2017年のニュース

レジオネラ症について (ファクトシート)

2017年11月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

レジオネラ・ニューモフィラは、1976年にアメリカ合衆国の会議センターで重症肺炎が集団発生した原因として、1977年に初めて確認されました。
レジオネラの最も一般的な感染経路は、水しぶき、噴射水、散布霧から産生される細菌を含んだ微粒子(エアロゾル)を吸い込むことです。免疫力の弱った入院患者では、感染が細菌を含む水や氷を誤嚥することででも起こり得ます。
レジオネラ肺炎(在郷軍人病)の潜伏期間は2~10日(いくつかの集団感染の記録でも最大16日以内)です。
呼吸不全や多臓器不全をともなう進行性の肺炎を起こすために、死に至ることがあります。
通常、レジオネラ肺炎(在郷軍人病)は治療しなければ、最初の1週間で悪化します。
報告された症例のうち、75~80%が50歳以上、60~70%が男性です。

背景

 レジオネラ症は重症度が、軽度の発熱状態から重症の時に死に至る肺炎まで幅があります。この疾患は(生活)水や腐葉土で見つかるレジオネラ種に曝されることが原因で起こります。

 曝される状況に基づいて、地域社会の中、旅行中、病院での罹患に分類されます。

 世界的に、水が媒介物となるレジオネラ・ニューモフィラは、集団感染を含めて患者発生の最も身近な原因です。レジオネラ・ニューモフィラとその関連菌種は、湖、川、排水路、温泉、その他さまざまな水源から見つかります。L. longbeachaeを含むその他の菌種は腐葉土の中から見つかります。

 レジオネラ・ニューモフィラは、1976年にアメリカ合衆国の会議センターで重症肺炎が集団発生した原因として、1977年に初めて確認されました。それ以来、管理が不十分な人工的な水まわり、特に、空調設備で使う蒸発凝縮器や工場の冷却塔、公共および民間施設の温水および冷水の水まわり、循環型のジェット・スパなどが感染の発生と関係してきました。

 感染が成立する細菌量はわかっていません。しかし、この疾患は短時間の暴露、さらには発生源から3 km以上も離れた感染源からの暴露でも流行が発生しています。そのため、感染に弱い人は細菌量が極めて少なくても感染すると考えられています。発症の可能性は、水源におけるレジオネラ菌の濃度、エアロゾルの生成と拡散、年齢および感染前の健康状態などの宿主因子、レジオネラの菌株がもつ特別な病原性に左右されます。ほとんどの感染は、病気を発症することはありません。

原因

 原因菌は、水や腐葉土からのレジオネラです。この疾患で最も多い原因菌は、世界中の自然の淡水環境で発見されるL. pneumophilaです。しかし、レジオネラの増殖と拡散の助けとなる環境を造り出す人工の水まわりのシステムが、最も感染(を成立)し易くします。

 細菌は20~50℃(最適温度35℃)の温度の水まわりに生息し、増殖します。レジオネラは活動性の原生動物に寄生したり、水まわりでバイオフィルムを形成したりして生存し、増殖します。この細菌は、原生動物に寄生するときと同じメカニズムで人の細胞にも寄生し、感染症を起こします。

感染経路

 レジオネラの感染伝播の最も一般的な形態は、細菌を含むエアロゾルを吸入することです。レジオネラの伝播と関連をもつエアロゾルの発生源は、空調機の冷却塔、温水と冷水の水まわり、加湿器、ジェットバス・スパです。感染は免疫力の弱った入院患者では、細菌を含んだ水や氷を誤嚥することででも起こり得ます。人から人への直接感染はありません。

分布

 レジオネラ症は世界中に広く分布すると考えられています。

疾患の拡大

 集会で感染したレジオネラ肺炎(在郷軍人病)の発生率は、調査と報告のレベルによって大きく変化します。多くの国では、感染を診断する適切な方法や調査体制が不十分なため、その発生率は不明です。ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカ合衆国では、発見される患者数は人口100万人あたりおよそ10~15例です。

 報告されている患者の75~80%が50歳以上、60~70%が男性です。レジオネラ症の市中での感染および旅行中での感染に対する危険因子には、これ以外にも、喫煙、大量飲酒歴、肺疾患、免疫の抑制、慢性の呼吸不全や腎不全などがあります。

 院内肺炎の危険因子には、手術直後、気管内にチューブを留置する行程のある気管挿管、人工呼吸器、誤嚥、経鼻胃管、および呼吸器系の治療装置の使用などがあります。最も感染に弱い人は、臓器移植を受けた患者、癌患者およびコルチコステロイドで治療を受けているなどの免疫不全状態の患者です。

 診断と適切な抗生物質による治療の遅れ、加齢および合併症の存在が、レジオネラ肺炎(在郷軍人病)による死亡の予測因子となります。

症状

 レジオネラ症は、レジオネラ細菌よる肺炎と非肺炎性の感染を示す総称です。

 非肺炎性疾患(ポンティアック病)は、急性で、自分に限定された(他に感染させない)インフルエンザ様の疾患で、通常2~5日間続きます。潜伏期間は数時間から48時間です。主な症状は、発熱、悪寒、頭痛、倦怠感や筋肉痛です。このタイプの感染は死に至ることはありません。

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)は、潜伏期間が2~10日です(いくつかの集団感染では最大16日までの記録があります)。症状は、発熱、食欲不振、頭痛、倦怠感や無気力などで始まります。一部の患者は、筋肉痛、下痢、昏迷を起こします。通常、感染初期に起こす咳は軽度ですが、約50%の患者は痰を伴います。約3分の1の患者では、血液混じりの痰や血痰が現れます。疾患の重症度には、軽度の咳から急速に致命症に至る肺炎まで幅があります。死に至るのは、呼吸不全や多臓器不全をともなう進行性の肺炎を起こしたときです。

 通常、レジオネラ肺炎(在郷軍人病)は治療なしの状態では、最初の1週間で悪化します。重症肺炎を起こす共通の危険因子として、最も頻繁にみられる合併症に呼吸不全、ショックや急性腎不全および多臓器不全があります。回復には抗生物質による治療が不可欠で、治癒までには数週間から数ヶ月を要します。稀ではありますが、重度進行性の肺炎や効果のない肺炎への治療によって脳に後遺症を起こすことがあります。

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)の死亡率は、疾患の重症度、最初の抗生物質の適切な選択、レジオネラに感染した状況、患者側の因子(通常、疾患は、免疫力の弱い患者でより重症となります)に左右されます。免疫抑制中の患者が無治療の場合、死亡率は40~80%と高く、適切な患者管理と臨床徴候および症状により5~30%まで下げることができます。通常、全体での死亡率は5~10%の範囲内にあります。

対策

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)に対して、現在効果のあるワクチンはありません。

 非肺炎性疾患を呈する患者は、抗生物質などの医療的な処置を必要とせず、自然治癒します。レジオネラ肺炎(在郷軍人病)の患者には、常に、診断を検査で確認し、抗生物質で治療する必要があります。

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)が引き起こす公衆衛生上の脅威は、建物の安全性および水道・配管設備の安全性に対して行政が定める水への安全性計画を実施することで取り組むことができます。これらの計画が、具体的に建物や水道・配管設備に対して実施されていなければなりません。その結果は、管理対策を定期的に点検し、リスクを特定できるレジオネラ菌などに対して確認できるものでなければなりません。感染源をなくしてしまうことはできませんが、実質的なリスクを低減させることはできます。

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)の予防対策は、レジオネラの増殖とエアロゾルの拡散を最小限に抑える管理と対策を適用することに左右されます。これらの対策には、定期的な清掃と消毒、および増殖を最小限に抑えるための物理的(温度)対策または化学処理(殺菌)対策などを取り入れるなど、装置の適切なメンテナンスが含まれます。その実際例はいくつもの例があります。
・殺菌剤の頻回または連続での投入や冷却塔の定期的なメンテナンス、清掃、消毒
・冷却塔からのエアロゾルの拡散を減らすためのドリフト・エリミネータ-の導入
・ジェット・スパ・プールにおける塩素剤などの殺菌剤を適正レベルで維持し、少なくとも週1回は水まわりの配管系全体を完全排水し清掃すること
・温水は50℃以上(温水配管には60℃かそれ以上で留まっていることが必要)、冷水は25以下、理想的には20℃以下、もしくは適切に増殖を抑える殺菌剤で殺菌処理することによって温水・冷水システムの清潔を維持すること。特に、病院などの医療関係施設、老健施設では、これを維持すること
・週1回を基本として、建物内で未使用の蛇口を洗い流し、水の停滞を減らすこと

 このような管理を適用すれば、レジオネラの感染リスクを大幅に低減し、散発的な患者の発生および流行を防げます。誤嚥へのリスクのある患者など、特に免疫力の弱った患者に提供する水や氷に対しては、厳重な予防対策が必要となります。製氷機はレジオネラ肺炎の感染源となり、免疫力の弱った患者には使用されるべきではありません。

 管理と予防の対策は、患者を発見するために一般開業医や地域保健サービスの中で適度な警戒感をもって行われなければなりません。

 WHOは、加盟国から疑問が提起されたときに助言できるように、レジオネラ肺炎の治療と感染管理を支援するために使用できる技術や体制を整えています。

出典

WHO. Fact sheet, Media centre. Updated November 2017
Legionellosis
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs285/en/