デング熱ワクチンQ&A-WPRO

 デング熱ワクチンに関して、新しいデータが出されたことを受けて、WHO西太平洋事務局より、2017年12月10日にデング熱ワクチンの接種に関するQ&Aが出されています。

記事の詳細

 私たちは、デング熱ワクチンには、まだまだ懸念があることを理解しています。今週の初めに私たちのところで多くの質問を受けました。そのため、よくある質問と、その回答をお示しします。

Q.WHOは、デング熱ワクチンの導入に対して、どのようなことを推奨してきましたか?
A. WHOは、2016年7月に、デング熱ワクチンの位置づけについての論文を公表しました。各国でのデング熱ワクチンの導入はすべての人を対象として推奨するのではなく、むしろ、各国で疾患に高い脅威のある地域だけを対象として、デング熱ワクチンの導入の検討を推奨していました。
 この論文では、各国がワクチンの導入を検討しようとすることに加えて、ワクチン導入の可否を決定するときに国が考えるべき問題点や、有益性、リスクなど、満たすべきいくつも条件(の検討)が推奨されています。
 この位置づけは、当時、入手できた科学的な根拠とデータに基づいて決められました。それは、2016年4月中旬に開催された会議と声明に続いて、WHO戦略予防諮問グループ(SAGE)からの助言を受けて示されました。
 WHOのワクチンの位置づけに関する論文は、公衆衛生の担当局および国の予防接種計画の責任者らが、新しいワクチンの導入に関する政府の決定を導くことを意図しています。この位置づけに関する論文は、新たに重要なデータが出されたり、疫学的な状況が変化したりしたときには更新されます。
Q.WHOがデング熱ワクチンの導入を検討する際に検討すべきとして挙げる各国の諸条件とは、どのようなものですか?
 また、フィリピンでデング熱ワクチンが導入されたときに、これらの条件は満たされていましたか?
A. WHOは、疫学データから疾患の脅威が高いと示されている地域(即ち、予防接種対象者の少なくとも70%が既にデング・ウイルスに感染している地域)においてのみ、デング熱ワクチンの導入を検討すべきだと述べています。
 また、WHOは、9歳未満の子どもにはワクチンを接種すべきではないこと、及びワクチンを受ける人は3回の接種を行うべきこと、を推奨しています。
 WHOは、2016年7月の位置づけに関する論文で、特に、ワクチン接種までにデング熱に感染したことのない人々で、ワクチンの効力に対する認識に重大な食い違いがあることを指摘しました。この論文では、9歳以上の子ども(でのデータ)と(決定の)時点で入手できていたデータからは、これまでにデング熱で感染したことのない人で入院や重症デング熱のリスクが強まるということの根拠ある結果は示されていませんでした。しかし、入手できたデータが限られていることや、ワクチン接種の前にデング熱に感染したことのない人での入院や重症デング熱について、すべての年齢層で理論的にリスクが高まることを否定できなかったことに注目が集まりました。このため、WHOは、血清が陰性の人々を対象に、デング熱ワクチン接種からの長期的な恩恵とリスクに関するデータを集めることを(ワクチン)製造企業に要請しました。
 また、WHOの位置づけに関する論文では、デング熱ワクチンを導入したい国々は、包括的なデング熱の感染制御への戦略、ワクチン接種後の有害事象の監視と管理への能力の強化、入院と重症のデング熱患者の発見と報告を可能にするデング熱の調査体制を整備することを、推奨しています。
 WHOは、フィリピン保健省とともに行った記者会見で、デング熱予防接種の取り組みが進められていた3地域では、2016年4月の時点で、これらの条件が満たされていたとの認識を示しました。
Q.フィリピンでデング熱ワクチンの接種計画が始まって以来、何か変化したことはありましたか?
A. デング熱ワクチンの製造企業は、2017年11月30日に、クチンの臨床試験に参加した被験者における長期(6年間)の経過観察および追加分析の結果に基づく新たなデータを発表しました。
 製造企業は、この新しいデータで、ワクチン接種前に既にデング熱に感染したことのある人々には、このワクチンがデング熱から有意に持続性のある防御能を得られることが確認されましたことを述べました。しかし、ワクチン接種前にデング熱に感染したことのない人々では、すべての年齢層で、ワクチン接種の数年後に入院および重症デング熱へリスクが増加することにも警鐘を鳴らしました。
Q.この新しい情報に照らしてWHOは何をしていますか?
A. WHOは、ワクチン専門家と協力して、この新しい情報とデング熱の予防接種計画に向けた影響への評価を行っています。
 WHOのワクチン安全性に関する専門委員会(GACVS)は、2017年12月6日と7日に、WHO本部に集まり、デング熱ワクチンに関する新しいデータについての再検討を行いました。委員会の検討結果は、来週、発表される予定です。
 新しいデータの観点から、WHOは、デング熱ワクチンの勧告事項を補完するために予防接種に関する専門家戦略諮問グループ(SAGE)からも助言を求めています。私たちは、年末までにワクチンの使用に関する詳しいQ&Aを発表し、2018年に位置づけに関する論文を更新する予定です。
Q.WHOは、フィリピン保健省と、どのような連携を行っていますか?
A. フィリピンにある国の事務所を通じて、WHOは保健省と情報を共有し、緊密に連絡をとりながら、新しい情報に対する戦略および運用への対応を支援しています。WHOは、この問題に関する保健省の対策委員会の検討グループにも参加しています。
Q.自分の子どもや自分自身がワクチンを接種して、体調の不良を感じたときには、どうすればいいですか?
A. 予防接種を受けているかどうかに関係なく、誰にでも、デング熱に感染する可能性があります。WHOは、現在も、デング熱の兆候である、高熱、激しい頭痛、眼窩痛、筋肉痛や関節痛、悪心、嘔吐、(リンパ)腺の腫れ、発疹などがある場合には、(予防接種の有無にかかわらず)誰もが医療施設を受診することを勧めています。

出典

WPRO.Media Centre. 10December2017
Q&A on dengue vaccine
http://www.wpro.who.int/philippines/mediacentre/releases/qa_dengue_vaccine/en/