ジカウイルス感染症に向けてのアドバイス-各国当局および臨床医へ

2017年3月10日に、ジカウイルス感染症について、各国の担当当局および現場の臨床医に向けて出されたアドバイスがWHOから公表されました。

概要

ジカウイルス感染症および小頭症やギラン・バレー症候群などの合併症が、家族、地域社会、各国に対して長期に影響をもたらすことは、公衆衛生上の新たなタイプの脅威となっています。

妊娠中のジカウイルスへの感染は、小頭症を含む先天性の脳障害の原因となり、ギラン・バレー症候群を引き起こす切っ掛けともなります。

このウェブサイトでは、ジカウイルスに関連する旅行時の健康問題について、各国の担当当局および現場の臨床医に対して送るアドバイスを定期的に更新しています。

各国の担当当局へのアドバイス

ジカウイルス感染症の発生状況に関して、各国には、次のように行動することが求められています。

  • ジカウイルスの感染伝播が発生している国や地域に対し、旅行や貿易に関する一般的な制限が行われるべきではありません。
  • 空港での媒介昆虫の駆除については、IHR(2005)に準拠して実施することがWHOの標準の勧告事項となっています。各国は、航空機内の(媒介昆虫の)駆除も検討することが必要です。
  • 調査活動については、感染が発生した国や地域でも感染のリスクは著しく変化していることを認識して、医療従事者や保健衛生の担当部門は感染の発生する国からの帰国者に対してジカウイルスの感染への特別な注意を払うことが必要です。ジカウイルスの感染伝播が発生している地域を旅行する前、旅行中、旅行した後に生じる様々な問題について、旅行者および現場の臨床医に幅広く周知させておくことが重要です。

各国の保健衛生の担当部局には、次のように行動することが求められています。

  • 蚊刺しを防ぎ、より安全な性生活を送るために、旅行者に、感染へのリスクを減らす方法への最新の情報に基づくアドバイスを提供することが必要です。
  • ジカウイルスの感染の発生した地域(現在も感染伝播が続いている地域、もしくは感染伝播が阻止されたことの証拠のない地域)から戻った旅行者には、少なくとも帰国後6か月間は、いつも以上に安全な性生活を送るか、性交渉を控えるかを行いし、少なくとも1か月間は献血を控えさせる必要があります。
  • 妊娠中の女性には、ジカウイルスの感染の発生した地域(現在の感染伝播が続いている地域もしくは感染伝播が阻止されたことの証拠のない地域)への旅行は控えることを勧めるべきです。
  • ジカウイルスの感染の発生した地域(現在の感染伝播が続いている地域もしくは感染伝播が阻止されたことの証拠のない地域)から戻ってくるパートナーを持つ妊娠女性には、妊娠中はいつも以上に安全な性生活を送るか、性交渉を控えるかを行うことを勧めるべきです。
  • 現場の臨床医には、ジカウイルスの感染の発生した地域(現在の感染伝播が続いている地域もしくは感染伝播が阻止されたことの証拠のない地域)および(阻止された証拠がある、もしくは流行発生の記録がないものの)潜在的にジカウイルスの感染が発生する環境にある地域を最近になって訪れたことのある旅行者で、症状を伴う者に対しては、ジカウイルスの感染の可能性に注意を払わせることが必要です。
  • ジカウイルス感染症が疑われる旅行者を適正に管理し検査するための紹介手順について、現場の臨床医には、分かりやすいガイダンスを提供しておくことが必要です。

現場の臨床医へのアドバイス

旅行者にアドバイスする現場の臨床医には、次のことを旅行者にアドバイスすることが求められています。

  • 蚊刺しを防ぎ、より安全に性生活を送ることなど、感染へのリスクを減らす方法への最新の情報に基づくアドバイスしてください。
  • ジカウイルスの感染の発生した地域(現在も感染伝播が続いている地域、もしくは感染伝播が阻止されたことの証拠のない地域)から戻った旅行者には、少なくとも帰国後6か月間は、いつも以上に安全な性生活を送るか、性交渉を控えるかを行い、少なくとも1か月間は潜在する完全伝播へのリスク献血を控えることをアドバイスしてください。
  • 妊娠中の女性には、ジカウイルスの感染の発生した地域(現在の感染伝播が続いている地域もしくは感染伝播が阻止されたことの証拠のない地域)への旅行は控えるようにアドバイスしてください。
  • ジカウイルスの感染の発生した地域(現在の感染伝播が続いている地域もしくは感染伝播が阻止されたことの証拠のない地域)から戻ってくるパートナーを持つ妊娠女性には、妊娠中はいつも以上に安全な性生活を送るか、性交渉を控えることをアドバイスしてください。

また、ジカウイルスの感染の発生した地域(現在の感染伝播が続いている地域もしくは感染伝播が阻止されたことの証拠のない地域)から帰国した患者を治療する現場の臨床医は、次のことを心がけることが求められます。

  • 症状の発現から2週間以内にジカウイルス感染症の発生している国を訪れたことのある帰国者で、急性の発熱、発疹、関節痛、または結膜炎を有する患者では、ジカウイルスの感染を鑑別に入れてください。
  • ジカウイルス感染症が疑われる場合、検査のための適切な検体(該当する日付と旅行行程と臨床経過の完全な情報とともに)をできるだけ早く関係する中央検査施設に送付してください。
  • 該当する州政府や現地の保健担当当局にジカウイルス感染症の疑いのある患者を報告してください。
  • ジカウイルスの感染の発生した地域(現在の感染伝播が続いている地域もしくは感染伝播が阻止されたことの証拠のない地域)を旅行したことのある両親から生まれた新生児には、神経学的症候群、自己免疫症候群、先天性奇形の可能性の増加に注意を払ってください。
  • ジカウイルスの感染の発生した地域(現在の感染伝播が続いている地域もしくは感染伝播が阻止されたことの証拠のない地域)を訪れたことのある妊娠女性には、診断の評価を行うとともに、健康状態の観察を続けてください。
  • 妊娠中にジカウイルスに感染した女性の胎児および新生児には、神経症候群や先天性奇形の可能性について評価を行ってください。

出典

WHO.International travel and health. Updated 10 March 2017
Travel health advice on Zika virus
http://www.who.int/ith/updates/20170310/en/