2013年11月19日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新56)

11月18日付で公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、クウェートでMERS(マーズ)コロナウイルスに感染した確定患者が新たに2人発生しました。

1人目の患者は47歳の男性で、10月30日に発症し、11月7日に入院しました。現在、重篤な状態です。2人目の患者は52歳の男性で、基礎疾患(持病)がありました。11月7日に発症し、11月10日に入院しました。この患者も重篤な状態です。

全体として、昨年9月からこれまでに、WHOに報告されたMERSコロナウイルスに感染したと確定された患者は157人で、このうち66人が死亡しました。

現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる傾向がみられた場合には慎重に検討するよう推奨しています。

医療従事者は、引き続き、警戒するよう勧められます。最近、中東から帰国し、SARIを発症した患者には、現在のサーベイランスに関する推奨に示されている通り、MERSコロナウイルスの検査をすべきです。

これまでに報告された患者は初発症状として呼吸器疾患がみられました。下痢のほか、ショックを伴う腎不全や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む合併症もみられています。重症の免疫不全患者では、典型的な所見や症状がみられない可能性もあります。

医療機関では、感染予防・制御を総合的に実施する重要性を再認識すべきです。MERSコロナウイルスの感染が疑われる患者や確定患者に医療を提供する施設では、他の患者や医療従事者、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。

WHOは、すべての加盟国に対し、MERSコロナウイルスの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。

WHOは、この事例に関して入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

WHOは、現在の状況について事務局長に助言するため、国際保健規則に基づく緊急委員会を開催しました。緊急委員会は、WHOの全地域の国際的な専門家から構成されており、現時点の情報に基づいてリスクアセスメントを行った結果、満場一致で、国際的な公衆衛生上の脅威となる緊急事態(Public Health Emergency of International Concern: PHEIC )の要件は満たしていないと助言しました。

海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。

出典

WHO(GAR):Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV) – update
http://www.who.int/csr/don/2013_11_18/en/index.html