西太平洋地域における症状・疾患サーベイランス報告(更新3)
2017年19-23週に報告されたWHO西太平洋地域事務局(WPRO)のサーベイランス情報をまとめて掲載いたします。
- 註1:発生時期に時間差がありますので、詳細は原文でお確かめください。
- 註2:[ ]の数字は報告週です。
太平洋地域での症状・疾患サーベイランス報告システム(PSSS)では、伝染性感染症の発生を示唆する情報の報告をしています。データは、急性発熱と発疹、下痢、インフルエンザ様疾患、遷延性の発熱の4つの症状群について、太平洋地域の23か国200か所以上の医療施設から収集されています。PSSSは、伝染性感染症に対する極めて貴重な早期警報ツールとしての、また、太平洋諸島の地域と国々、WHO、太平洋共同体のようなその他の国際機関との間で定期的に連絡をとる機構制度としての役目を果たしています。
概要
- 急性発熱と発疹:ニウエ[19-21]、フィジー[19-21,23]、北マリアナ諸島[20]、フランス領ポリネシア[20-23]、アメリカ領サモア[21]、キリバス[22,23]
- 下痢:ニウエ[19,20]、北マリアナ諸島[20]、フランス領ポリネシア[22]
- 遷延性発熱:キリバス[21]
疾患別の発生状況
デング熱
フィジー
2017年1月から6月4日までに、患者1,612人が報告されました。このうち、患者のほとんどが西部と中央部の保健衛生地区からでした。フランス領ポリネシアのLouis Malardé研究所によって、デング熱2型が流行していることが確認されました[ここまで第23週より]。5月14日の時点では、患者は1,471人でした。死亡者3人がでました [ここまで、第20週より]。
ニウエ
(デング熱)患者数の増加がみられることが報告されています。最近、ニュージーランドの環境科学研究施設(The Institute of Environmental Science and Research)に送られた検体から、デング熱4型であると判明しました [ここまで、第23週より]。5人の患者からNS1蛋白もしくは標準デング熱診断の迅速検査IgMによる陽性反応が出ました[ここまで、第20週より]。
ニューカレドニア
2016年9月1日から2017年6月14日までに、デング熱患者は4,225人となりました。デング熱1型、2型、3型が流行しています。(これまでに)10人の死亡者がでました。 週毎の患者数は減ってきています[ここまで、第23週より]。2017年6月7日の時点では、デング熱患者が4,078人、死亡者が10人、2017年5月31日の時点では、デング熱患者が3,933人、死亡者が10人、2017年5月3日の時点では、デング熱患者が3,682人でした。この時点で、(既に)週毎の患者数は減ってきています[ここまで第20、21、22週より]。
バヌアツ
2016年11月以降、2017年6月15日までに、患者2,950人が報告され、そのうちの5.5%が入院を必要としました。デング熱2型の流行が確認されました。(しかし)流行は、終息したようです[ここまで、第23週より]。2017年5月4日の時点で、デング熱患者は、入院患者(2016年11月以降)147人(5%)を含めて、2,843人で、患者は少しずつ減ってきていました[ここまで、第19週より]。
急性発熱と発疹
キリバス
キリバスの調査活動担当者から、デング熱やチクングニア熱の疑い患者がでていることが確認されたことで、早期警戒警報および対策システム(EWARS)からの注意喚起が行われました。2017年5月24日以降、患者数の増加が注意深くみられています。ニュージーランド環境科学研究所に検体が送られ、確認試験が行われており、結果が待たれています[ここまで、第22週より]。
流行性耳下腺炎(ムンプス)
マーシャル諸島
ムンプスの流行が続いています。2017年6月10日までに、1,033人の患者の発生がありました。このうち、82%はMajuro(首都マジュロ)での患者です。患者は、周辺の島々にも拡がっています。流行へのワクチン接種として、4月17日に3種(麻しん、ムンプス、風しん)混合ワクチンの接種が開始されました。ムンプスの流行が発生している全島を対象として、集団予防接種が行われています。 [ここまで第23週より] 。5月27日の時点では、患者は957人でした。このうち、83%が首都マジュロでの患者でした[ここまで第21週より]。5月20日の時点では、患者は858人でした。このうち、大半が首都マジュロに居住する、14歳以下の子どもでした。2回のMMRワクチンの接種を終えていない子どもには、ワクチンを接種することが呼びかけられています[ここまで第20週より]。
トンガ
5月21日までに、患者が140人発生し、流行となりました[ここまで第20週より]。
A型肝炎
マーシャル諸島
最近のほとんどの患者は周辺の島々で5月末までに発生しており、週毎の患者数は大きく減少してきています。2016年9月以降、2017年6月11日までに、171人の患者がでました。A型肝炎ワクチンの集団予防接種が、首都マジュロの学童および患者との接触者に対して実施されました。周辺の島々での予防接種も計画されています[ここまで第23週より]。
出典
- Weekly Pacific syndromic surveillance report. Week 23, ending 11 June 2017
http://www.wpro.who.int/southpacific/programmes/communicable_diseases/disease_surveillance_response/PSS-11-June-2017/en/ - Weekly Pacific syndromic surveillance report. Week 22, ending 4 June 2017
http://www.wpro.who.int/southpacific/programmes/communicable_diseases/disease_surveillance_response/PSS-4-June-2017/en/ - Weekly Pacific syndromic surveillance report. Week 21, ending 28 May 2017
http://www.wpro.who.int/southpacific/programmes/communicable_diseases/disease_surveillance_response/PSS-28-May-2017/en/ - Weekly Pacific syndromic surveillance report. Week 20, ending 21 May 2017
http://www.wpro.who.int/southpacific/programmes/communicable_diseases/disease_surveillance_response/PSS-21-May-2017/en/ - Weekly Pacific syndromic surveillance report. Week 19, ending 14 May 2017
http://www.wpro.who.int/southpacific/programmes/communicable_diseases/disease_surveillance_response/PSS-14-May-2017/en/