2017年のニュース

リフトバレー熱 (ファクトシート)

2017年7月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

リフトバレー熱(RVF)は、主に動物に感染を及ぼし、ときには人にも感染する、ウイルス性の人畜共通感染症です。
人に感染する場合のほとんどは、感染した動物の血液または組織と接触することで成立します。
人への感染は、ウイルスを持った蚊に刺されることでも起こります。
これまでのところ、RVFウイルスが人から人に伝播したことは報告されていません。
RVFの潜伏期間(感染から症状発症までの期間)は、2~6日までさまざまです。
動物におけるRVFの発生は、動物への予防接種計画を継続して行うことで防ぐことができます。

概観

 リフトバレー熱(RVF)は、主に動物に感染し、ときに人にも感染する、ウイルス性の人畜共通感染症です。感染は、動物にも人にも重篤な病態を引き起こすことがあります。また、この疾患は、RVFに感染した家畜の死亡や流産によって経済的に大きな損失ももたらします。

 RVFウイルスは、Phlebovirus属の1種です。このウイルスは、1931年に、ケニアのリフトバレー(Rift Valley)の農場で、ヒツジでの流行を調べているとき、最初に発見されました。

 それ以来、サハラ以南のアフリカでは、流行が報告されています。エジプトでは、1977年に爆発的な流行が報告されました。RVFウイルスは、ナイル川の灌漑水路に沿って感染した家畜が取引され、エジプトに侵入してきました。ケニア、ソマリア、タンザニアでは、1997年から1998年にかけて、エルニーニョ現象と大規模な洪水の後、感染の流行が発生しました。サウジアラビアとイエメンでは、アフリカの角と呼ばれる地域で、感染した家畜が取り引きされた後、2000年9月にRVFが広がりました。これは、この病気の発生がアフリカ大陸以外で報告された最初のもので、アジアやヨーロッパなど、他の地域にも及ぶ可能性が懸念されました。

人への感染経路

 人での感染のほとんどは、感染した動物の血液または組織と接触することで成立します。このウイルスは、屠殺中または屠殺後の解体処理での動物組織の取り扱い、動物の出産の補助、獣医師による治療処置の実施、屠殺動物の肉塊や胎児の処理などの過程で人に伝播する可能性があります。したがって、牛飼い、農家、屠殺場の労働者、獣医師など、特定の職業の集団には、感染への高いリスクがあります。

 このウイルスは、感染したナイフによる傷や破れた皮膚との接触、感染した動物を屠殺した時に発生したエアロゾルの吸入などでのウイルスとの接触によって人に感染します。

 感染した動物では殺菌されていないミルクや未調理のミルクを摂取することでも、人がRVFに感染した可能性を示すいくつもの証拠があります。
・人への感染は、ウイルスを持った蚊の刺されても成立します。最も一般的なのは、シマカ属(Aedes)やイエカ属(Culex)の蚊によるものです。吸血性のハエによってもRVFウイルスに感染する可能があります。
・これまでのところ、RVFウイルスが人から人に伝播したことは報告されていません。標準的な感染防御および予防対策が行われていれば、医療従事者にRVFが伝播したことは報告されてはいません。
・都市部でRVFが流行したことの証拠はありませんでした。

人への感染の臨床上の特徴

人へのRVFの感染病態(軽度)
・RVFの潜伏期間(感染から症状発症までの期間)は、2~6日までさまざまです。
・感染した人は、自覚できる程の症状を感じないか、インフルエンザ様の突然の発熱、筋肉痛、関節痛および頭痛をともなう発熱性の症候群によって特徴づけられる軽度の感染病態を示します。一部の患者は、項部硬直、光線過敏、食欲不振や嘔吐を発症することもあります。これらの患者は、初期段階で髄膜炎と誤診されることがあります。

人へのRVFの感染病態(重症)

 人への感染のほとんどは比較的軽症ですが、極一部の患者はかなり重篤な病態を発症します。これには、眼球(眼)疾患(患者の0.5~2%)、髄膜脳炎(患者の1%未満)、出血熱(患者の1%未満)の3つの異なる症候群うちの1つまたは複数が現れます。

 人がRVFに感染したとき重篤な形態の臨床的特徴は、次のようになっています。

 眼の病態:この病態では、軽度の疾患症状に関連して、通常、網膜に病変が起こってきます。眼での病変の発症は、最初に症状が現れてから、通常1~3週間で起こります。患者は、大抵、眼がぼやける又は視力が落ちていると報告してきます。この病態は、10~12週間以内に、その後にほとんど影響を伴うことなく回復します。しかし、病変が黄斑部に発生すると、50%の患者は永久的に視力を失ってしまいます。眼の病態のみの患者では、死亡することは稀です。

 髄膜脳炎の病態:髄膜脳炎の発症は、通常、最初にRVFの症状が現われてから1~4週間後に発症します。臨床的上の特徴は、強烈な頭痛、記憶喪失、幻覚、錯乱、方向感覚の喪失、めまい、痙攣、嗜眠および昏睡などです。神経学的な合併症は、遅れて出現することがあります(60日以上後でも)。この型の病態のみを起こす患者での致死率は低いですが、重篤になることが多く、しばしば神経学的な機能欠損が起こります。

 出血熱の病態:この病態は、発症の2~4日後に現れます。黄疸など、重度の肝臓障害の徴候から始まります。その後、出血の徴候が現れ、血液を嘔吐し、血便を排泄するとともに、発疹や斑状疱疹(皮膚の出血によって引き起こされるもの)、鼻や歯肉からの出血、月経過多や静脈穿刺部位からの出血などが現れます。出血徴候を発症する患者では、致死率が約50%と高くなっています。通常、死に至るのは、発症の3~6日後です。出血性黄疸の病態を示すRVF患者では、最大10日間、ウイルスが血液から検出されます。

 全体での致死率は、流行毎に大きく異なりますが、全体として記録されたものでは1%未満です。死に至るほとんどは、出血性黄疸の病態を示す患者で起こります。

2000年以降の流行の発生
 
人に重篤な病態を起こしたRVF
2016年、ニジェール
 2016年10月11日までに、Tahoua州でRVFによる死亡者28人を含めて、疑い患者105人が、保健省から報告されました。
2012年、モーリタニア
 モーリタニア保健省は、2012年10月4日にRVFの発生を宣言しました。2012年9月16日(発端となった患者の発症日)から2012年11月13日までに、6州から死亡者18人を含めて、合計で患者136人が報告されました。
2010年、南アフリカ共和国
 南アフリカ共和国政府は、2010年2月から7月にかけて、9つの州で、死亡者26人を含めたRVF確定患者237人を報告しました。
2008年-2009年、マダガスカル
 マダガスカル保健省は、2008年12月から2009年5月までに、死亡者7人を含めて、疑い患者236人を報告しました。
2008年、マダガスカル
 マダガスカル保健省は、2008年4月17日にRVFの流行発生を報告しました。2008年1月から6月までに、4つの州から死亡者19人を含めて、合計でRVF疑い患者476人を報告しました。
2007年、スーダン
 連邦保健省は、2008年10月28日にRVFの流行発生を報告しました。2007年11月から2008年1月までに、スーダンでは死亡者230人を含めて、合計で患者738人を報告しました。
2006年、ケニア、ソマリア、タンザニア
 ケニアでは、2006年11月30日から2007年3月12日まで、RVFによる死亡者234人を含めて、合計で患者684人が報告されました。ソマリアでは、2006年12月19日から2007年2月20日までに、死亡者51人を含めて、合計で患者114人が報告されました。タンザニアでは、2007年1月13日から5月3日にかけて、死亡者109人を含めて、合計で患者264人が報告されました。
2003年、エジプト
 エジプト保健省は、2003年にRVFによる死亡者27人を含めて、合計で患者148人を報告しました。
2000年、サウジアラビア、イエメン
 サウジアラビア保健省は、RVFによる死亡者87人を含めて、合計で患者516人を報告しました。イエメン公衆衛生省は、2000年に、RVFによる死亡者121人を含めて、合計で疑い患者1087人を報告しました。

診断

 RVFの症状はさまざまで、特異的症状を欠くため、臨床的診断はしばしば困難となります。特に、発症初期には困難です。RVFは、他のウイルス性出血熱と区別することができません。マラリア、細菌性赤痢、腸チフス、黄熱など、多くの発熱性疾患との鑑別も困難です。
 確定診断は、中央検査施設のように検査が可能な施設で実施することが必要です。検査検体(の取り扱い)は危険で、細心の注意を払って取り扱わなければなりません。RVFウイルスへの感染は、以下の検査を用いて検査したときのみ確定診断が可能です。
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法
IgGおよびIgM酵素結合免疫吸着法(ELISA)
細胞培養によるウイルス分離

治療とワクチン

 ほとんどのRVF患者は比較的軽症かつ短期間であるため、これらの患者に特別な治療は必要ありません。かなり重篤な患者でも、軸となる治療は一般的な支持療法です。

 人が使用するために不活化ワクチンが開発されています。しかし、このワクチンは承認されておらず、市販はされていません。これは、RVFへの暴露のリスクが高い獣医師や検査施設の職員を保護するために、試験的に使用されています。他の候補ワクチンも調査が行われています。

宿主動物におけるRVFウイルス

 RVFは、多くの種類の動物に感染し、ウシ、ヒツジ、ラクダおよびヤギなどの家畜にも重篤な病態を引き起こします。ヒツジとヤギは、ウシやラクダよりも感染しやすいようです。

 また、年齢は、重症型の病態への感受性を決める重要な要因であることが示されています。RVFに感染した子ヒツジの90%以上は死亡しますが、成体のヒツジの死亡率は10%程度まで下がります。

 妊娠中に感染した雌ヒツジの流産率はほぼ100%です。動物におけるRVFの流行は、しばしば、家畜内で説明できない流産の波として現れ、流行が始まるシグナルとなります。

生態学および媒介蚊

 いくつもの異なる種の蚊が、RVFウイルスを伝播する媒介昆虫になります。伝播する能力をもつ媒介蚊の種類は、地域毎に異なり、違った種類の蚊は、ウイルスの伝播を維持する際に違った役割を果たしています。

 RVFウイルスは、主に、ウイルスを持った蚊(主に、シマカ属の蚊)に動物が刺されることで拡がります。また、この蚊も感染した動物から血を吸うことでウイルスを獲得します。そして、雌の蚊は、卵から孵化した次の世代の蚊にウイルスの感染力をつなげ、卵を介して子孫に直接ウイルスを伝播することができます。

 しかし、RVFの主要な感染流行を分析するには、生態学的に異なる2つの状況に考慮する必要があります。最初の感染巣の領域では、RVFウイルスは、媒介昆虫と宿主との間で伝播を介して持続され、シマカ属の蚊の垂直伝播によっても維持されます。最初の感染巣で感染が発生している間に、この病気は、家畜の移動、受動的な蚊の分散、Culex Mansonia Anopheles(イエカ属、ヌマカ属、ハマダラカ属)など、現地で伝播の能力をもつ蚊が機能的に媒介蚊の役割を果たすことによって、感染していない草食動物の中で増幅されることなどで、二次的な感染巣に伝播する可能性があります。長期間にわたって蚊の個体数が富む灌漑地形は、二次的な疾病伝播に非常に有利な場所となります。

感染の予防と管理

動物におけるRVFの管理

 動物におけるRVFの発生は、動物への予防接種の計画を継続することで防ぐことができます。獣医学領域での使用用には、加工した弱毒化生ウイルスおよび不活性化ウイルス・ワクチンともに開発されています。長期の免疫を獲得するのに生ワクチンの接種1回しか必要としません。しかし、このワクチンは妊娠中の動物に接種した場合には、自然流産を引き起こす可能性があります。不活化ウイルス・ワクチンには、この副作用はありません。しかし、免疫を獲得するには複数回の投与が必要で、感染が常在する地域では問題となる可能性があります。

 動物での感染を予防するには、流行の前に動物の予防接種を実施する必要があります。 流行が発生した場合には、流行を増強するリスクが高いために、動物へのワクチン接種は実施してはいけません。大規模な動物への予防接種キャンペーンの間、動物の健康を管理する者は、投与の際のバイアルを複数回使用することや注射針および注射器の再使用によって、何気なくウイルスを感染させていることがあります。動物の群れ一部が既に感染していれば、病気の明らかな徴候を示していない場合でも、ウイルスは群れに感染し、その流行が拡大するかもしれません。

 家畜の移動の制限または禁止は、感染の発生した地域から感染が発生していない地域へのウイルスの拡大を遅らせることに効果があります。

 動物におけるRVFの発生は人への感染に先行するため、新たな患者を発見するために積極的に動物の衛生監視システムを確立させておくことは、家畜動物と人、両方の公衆衛生担当局が早期に警報を提供する上で不可欠です。

公衆衛生教育とリスクの軽減

 RVFの発生中、動物、特に体液に直接またはエアロゾルを介して濃厚に接触することは、RVFウイルスへの感染の最も大きなリスク要因であると確認されています。RVFへの感染のリスク要因への意識を高め、蚊刺しを防ぐために、個々人でできる防護対策を取ることが、人での感染と死亡を減らす唯一の方法です。

リスク軽減のための公衆衛生上のメッセージは、次のことに重点をおいています。
・(感染に対し)安全でない動物の畜産や屠殺の慣行からの結果として、動物から人への感染リスクを低減すること。病気の動物やその組織を取り扱うとき、また、動物を屠殺するときには、手指の衛生習慣、手袋などの適切な個人用保護具を着用すること。
・新鮮な血液、生乳または安全でない動物の組織の消費から起こる動物から人への感染のリスクを低減すること。流行地域では、食べる前にすべての動物製品(血液、肉、牛乳)を徹底的に調理することが必要です。
・(防虫剤を)染み込ませた蚊帳、可能であれば個人での虫除け剤、明るい色の服(長袖シャツとズボン)の使用、さらに、媒介する蚊が活発に活動する時間帯での屋外活動を避けることで、蚊刺しから個人および地域社会を保護することが重要です。

医療施設での感染管理

 RVFの人から人への感染は証明されていません。しかし、感染者または感染した血液や組織と接触することにより、感染者から医療従事者にウイルスが伝播するという理論上のリスクは依然として存在しています。RVFが疑われるか、確認されている患者に医療処置を行う医療従事者は、患者の検体を取り扱う際に、標準的な予防対策を実施する必要があります。

 標準的な予防対策は、確実に、基本レベルで感染防御をするために必要とされる作業手順を定義しています。(患者や動物の)感染が認められる又は確認されるか否かにかかわらず、すべての患者の治療および医療処置においては、標準的な予防対策が推奨されます。標準的な予防対策は、目に見える血液が付着しているかどうか、傷のない皮膚や粘膜と接触しているかどうかにかかわらず、血液(乾燥した血液を含む)、その他すべての体液、分泌物および排泄物(汗は含まない)の取り扱いも網羅しています。

医療処置における標準的な予防措置

 上述したように、検査施設の職員も危険に曝されています。診断のためにRVFの疑いのある人および動物から採取した検体は、訓練を受けた職員によって取り扱われ、適正に装備された検査施設で処理される必要があります。

媒介する昆虫の制御

 この他にRVFの拡大を管理する方法には、媒介昆虫の制御および媒介昆虫の咬傷に対する防御が関係します。

(蚊の)繁殖地が明確に確認され、その規模と大きさが限定されているならば、蚊の繁殖地の駆除は、媒介する蚊の駆除の最も有効な手段です。しかし、通常、洪水の期間中には、繁殖地の数と程度が、幼虫駆除対策を実行するには多くなりすぎます。

RVF予測モデルと気候モデル

 予報は、頻繁に(流行が)発生する高いリスクと関係する気候条件を予測し、疾患管理を向上させる可能性があります。アフリカでは、サウジアラビアとイエメンでのRVFの発生が、平均以上に起きた降雨の時期と密接に関係しています。降水量の増加による植生の反応は、遠隔捜査による衛星画像で容易に計測および監視することができます。また、東アフリカにおけるRVFの発生は、ENSO(ElNiño-Southern Oscillation)現象の暖温相で生じる大雨と密接に関連しています。

 これらの結果から、衛星画像と気象/気候予測データを使用して、RVFの予測モデルと早期警告システムの開発を成功させることができました。早期警告システムは、これらが発生の早い段階で動物の感染を発見する切っ掛けとして利用され、当局が差し迫まる流行を回避するための対策を実施することを可能にしています。

 新しい国際保健規則(2005年)の枠組みの中で、新たな地域への拡散リスクの包括的な評価とともに、RVFの発生予測と早期発見は、適切な時期に有効な管理対策を実施する上で不可欠となっています。

WHOの取り組み

 2016年におけるニジェールの流行で、WHOは、保健省、獣医学組織、首都ニメアの医学・衛生学研究センター(Centre de Recherche Médicale et Sanitaire:CERMES)のメンバーを含めて、多領域にわたる緊急対策チームを送りました。この編成チームは、2016年8月31日に、現地調査のために配置されました。

 ニジェールでは、WHOの国事務所が、疾病調査、流行の調査、診断の定義のための技術上のガイドライン、患者の管理、検体の搬送、リスクの相互情報伝達に関する技術上と財政上の支援を提供しています。

 国連食糧農業機関(FAO)、世界動物衛生機関(OIE)、およびWHOは、動物と人の健康における調整を図り、流行対策を行うニジェールに対し追加支援を提供しています。

 WHOは、国際的な支援の調整を図るために、支援組織GOARN(地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク)とともに活動しています。国際赤十字・赤新月連盟(IFRC)およびユニセフは、流行対策を支援しています。

出典

WHO. Media centre. Fact sheet. Reviewed July 2017.
Rift Valley fever
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs207/en/