もしくはIgMに陽性でした[47、48]。
ソロモン諸島:8月15日から12月4日までに、患者は5,523人となりました。12月4日迄の週には、患者が820人でした。前週に報告された患者数よりも増加し、首都ホニアラの国立中央病院(National Referred Hospital)の入院患者は41人となりました。デング熱2型と3型の伝播が確認されています [ここまで、第49週より] 。第33週から第46週(8月15日から11月20日まで)には、首都ホニアラ、ガダルカナル島、マライタ州、イサベル州、チョイスル州、マキラ州、テモツ州、西部州から疑い患者3,920人が報告されました。第46週における中央の調査集計データでは、第45週と比べて、デング様疾患の症状を示す患者が僅かに減ってきたことが示唆されました。デング熱に関連して死亡者が2人出ました。4歳と53歳の患者です。その他の死亡者についてもデング熱との関連性に対する調査が続けられています[ここまで、第47週より]。第33週から第46週では、患者は2,760人(前回よりも528人の増加)でした[45]。
ミクロネシア連邦:コスラエ州では、2016年10月21日から11月30日までに、疑い患者98人が確認されました(過去2週間では7人以上が確認されました)。8月11日にRT-PCR法検査を始めて以降、発症者6人で陽性と確認されました[ここまで、第47週より]。デング熱4型がハワイ州公衆衛生研究所で確認されました。10月21日から11月2日までの患者は58人でした。コスラエ州行政府は11月1日に、蚊の媒介による疾患に対する緊急事態を宣言しました[44]。
ニウエ:ソロモン諸島を旅行し、帰国した旅行者がデング熱の簡易診断検査で陽性(NS1抗原+ウイルス検査)であったことが確認されました[44]。

A型肝炎

マーシャル諸島:11月4日から12月12日までに、疑い患者45人が発生し、このうち30人でA型肝炎ウイルスのIgM抗体とウイルスが確認されました。全員が首都マジュロからで、ほとんど(70%)の患者が15歳以下の子どもでした [ここまで、第49週より] 。第44週の時点では、患者は6人で、このうち5人が検査で確認されました。6人のうち1人は成人で、5人は14歳未満の子どもでした[44]。

出典