風疹について (ファクトシート)

2018年2月 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要点

  • 風疹は、子どもおよび若年の成人に発生し、感染性で、一般的に軽い症状のウイルス感染症です。
  • 風疹は、出生異常の原因のうち、ワクチンで予防できる最たるものです。妊娠女性が風疹に感染すると、胎児死亡や先天性障害を起こすことがあります。それは、先天性風疹症候群として知られています。
  • 風疹に対する特別な治療法はありません。しかし、この疾患はワクチンで予防できます。

概要

風疹は、感染力をもった急性ウイルス性感染症です。一般的に、風疹ウイルスへの感染は、子どもや大人に軽い発熱や発疹を起こすだけですが、妊娠中、特に妊娠初期(第1期)での感染は、流産や、胎児の死亡、死産、新生児の先天性障害などを引き起します。これは、先天性風疹症候群(CRS)として知られています。

風疹は、感染者がくしゃみや咳をしたときに出す飛沫によって感染します。宿主は人間だけです。

症状

子どもでは、この疾患は症状が軽く、発疹、発熱(39度未満)、嘔気、軽い結膜炎などを起こすだけです。患者の50-80%に起こる発疹は、通常、顔、首回りから始まり、体幹へと下がり、1-3日で治まります。耳下や頸部のリンパ節腫脹は、最も特徴をよく現わす臨床症状です。大人での感染は女性に多く、通常、3-10日続く関節炎や関節痛を起こします。

一旦、感染すると、ウイルスは5-7日程で全身に広がります。通常、症状は曝露機会の後、2-3週間で現れます。最も感染力の強い時期は、通常、発疹が現れた後、1-5日間(原文通り記載)です。

女性が妊娠初期に風疹ウイルスに感染すると、90%の確率で胎児は死亡します。これは、先天性風疹症候群として知られ、流産、死産、重度の出生異常を起こします。先天性風疹症候群を伴った新生児は1年以上もウイルスを排出し続けることがあります。

先天性風疹症候群(CRS)

先天性風疹症候群を伴った子どもは、聴力障害、視力障害、心臓障害、その他にも、自閉症、糖尿病、甲状腺機能不全など、生命に関わる身体障害に苦しむ可能性があります。これらの多くは、高価な投薬、手術、その他にも多額の医療支援を必要とします。

出産可能年齢の女性がこの疾患に対する抗体(予防接種もしくは風疹の既往)をもっていない国では、先天性風疹症候群のリスクが極めて高い状態にあります。ワクチンが導入される以前は、出生1000人あたり4人に上る赤ちゃんが先天性風疹症候群を伴って生まれました。

ワクチンの予防接種

風疹ワクチンは弱毒性生ワクチンで、1回の接種で95%以上の人に長期間の持続免疫をもたらします。これは、自然感染により誘発されるものと同等です。

風疹ワクチンは、1価の製剤(1種類だけの病原に対するワクチン)や、より一般的には他のワクチンとの組み合わせ(麻疹と組み合わせたMRワクチン、麻疹と流行性耳下腺炎[おたふくかぜ]と組み合わせたMMRワクチン、これに水痘を含めたMMRVワクチン)で使用されます。

ワクチン接種後の副作用は一般的に軽度です。注射部位の痛みや発赤、微熱、発疹、筋肉痛などが起こることがあります。2億5,000万人以上の青年および成人を対象としたアメリカ大陸地域での集団予防接種キャンペーンからは、ワクチンに関連する重篤な副作用は特定されませんでした。

WHOの取り組み

WHOは、まだ風疹ワクチンを導入していない全ての国に、既に十分に確立された麻疹の予防接種プログラムを利用して、(風疹ワクチンを)導入することの検討を勧めています。現在までに、WHOの管轄する3つの地域で、この予防可能な出生異常の原因を排除する目標を確立させました。2015年に、WHOアメリカ大陸地域は、世界で初めて、風疹の常在感染の終息を宣言しました。

各国の(予防接種)計画に風疹ワクチンを組み入れる国の数が、着実に、増えてきています。2016年12月には、194か国のうちの152か国で、風疹ワクチンが導入されました。しかし、各国の接種率は、13%から99%までさまざまです。2000年には、102か国670,894人に上った風疹患者の報告は、2016年には165か国22,361人となり、97%低下しました。先天性風疹症候群(CRS)の発生割合は、WHOアフリカ地域と東南アジア地域で最高となっており、これらの地域ではワクチンの接種率が最低となっています。

2012年4月には、麻疹イニシアチブ(現在は、麻疹・風疹イニシアチブとして知られている)が、新しく世界の麻疹・風疹への戦略計画(2012-2020)として始まりました。この計画では、2015年から2020年までの世界の目標が置かれています。

2015年末までに

  • 地域的な麻疹と風疹、および先天性風疹症候群(CRS)を終息させる目標を確立させること

2020年末までに

  • 少なくともWHOの5つの地域で麻疹と風疹の排除を達成すること

WHO戦略的諮問グループ(SAGE)による予防接種に関する世界ワクチン活動計画2017(GVAP)の評価報告に基づいて、未だに風疹ワクチンを導入していない42か国では風疹の感染制御が遅れており、アフリカと東地中海の2地域では、風疹の排除や制御の目標が未だに設定されていません。

SAGEは、風疹の感染制御で得られる新たな恩恵を確実にもたらすことができるように、風疹ワクチンの接種を予防接種計画に組み込むことの促進を勧めています。麻疹・風疹イニシアチブ創設メンバーのひとつとして、WHOは行政に対しては技術支援を、地域住民に対しては定期予防接種計画の向上を行い、対象者を定めた予防接種キャンペーンを開いています。また、WHOの世界麻疹・風疹検査ネットワークが、風疹と先天性風疹症候群の診断と風疹ウイルスの拡散の追跡を支援しています。

出典

WHO.Fact sheet, Media centre.Reviewed19February2018
Rubella
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs367/en/