2014年03月19日更新 東アジアと東南アジアにおける麻しんの流行状況について (更新1)

麻しん(はしか)は、麻しんウイルスによって起こる病気です。空気感染、飛沫感染、接触感染によって、人から人にうつります。その感染力はウイルスの中で最も強く、麻しんを発症している人と同じ部屋にいるだけで(空気)感染することがあります。また、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、肺炎や脳炎などの重い合併症を起こすこともあります。

世界保健機関(WHO)西太平洋事務局(WPRO)から公表された情報によりますと、今年1月に麻しんの患者の報告数が多かった上位3か国は、中国、フィリピン、ベトナムでした。これらの国における確定患者数は、中国が1,717人、フィリピンが911人、ベトナムが474人でした。

フィリピン保健省から公表された情報によりますと、フィリピンでは、今年1月1日から2月15日までに麻しんが疑われた患者は15,683人報告されました。このうち検査で麻しんと確定診断されたのは1,925人で、疫学的に関連があった患者は1,509人で、合計3,434人(疑われた患者の21.8%)でした。確定患者の多くは、マニラ首都圏(60%)、カラバルソン(25%)、中部ルソン(8%)で報告されています。確定患者は1歳から58歳までの年齢層で、39%は1歳から4歳までの子どもでした。確定患者のうち、麻しんの予防接種歴のある患者は24%のみでした。確定患者のうち23人が死亡しました(致死率は0.67です)。

日本の患者発生動向調査では、2013年11月25日から今年3月10日の間に、フィリピンへの渡航歴がある麻しんの確定患者が42人報告されました。また、3月17日時点で、2013年12月から今年3月の間に、病原体微生物検出情報に麻しんウイルスの検出が報告された135例のうち、渡航歴があったのは50例でした。そのうち、フィリピンへの渡航歴があったのは41例(B3型39例、D9型1例、型不明1例)でした。

3月18日付けで米国疾病対策センターから公表された情報によりますと、日本以外でも、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、米国で、フィリピンから帰国した渡航者から麻しんの患者が報告されています。米国では、3月13日時点で、フィリピンから帰国して発症した麻しん患者が13人報告されており、そのほとんどが麻しんの予防接種を受けていない2歳未満の子どもでした。

麻しんは予防接種で予防することができる病気ですが、予防効果を確実にするためには、2回の接種が必要です。現在、1歳と小学校入学前1年間の子どもに対して、計2回の定期の予防接種が行われています。海外の麻しんの流行がみられる地域へ渡航する前には、母子健康手帳などで、予防接種歴を確認してください。麻しんにかかったことがない方で、麻しんの予防接種を受けたことがない方や1回しか接種していない方、または予防接種を受けたかどうかがわからない方は、渡航する前に、早めに医師に相談してください。

◆感染症別情報:麻しん

出典

WPROExpanded programme on immunization
Measles-Rubella Bulletin
http://www.wpro.who.int/immunization/documents/measles_rubella_bulletin/en/index.html

Republic of PhilippinesDepartment of HealthDISEASE SURVEILLANCE REPORT
MEASLES CASES IN THE PHILIPPINESMorbidity Week7 February 9 – 15, 2014
http://nec.doh.gov.ph/images/MEASLES2014/measlesmw7.pdf[PDF形式:63KB]

CDC TRAVELERS’HEALTHTravel Health Notices
Measles in the Philippines
http://wwwnc.cdc.gov/travel/notices/watch/measles-phillipines

参考

厚生労働省
麻しん(はしか)に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/index.html

国立感染症研究所
感染症情報麻疹
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html

IDWR 2014年第8号注目すべき感染症 2013年第48週~2014年第8週の麻しん発生状況
http://www.nih.go.jp/niid/ja/2014-02-19-09-27-24/621-disease-based/a/hepatitis/hepatitis-a/idsc/idwr-topic/4465-idwrc-1408.html

IDWR 2014年第4号注目すべき感染症麻しん 2013年第48週~2014年第4週の輸入例の増加
http://www.nih.go.jp/niid/ja/from-idsc/656-infectious-diseases/disease-based/ma/measles/idsc/idwr-topic/4359-idwrc-1404.html