ジカウイルス感染症の発生国への旅行者に向けた注意情報(更新)

WHO 2019年7月更新

ジカウイルスは、主にウイルスを保有したヤブカ属の蚊が人を刺すことによって感染します。ヤブカ属は、主に日中から夕方に刺咬する蚊です。また、ジカウイルスは性交渉あるいは妊娠中に母胎から胎児にも感染することがあります。ヤブカ属の蚊は、デング熱、チクングニア熱、黄熱やその他のウイルスも伝播します。これらの蚊が媒介するウイルスはしばしば同じ地理的領域の中で伝播します。

WHOは、これまでに得られた情報に基づいて、ジカウイルスが感染伝播する国や地域への渡航または貿易についていかなる制限も行わないよう助言しています。しかしながら、WHOは、とりわけアウトブレイク中は、妊娠中の女性はジカウイルスが感染伝播する地域への旅行を避けることを推奨します。妊娠中にジカウイルスに感染した女性から産まれた乳児の小頭症およびその他の重い先天異常のリスクが増加することに基づきます。

予防対策として、いくつもの国の政府が、これまでに得られた情報と地域におけるリスク要因の評価に基づいて、自国の住民に対し公衆衛生と旅行に関する注意喚起をしています。

ジカウイルスの伝播の可能性のある地域を旅行する前に注意すべきこと

世界のいくつかの地域では、ジカウイルス感染症のアウトブレイクや伝播の進行が引き続き起きています。他の地域では以前のジカウイルス伝播があったとしても最近の伝播はみられておらず、一部の地域でいくつかの散発的な報告事例や低レベルの伝播がみられるだけです。

感染のリスクは、国の中でも地域によって大きく異なり、季節によって異なることがあり、時とともに変化する可能性があります。ほとんどのジカウイルス感染症は症状が無いか軽い非特異的な症状を示すので、発見や報告が行われないことがあるかもしれません。ですから、大規模なアウトブレイクになっていない場合、多くの国や地域では、ジカウイルス感染のリスクに関する正確で新しい情報は限定的なものになります。したがって、ジカウイルス伝播に関する検出や報告がないということは、伝播が起きていないという証拠であることと必ずしも同じとはいえません。

WHOは、ジカウイルス感染とその合併症に関して新興、再興及び世界規模で拡大することに早期に検出し対応するための公衆衛生システムの強化に引き続き取り組んでいます。WHOは、ジカウイルスの伝播とアウトブレイクに関する流行状況を継続的にアップデートし、各国、保健医療関係者および旅行者に対して情報を提供していきます。

Zika epidemiology update July 2019

WHOは、妊娠中の女性、旅行から2ヶ月以内に妊娠する可能性のある女性及びパートナーが旅行から3ヶ月以内に妊娠するかもしれない男性旅行者に対して、ジカウイルスの伝播の恐れのある地域に旅行する前に、ジカウイルス感染のリスクと感染した場合に起こりうる結果について保健医療関係者と確認し、注意深く考慮するよう推奨します。

WHO guidelines for the prevention of sexual transmission of Zika virus
(ジカウイルスの性交渉による感染伝播を予防するためのWHOガイドライン)

ヤブカ属など日中に蚊刺しする蚊によって媒介される、ジカウイルスその他の感染症の伝播の可能性がある地域を旅行している間に注意すべきこと

すべての旅行者は、日中から夕方の時間における蚊刺しの可能性を減らし、性交渉でのジカウイルスへの感染のリスクを避けるための適切な対策を行う必要があります。

日中から夕方の時間帯に蚊に刺されることを防ぐために、旅行者には次のことが勧められます。
・できるだけ全身を覆うような衣服(できれば明るい色)を着ること
・虫除け剤を使用すること。虫除け剤にはDEET(ジエチルトルアミド)、IR3535(3- [N-ブチル-N-アセチル]アミノプロピオン酸エチルエステル)またはKBR3023(イカリジンやピカリジンと呼ばれている)が含まれているものを使用してください。虫除け剤は露出した皮膚に塗ることも、衣類の上から使用することもできますが、使用上の注意の指示に従って厳正に使用しなければなりません。虫除け剤と日焼け止めは一緒に使用することもできますが、その場合は、最初に日焼け止めを塗り、その後で虫除け剤を使用する必要があります。
・ドアや窓に一定間隔の網戸や殺虫成分で処理された網素材のような物理的な障害物を使用し、また、ドアや窓を閉めておくこと
・蚊帳の中での睡眠。ヤブカ属の蚊の活動が活発となる日中には蚊帳を利用すること。

性交渉によるジカウイルス感染のリスクを避けるため、男女ともに、一貫してコンドームを使用するといったより安全な性交渉を行うか、性生活を控える必要があります。

帰国後に注意すべきこと

ジカウイルスがさらに伝播することを防ぐため、ジカ及び他の蚊が媒介する感染症のウイルスが伝播する可能性のある地域から、ベクター(媒介動物)となりうる蚊がいる地域に戻った旅行者は、少なくとも3週間虫除け剤を継続して使用して、蚊に刺されることを防ぎ、蚊が刺してまわることによって他の人々への潜在的に感染が広がることを防ぐ必要があります。

ジカウイルス感染による妊娠の異常や胎児への影響を防ぐため、ジカウイルスの伝播可能性のある地域から戻ったすべての旅行者は、より安全な性交渉を行ってください。正しく一貫したコンドームの使用を含むより安全な性交渉を行うか性生活を控える必要があります。ウイルスへの曝露可能性のある最後の日から、男性においては少なくとも3ヶ月、女性においては少なくとも2ヶ月の間、妊娠中の女性の性的パートナーは、少なくとも妊娠期間中、より安全な性交渉を行うか、もしくは控える必要があります。

帰国した旅行のうち、ジカウイルス感染を疑わせる症状(皮疹、発熱、関節痛、目の充血など)が出現したときは、保健医療関係者とコンタクトを取り、旅行の状況を伝え、保健医療関係者の指示に従って検体検査と医療を受ける必要があります。

妊娠中の帰国者は、医療を受ける際、保健医療関係者に対し旅行歴を伝える必要があります。妊娠中の帰国者であっても、ジカウイルス感染を疑わせる症状がなく、かつ妊娠に関する超音波検査で異常な所見が認められないならば、ジカウイルス感染に係るルーチンの検査は現時点では推奨されていません。

出典

WHO Emergencies preparedness, response
Information for travellers visiting countries with Zika virus transmission  Updated July 2019
https://www.who.int/csr/disease/zika/information-for-travelers/en/