2014年01月10日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新1)
1月9日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、WHOはオマーンでMERS(マーズ)コロナウイルスに感染した確定患者が新たに1人発生したとの報告を受けました。患者は59歳の男性で、2013年12月20日に発熱、咳、息切れの症状が出現し、12月24日に北バーティナ(North Batinha)地方の病院に入院しました。12月28日に容態が悪化したため、集中治療室に移され、肺炎と診断されました。この患者は12月30日に死亡しました。2014年1月1日にMERSコロナウイルスに感染したと確定されました。この患者は日常的にラクダやその他の家畜と接触しており、ラクダの競走会にも参加していました。また、この患者はヘビースモーカー(大量喫煙者)でした。
全体として、2012年9月からこれまでに、WHOに報告されたMERSコロナウイルスに感染したと確定された患者は178人で、このうち75人が死亡しました。
現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる傾向がみられた場合には慎重に検討するよう推奨しています。
医療従事者は、引き続き、警戒するよう勧められます。最近、中東から帰国し、SARIを発症した患者には、現在のサーベイランスに関する推奨に示されている通り、MERSコロナウイルスの検査をすべきです。
これまでに報告された患者は初発症状として呼吸器疾患がみられました。下痢のほか、ショックを伴う腎不全や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む合併症もみられています。重症の免疫不全患者では、非典型的な所見や症状を呈する可能性もあります。
医療機関では、感染予防・制御を総合的に実施する重要性を再認識すべきです。MERSコロナウイルスの感染が疑われる患者や確定患者に医療を提供する施設では、他の患者や医療従事者、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。
WHOは、すべての加盟国に対し、MERSコロナウイルスの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。
MERSコロナウイルスに感染して重症となるリスクが高い人は、ウイルスが存在する可能性があると知られる農場や飼育小屋を訪れる際に、動物との接触を避けるべきです。一般市民は、農場を訪れる際に、動物を触る前と触った後の定期的な手洗いを行う、病気の動物との接触を避ける、食品衛生対策を実施する等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。
WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。
WHOは、現在の状況について事務局長に助言するため、国際保健規則に基づく緊急委員会を開催しました。緊急委員会は、WHOの全地域の国際的な専門家から構成されており、現時点の情報に基づいてリスクアセスメントを行った結果、満場一致で、国際的な公衆衛生上の脅威となる緊急事態(Public Health Emergency of International Concern: PHEIC )の要件は満たしていないと助言しました。
海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。
出典
WHO Global Alert and Response
Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV) – update
http://www.who.int/csr/don/2014_01_09/en/index.html