ポリオウイルスの国際的拡大に関する国際保健規則(IHR)緊急委員会第13回会議でのWHO声明
2017年5月2日 WHO (原文[英語]へのリンク)
国際保健規則[IHR(2005)]に基づき、ポリオの国際的感染拡大に関する第13回緊急委員会が、事務局長の要請により招集され、2017年4月24日にテレビ会議によって開かれました。
緊急委員会では、野生型ポリオウイルス1型(WPV1)とワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)の感染伝播についての資料が検討されました。事務局は、感染の発生しているIHR加盟国での一時勧告の進展状況について報告書を提出しました。また、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、赤道ギニアのIHR各加盟国からは、前回2017年2月7日に開かれた委員会以降の一時勧告の実施状況についての更新情報が提出されました。さらに、委員会には、ロシア連邦とオランダが管轄地域でのポリオの発生状況について説明するために招かれました。
野生型ポリオウイルス
全体の状況として、委員会は、野生型ポリオウイルス1型(WPV1)の感染が発生している3か国、パキスタンとアフガニスタン、ナイジェリアでの着実な進展が続けられていることを前向きに捉え、世界で(ポリオ)患者数が低下したことに安堵の意を示しました。これら3か国における感染伝播の低下は、国際的な(感染の)拡散リスクを減少させていますが、一方で、発生国が拡大しているという現実は根絶に対しては重大な後戻りであり、公衆衛生上のリスクであることをも示しています。
委員会は、調査活動がさらに強化されているパキスタンの取り組みを歓迎し、この国の環境調査(の検出力の高さ)がポリオ根絶計画でこれまでにないレベルにあることを評価しました。しかし、最近、パンジャブ州で発見された独立したウイルス株は、まだまだ調査活動との間に溝があることを示しています。委員会は、2017年になって、十分に支援できていない子どもがいなくなったこと、補完的な予防接種活動(SIA)の質が着実に向上していることの報告を讃えました。
委員会は、アフガニスタンで支援されていない子どもの数が減少していること、特に、リスクの高い住民が暮らすKunduz(クンドゥーズ州)に支援が達していることを歓迎しました。しかし、最近、パキスタンからKandahar(カンダハ-ル州)、Hilmand(へルマンド州)、クンドゥーズ州には、ポリオウイルス1型(WPV1)が国際的に拡がっていることから、2国間での住民の移動は根絶の達成への今後も続く課題であり、補完的な予防接種活動(SIA)は向上しているものの、住民の予防接種状況には溝があることが示されました。
委員会は、住民の移動があり、遊牧民の土地が重なり、国境周辺には国境を行き来する住民が暮らすことから、この地域が疫学的にひとつのブロックを構成していると両国が考えて、長い国境に沿って引き続き協力することに重点を置いていることを歓迎しました。両国の間には、共通のポリオウイルス貯留地域があるために、大きな課題が残されています。
委員会は、2016年8月以降、ナイジェリアで野生型ポリオウイルス1型(WPV1)患者が確認されていないことを議題として上げました。しかし、ナイジェリア北部には、完全にまたは部分的に立ち入ることのできない地域に、依然として多くの住民がいるため、委員会は、この地域にはポリオウイルスが現在も伝播している可能性が高いと結論づけました。これらの住民の暮らす地域に入ることはポリオ根絶の活動にとって非常に重要ではありますが、ポリオ根絶のために働く人々やボランティアに危険をもたらす可能性があり、そこには治安上の大きな危険があると認識されています。委員会は、この脅威のある状況での活動は、質の高い介入に悪い影響を与える可能性があることを指摘しました。ナイジェリア政府は、既に、この問題に対して革新的かつ多面的な(解決への)アプローチを行っています。そして、このような革新的(取り組み)が続けられることが必要です。また、ナイジェリアは、(空港を含む)国境、この他にも経由地、国内避難民(IDP)キャンプ、および遊牧民が暮らすその他の地域などで、引き続き、着実に予防接種を行うための取り組みを行っていることを報告しました。
政情が不安定なことにともない、国内避難民(IDP)や難民が集まり、(医療)サービスが不足することで感染が発生することから、チャド湖盆地の周辺地域のすべての国に懸念が続いています。ナイジェリアから、チャド湖盆地の周辺地域、さらには遠く離れたアフリカ・サハラ以南の地域にかけて、(感染が)国際的に広がる危険性は依然として高い状態です。(このため)委員会は、ナイジェリア、カメルーン、チャド、ニジェール、中央アフリカ共和国(CAR)を含めたチャド湖盆地の周辺諸国が、引き続き、地域間の協力体制に関わることを要請しました。
赤道ギニアは、依然として(感染に対して)脆弱ですが、委員会は、最近いくつもの点でAFP(急性弛緩性麻痺)サーベイランスに改善がみられたこと、並びに環境への調査体制の導入が計画されたことを歓迎しました。補完的な予防接種活動(SIA)と定期予防接種の改善を通して住民全体での免疫応答能との解離状態に取り組む計画は、歓迎されるべきことであり、(これを)確実に成功を導くには監視が必要です。
オランダからは、ワクチン製造工場で(ウイルスの)封じ込めに違反があり、ワクチン製造工場で従業員がポリオウイルス2型(WPV2)に感染した事例が報告されました。この事例は深刻で、引き続き監視が必要となりますが、委員会は、この事例への対応からいくつもの重要な教訓を学べることを指摘しました。国際的な感染拡大のリスクはかなり低いですが、この根絶されたウイルスがさらに感染伝播することでもたらされる公衆衛生上の結果は極めて深刻なものです。
ワクチン由来ポリオウイルス
委員会は、ナイジェリア北部のBorno(ボルノ州)とSokoto(ソコト州)とパキスタンのQuetta(クエッタ)の3か所では、新たにワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)の感染発生は確認されていないことを議題に上げました。これらの感染発生は、感染が常在する国では、ワクチンが接種された人々でも(感染への)脆弱性が存在することを強く示しています。委員会は、これらの感染発生への包括的な対策(の必要性)も議題に上げました。
ロシア連邦からは、チェチェン共和国とモスクワの子ども2人にワクチン由来ポリオウイルス2型(WPV2)が確認されたその後の対策における最新の情報を提出しました。しかし、委員会は、情報には(現状との)いくつもの重大な解離があり、最終的な患者の分類の結果も出ていないことに着目しました。それでも、この事例に対して調査活動と予防接種活動が行われたことについては歓迎を示しました。また、国際的に(感染が)拡大するリスクはほとんどないようでもあります。
ラオスでは、直近のワクチン由来ポリオウイルス患者が、2016年1月に発症しました。最も新しい感染発生への対策の評価と委員会の評価基準に基づき、この国は、もはや感染は存在しないが、まだ(感染に)脆弱なままであるとみなされました。
国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に対する結論
委員会は、ポリオの国際的な感染拡大が、現在も国際的な懸念に関する公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)にあることに全会一致で合意し、さらに3か月間一時勧告を延長することを助言しました。委員会は、この結論に達する中で以下の点について議論しています。
- パキスタンとアフガニスタンとの間には、この3か月間も、野生型ポリオウイルス1型の国際的な感染拡大が続いていること。
- 住民の移動により(感染)拡大のリスクは潜在していること。リスクは、家族、社会や文化的な理由、政情不安により移ってきた移住民、帰還する避難民の状況、遊牧民、さらには、これらのリスクに取り組むための国際協力の必要性、特に、アフガニスタンとパキスタン、ナイジェリアとチャド湖周辺諸国との間での協力の必要性などにかかわらず、潜在しています。
- 2017年に記録された野生型ポリオウイルス1型(WPV1)患者の発生はこれまでで最も少なく、今まで以上にポリオ根絶に近づいている歴史上かつてない特別な状況であること。
- 世界で、最も深刻な病態を起こす(疾患ではある)ものの、ワクチンでの予防が可能な疾患の一つを地球上から根絶する、そのことに失敗したときに生じるリスクは、結果としての莫大な費用につながること。世界規模での感染伝播は劇的に減少し、国際的に拡大する可能性が低下しているものの、(一旦)国際的な拡大が起これば、その結果と衝撃は重大ものになります。
- ポリオ患者の数が減り続け、根絶の可能性が見えてくることで(現状に対し)世界が自己満足する可能性があること。
- ナイジェリアでの野生型ポリオウイルス1型(WPV1)(およびワクチン由来ポリオウイルス)の感染発生は、(医療支援への)利用環境がなく、調査活動に妥協が余儀なくされ、数年間も野生型ポリオウイルスの感染伝播が発見されない状況にある高いリスクの地域の存在が強調されること。チャド湖周辺地域は感染伝播のリスクが高いと思われます。
- 紛争や複雑な緊張状態によって予防接種体制が弱体化し崩壊した国が増えると、国際的な感染の拡大に、さらに深刻な社会的影響をもたらすこと。これらの政情不安定な地域に住む人々は、ポリオに集団感染しやすくなっています。感染しやすい状況での患者の発生は感染の制御を極めて難しくさせ、最終局面で、世界からポリオを根絶することの完結を脅かします。
- ポリオの国際的な感染拡大は国境を越えて発生することが多いため、地域での感染対策の推進と国境での協力体制の強化が重要となること。一方で、ポリオの感染伝播が活発な地域から遠隔地にも、感染が国際的に拡大するリスクがあることへの認識が必要となること。
- さらに、ワクチン由来のポリオウイルスに関して以下の点について議論しています。
- ワクチン由来のポリオウイルス(cVDPVs)は国際的な拡大に対するリスクを有しており、適切な措置と緊急の対策を講じなければ、既に述べられたような感染しやすい人々では、特に脅威となること。
- ナイジェリアとパキスタンにおいてワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)の伝播が続いていることは、ポリオの最終段階における重要な時期にも、人々の免疫応答能に大きな解離があると示していること。
- 2016年4月に2型の経口ポリオワクチンを世界同時に撤退させたことで、ワクチン由来のポリオウイルス2型(cVDPV2)への予防には引き続き緊急性があること
- エボラ流行後の経過を含めて、環境の不安定な状態やその他の緊急事態によって感染が発生(し得る)地域では、定期予防接種を向上させる取り組みを継続させること
- 世界中での不活化ポリオワクチンの不足は、ワクチン由来ポリオの新たな脅威となること
アフガニスタンとパキスタンが国際的に国境にまたがる共通のポリオウイルス貯留地域としての疫学的な単一ブロックを形成しているという概念があるにもかかわらず、国際保健規則(IHR)の考え方では、国境を越えた感染伝播は国家間での国際的な拡がりという構成になります。他の多くの加盟国は、国境を越える人々に対して隣接する国々で平等に(責任を)分配し、疾病の感染伝播に対して疫学的なブロックを形成します。このような疫学的なブロックの存在は、国際協調による対応を必要とするような国際的な(感染)拡大によって、IHRの下でPHEICを決定する前提条件となる、他の国々への現実的もしくは潜在的な公衆衛生上のリスク(の存在)を否定するものではありません。
一時勧告の再検討
現在、世界での(ポリオ)根絶にこれまで以上に近づいていることから、委員会は、一時勧告を現在のリスク状況を踏まえて再調整するために、再検討し、更新する時期に来ていると結論づけました。2014年に国際的な(感染)拡大が国際的な公衆衛生上の脅威となる事象(PHEIC)と宣言された時点では、10か国で野生型ポリオウイルスの感染があり、ウイルスの感染輸出によって7か国(シリア、イラクやイスラエルなどの中東地域、アフリカのソマリア、エチオピア、カメルーン、赤道ギニア)で、感染が再興しました。そのため、一時勧告では、特に感染輸出国に焦点が当てられました。しかし、ソマリアで最後に野生型ポリオウイルスの再興感染が記録されてから、ほぼ3年が経ち、世界の発生状況は大きく変わりました。現在、感染伝播が起きている3か国は、何れも感染輸出が確認されたか否かにかかわらず、ポリオの根絶に向けては重大なリスクがあります。委員会は、多くのリスクの高い地域では調査活動に隙間があり、感染輸出が速やかに発見されない可能性があることを議論しました。また、委員会は、一時勧告の履行義務に対費用効果があることのモデルに基づいた科学的根拠を受け取りました。この根拠は、野生型ポリオウイルスの感染が発生しているすべての国に、関連する一時勧告のさらなる延長(を課すこと)を正当化するものでした。
これらの検討事項に基づき、委員会は、野生型ポリオウイルスに対する勧告を強化し、ワクチン由来ポリオウイルス2型の変異状況を認識することを目的として、一時勧告の対象国のカテゴリー分類を変更しました。
リスクの分類
委員会は、リスク分類に基づいて、野生型ポリオウイルス1型とワクチン由来のポリオウイルスの国際的拡大のリスクを軽減することを目的とした以下の助言を事務局長に提出しました。
- 国際的に(感染が)拡大する潜在的リスクに基づき、野生型ポリオウイルス1型、または、ワクチン由来ポリオウイルス1型か3型の感染が発生している国
- ワクチン由来ポリオウイルス2型の感染が発生している国
- もはや野生型ポリオウイルス1型の感染もワクチン由来ポリオウイルスの感染は発生していないが、野生型ポリオウイルス又はワクチン由来ポリオウイルスへの感染に脆弱な国
野生型ポリオウイルス1型の感染もワクチン由来ポリオウイルスの感染も発生していない国の評価基準
- ポリオウイルス感染者:最新の感染輸出による最初の症例が発症した日に加えて、患者発見、調査、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月、もしくは、最新の感染輸入により発生した直近の患者から12か月以内に発症し報告された急性弛緩性麻痺の全患者がポリオに対し検査され、新たに感染輸入された野生株1型とワクチン由来のポリオウイルスが除外され、かつ、最初の患者から12か月以内に集められた環境サンプルも陰性となり、何れもがさらに長く続いているとき。
- 感染輸出された野生型ポリオウイルス1型もしくはワクチン由来ポリオウイルスの環境下からの分離:新たに感染輸出を受けた国の環境下での最初の陽性検体の採取に加えて、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。
- これらの判断基準は、(例えば、[ナイジェリアの]ボルノ地域など)調査活動に対して厳格さを増した評価が必要とされる(感染の)常在国では変わることもあります。
一時勧告について
国際的に(感染が)拡大する潜在的リスクに基づき、野生型ポリオウイルス1型、または、ワクチン由来ポリオウイルス1型か3型の感染が発生している国
(現在は、パキスタン、アフガニスタン、ナイジェリア)
これらの国には、以下の行動の実行が求められます。
- もし、宣言がなされていないならば、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝播の阻止が国家の公衆衛生上の緊急事態であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われている国では、この緊急事態の状態が維持されるべきです。
- 全ての年齢で、全ての住民および4週間以上の長期滞在者は国際渡航の12か月前から4週間前までに1回の2価ポリオ生ワクチン(bOPV)又は不活化ワクチン(IPV)の接種を受けていることを確認すべきです
- 4週間以内に急な旅行を行う人々で、12か月前から4週間前までにポリオ生ワクチンもしくは不活化ワクチンを接種していない人は、出発までに1度はポリオワクチンを接種していることを確認すべきです。これでも、有益性があります。特に、これは頻繁に旅行する人に当てはまります。
- そのような渡航者には、ポリオワクチンの接種記録として、IHR(2005)別添6で明記された国際予防接種証明書または予防接種の証明書が発行されていることを確認すべきです。
- 適切なポリオ予防接種の書類を欠いたままでは、いかなる住民にも出発の時点で海外渡航を制限すべきです。これらの勧告は、渡航の手段(例えば、陸、空、海)に関係なく、すべての出発地から海外渡航する者に適用されるべきです。
- これらの国は、国境を越える旅行者や国境周辺に住むハイリスクの住民へのワクチン接種率を大幅に高めるために、国、地域、地方レベルで調整を図り大幅に向上させることで、国境を越えた取り組みをさらに強化する必要があります。国境での取り組みの向上には、国境通過の際にワクチン接種の状況確認の管理を強化するとともに、国境を越えた後にワクチン未接種が確認された旅行者の割合を追跡することなどが含まれている必要があります。
- これらの対策は以下の基準が達成されるまで継続されるべきです。(i)新たな感染輸出がなく、少なくとも6か月を経過すること、(ii)すべての感染地域やハイリスク地域で質の高い根絶活動が完全に実施されたことの証拠となる書類が作成されていること、そのような書類がない場合には、その国がもはや感染がないことを評価する上記の基準を満たすまで、これらの対策が継続されること。
- 海外旅行に関する一時勧告の実施状況の報告書を事務局長に提供する必要があります。
ワクチン由来ポリオウイルス2型の感染が発生している国
(現在は、パキスタン、ナイジェリア)
- ポリオウイルス2型への感染に対応するために独立した体制が必要であることに留意して、2価単独の経口ポリオワクチンの諮問グループの勧告に基づいて、世界規模で2価単独の経口ポリオワクチンを備蓄の中から使えることを検討する必要があります。
- もし宣言していなければ、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝播の阻止が国家の公衆衛生上の緊急事態であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われている国では、この緊急事態の状態が維持されるべきです。
- 全ての住民と4週間以上の長期滞在者は(もし国内での使用が可能ならば)海外渡航の12か月前から4週間前までに1回不活化ワクチン(IPV)の接種を受けることを推奨すべきです。4週間以内に急な旅行を行う人々でも、出発までに1回はポリオワクチンを接種することを推奨すべきです。
- そのようなワクチン接種を受けた渡航者はポリオワクチン接種状況の記録を適切な文書で所有することを確認すべきです。
- 諮問グループからの助言に基づき、ポリオウイルスの早期発見のための調査活動を強化し、難民、旅行者、国境を越える人々にワクチンを接種するために、国境を越えた、地域でまとまった協力体制を強化することが必要です。
- これらの対策は以下のような基準が達成されるまで継続されるべきです:(i)少なくとも6か月間、国内のどのような検査検体からもワクチン由来ポリオウイルス2型の感染伝播が検出さずに経過すること、(ii)すべての発生地域とハイリスク地域で質の高い根絶活動が完全に実施された証拠文書が作成されていること。そのような書類がない場合には、その国が「もはや感染がない国」を評価する基準を満たすまでこれらの対策は継続されること。
- 感染伝播の証拠なく12か月間を終えたときには、一時勧告を実行するために取られた対策の報告書を事務局長に提供する必要があります。
もはや野生型ポリオウイルス1型の感染もワクチン由来ポリオウイルスの感染も発生していないが、野生型ポリオウイルス又はワクチン由来ポリオウイルスへの感染に脆弱な国
野生型ポリオウイルス1型
- カメルーン(最後の感染発生は2014年7月9日)
- ニジェール(最後の感染発生は2012年11月15日)
- チャド(最後の感染発生は2012年6月14日)
- 中央アフリカ共和国(最後の感染発生は2011年12月8日)
ワクチン由来ポリオウイルス
- ウクライナ (最後の感染発生は2015年7月7日)
- マダガスカル(最後の感染発生は2015年8月22日)
- ミャンマー (最後の感染発生は2015年10月5日)
- ギニア (最後の感染発生は2015年12月14日)
- ラオス(最後の感染発生は2016年1月11日)
これらの国には、以下の行動の実行が求められます。
- 人々の免疫機能を押し上げるために、定期予防接種を早急に強化すること。
- 検出されなかった野生型ポリオウイルス1型とワクチン由来ポリオウイルスが伝播するリスク、特にリスクの高い移動民と感染に脆弱な人々のリスクを下げるために、調査活動の質を向上させること。
- 移動民、国境を越える人々、国内避難民、難民やその他の感染しやすい人々へのワクチン接種を確実に実施する取り組みを強化すること。
- 野生型ポリオウイルス1型とワクチン由来ポリオウイルスの速やかな発見とハイリスクの集団へのワクチン接種を確実に実施するために、地域協力と国境を越えた連携を強化すること。
- 質の高い調査活動とワクチン接種活動へ十分な手順書を作成し、これらの対策を維持すること。
- 野生型ポリオウイルス1型または新たに出現し伝播するワクチン由来ポリオウイルスの再侵入の痕跡なく12か月を経過させたときには、一時勧告を実施するために講じた対策について事務局長に報告書を提出すること。
*チャド湖周辺の国々では、野生型ポリオウイルス1型の感染もワクチン由来ポリオウイルス2型に最後に感染した患者のうち、いずれか最も新しい患者発生から12か月後になる予定です。ウクライナでは、最後の患者(上記)に基づき、報告書は2017年8月に、ミャンマーは2017年11月に、マダガスカルは2017年9月に、ギニアは2017年1月に提出される予定で、ラオスは2018年2月に提出される予定です。
その他の検討事項
委員会は、WHOに対し、オランダでの事例を慎重に検討し直し、このような偶発的なウイルス漏洩を予防・対処するために、適用が可能なすべてのガイダンスを読み、検討するとともに、さらに必要に応じてガイダンスを作成することを助言しました。
委員会は、ロシア連邦のワクチン由来ポリオウイルスが依然として分類されておらず、この事例が6月の欧州地域の認証委員会でさらに検討され、2価単独の経口ポリオワクチンの出荷について諮問委員会で現在も検討が行われていることを議論しました。
委員会は、ポリオ根絶計画の重大な局面において、感染の発生している国および感染に脆弱な国のすべて、並びに、これまでに一時勧告の対照となっていたすべての国(ソマリア、エチオピア、シリア、イラク、イスラエル)に向けて、IHRに基づく一時勧告の実施に対応するための適切な支援を拠出することを、ポリオ根絶への世界中の加盟国に強く要請しました。
委員会は、公衆衛生上の便益の詳細な分析と、一時勧告の実施に向けた公衆衛生上の対費用効果の詳しい分析が完了し、現在、公開前に査読を受けていることを議題に上げました。
委員会は、すべての国に対し、ポリオ再興につながるような自己満足を避けることを要請しました。調査活動には、感染の再興をすばやく発見し、特に、調査活動においては政情不安や調査の不足からの影響を慎重に評価することに注意を払う必要があります。また、現地を訪問できないためにワクチン接種が受けられない子どもの割合が高い地域では、住民全体を追跡する必要があります。
野生型ポリオウイルス1型およびワクチン由来ポリオウイルスの伝播に関する助言と、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、赤道ギニアによって作成された報告書に基づき、事務局長は、委員会の評価を受け入れ、2017年5月2日に、ポリオウイルスに関する状況が、野生型ポリオウイルス1型とワクチン由来ポリオウイルスの両方に対して、国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に該当すると決定しました。事務局長は、「国際的に(感染が)拡大する潜在的リスクに基づき、野生型ポリオウイルス1型、または、ワクチン由来ポリオウイルス1型か3型の感染が発生している国」、「ワクチン由来ポリオウイルス2型の感染が発生している国」、そして「もはや野生型ポリオウイルス1型の感染もワクチン由来ポリオウイルスの感染も発生していないが、野生型ポリオウイルス又はワクチン由来ポリオウイルスへの感染に脆弱な国」に対する委員会の勧告に署名しました。そして、事務局長はIHRの下で委員会によって改定されたものとして、2017年5月2日から有効となるポリオウイルスの国際的な拡大のリスクを低下させるための一時勧告を延長しました。
事務局長は、委員会委員とアドバイザーの助言に対して感謝の意を示しました。
出典
WHO.Media center news.WHO Statements. 2 May 2017
Statement on the13th IHR Emergency Committee meeting regarding the international spread of poliovirus.
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2017/13th-ihr-polio/en/