ポリオについて (ファクトシート)
2017年4月 WHO(原文〔英語〕へのリンク)
要点
- ポリオ(急性灰白髄炎)は、主に5歳未満の小児が罹かる疾患です。
- 感染者200人のうち1人に不可逆性の麻痺が起こります。麻痺を起こした患者の5~10%は呼吸筋が機能しなくなり、死に至ります。
- 1988年には35万人いたと推計されるポリオの患者は99%以上減少し、2016年には報告者数が37人なりました。世界がこの疾患を撲滅することに取り組んだ結果、1,600万以上の人々が麻痺から救われました。
- 1人でも感染した小児がいれば、すべての国の小児にポリオへの感染の危険が生まれます。最後に残った常在国からポリオを撲滅することができなければ、10年以内に毎年20万人もの新規患者が発生する可能性が生まれます。
- ほとんどの国が効果的なサーベイランスや予防接種体制を確立してきたことで、地球全体での取り組みがその他の感染症に取り組む対処能力をも向上させています。
ポリオとその症状
ポリオは、ウイルスによって引き引き起こされる感染力の強い疾患です。ウイルスは神経系の細胞に侵入し、数時間で全身の麻痺を起こすことが可能です。ウイルスは、主に糞口感染で、稀に日常の媒体(ウイルスが含まれる水や食べ物)を通して人から人へと伝播され、腸内で増殖します。初期症状は、発熱、全身倦怠感、頭痛、嘔吐、項部硬直や四肢の痛みです。感染者200人のうち1人には不可逆性の麻痺(通常は下肢)が起こります。麻痺を起こした患者の5~10%は呼吸筋が機能しなくなり死に至ります。
リスクの高い人
ポリオは主に5歳未満の小児で起こります。
予防
ポリオに治療方法はなく、唯一できる方法は予防です。複数回ポリオワクチンを接種することで、小児の命を守ることができます。
世界での発生数
1988年には125か国以上の常在国があり、推定で35万人のポリオ患者が発生していましたが、99%以上減少し、2016年には患者が37人となりました。
3つのポリオ野生株(1型、2型、3型)のうち、野生株2型は1999年に撲滅され、野生株3型も2012年11月にナイジェリアで発生した後には患者の発生がなくなっています。
世界ポリオ撲滅イニシアチブ
世界ポリオ撲滅イニシアチブの開始
1988年、第41回世界保健総会でポリオを全世界で撲滅する決議が採択されました。そこで、各国政府、WHO、国際ロータリー、米国疾病予防管理センター(CDC)、国連児童基金(UNICEF)が主導し、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を含む主要な関係機関の支援を受け、世界ポリオ撲滅イニシアチブ(GPEI)が開始されました。これは、1980年の天然痘撲滅宣言に続き、1980年代にアメリカ大陸からポリオウイルスを撲滅することに始まり、国際ロータリーがすべての小児をポリオから守るために基金を設立することを公約し発展させたものです。
発展
世界ポリオ撲滅イニシアチブが発足して以来、この疾患の患者数は世界中で99%以上低下しました。
WHOの各地域事務局は、1994年にアメリカ大陸でポリオの撲滅が宣言されたことに続き、2000年に西太平洋地域で、2002年6月にはヨーロッパ地域で、それぞれにポリオの撲滅が宣言されました。2014年3月27日には、WHO東南アジア地域でポリオの撲滅が認証されました。これは、野生株ポリオウイルスの伝播がインドネシアからインドへ延びるこのブロック11か国で遮られたことを意味します。この成果は、現時点で世界の人口の80%がポリオウイルスが存在しないと認証された地域に住んでいることになり、地球規模での撲滅に向けて大きな飛躍を記しました。
今日、麻痺が起こっていたかもしれない1,600万人以上の人々が歩いています。ポリオの予防接種活動中にビタミンAを計画的に投与することで、推定で150万人以上の小児が死から逃れることができました。
感染機会とリスク: 緊急的なアプローチ
ポリオ撲滅に対する戦略は、戦略が完全に実施されたときに機能します。これは、2011年1月にポリオの伝播を止めることができたインドでの成功(おそらく、そこは最も技術的に困難だった場所)と、2014年3月にWHOが東南アジア全地域に出されたポリオ撲滅宣言の経験から明らかです。
しかし、戦略的なアプローチが実施されなければ、ウイルスの伝播は続きます。アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンでは伝播が続いています。10年以内に最後に残った常在国からポリオを撲滅することができなければ、世界中で毎年20万人もの新規患者が発生する可能性が生じます。
現在は疫学的な好機であることと、失敗した場合に潜在的に大きなリスクがあることとが認識され、ポリオの常在国、利害関係者、支援者、協賛者、国内および国際的な諮問機関らが協議した上で、新たなポリオ撲滅と戦略計画の最終段階2013-2019が策定されました。新しい計画は、2013年4月末に、アラブ首長国連邦のアブダビで開催された世界ワクチンサミットで発表されました。これは、野生株とワクチン株の両方に由来するポリオウイルス、全てのタイプのポリオ関連疾患を同時に撲滅するための初めての計画です。
ポリオ撲滅が将来にもたらす恩恵
ポリオが撲滅されれば、どこで生活しても、人々は地球規模での公衆衛生上の大きな成果の恩恵を受けることができます。経済学的なモデルでは、ポリオが撲滅されれば、ほとんどの低所得国で、1988年から2035年の間に、少なくとも40億米ドルから50億米ドルの経費削減になると推計されています。最も重要なことは、ポリオの撲滅に成功すれば、ポリオによって生涯麻痺に苦しむ子どもがいなくなるということです。
出典
WHO.Fact sheet, Media centre.Updated April2017
Polio
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs114/en/index.html