2014年10月09日更新 エボラ対応に関するロードマップ (更新9)

10月8日付けの世界保健機関(WHO)の情報によりますと、西アフリカにおけるエボラ出血熱の発生状況は以下のとおりです。

2014年10月5日までに報告されたエボラウイルス病が流行する国西アフリカでの疑い例から確定例までの患者数は診断例8,033症例と死亡例3,879症例となっています。感染の影響を受けている国はギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、アメリカ合衆国です。スペインでも確定診断例が報告されましたが、疫学週数では41週目にあたるためにこの症例は次回の更新時に報告される予定です。

前週は、最近の傾向が依然として継続していました。ギニア、リベリア、シエラレオネではエボラウイルス病の流行拡大と持続する感染で悪化した状況が続いております。リベリアのデータ収集に纏わる問題も続いています。リベリアの過去3週間に亘る新規症例の報告数の低下は実態を反映しているとは言えません。むしろ、正確な疫学データを記録するはずの担当者の処理能力を越えたレベルで状況が悪化していると言えます。地域報告や最初に報告を受けた者から、いくつもの主要な地域からエボラウイルス病の症例数が過小に報告され続けていることは明らかであり、公式の推定数に集計されていない検査データはリベリアでの新規の患者数が増加を示していることを示しています。リベリアのロファ(Lofa)地方、シエラレオネのカイラフン(Kailahun)やケネマ(Kenema)地方での発生率は減少傾向を示していますが、西アフリカでのエボラウイルス病の流行が制御されているという証拠はありません。

概観

これはエボラ対応ロードマップ(リンク)に関する定期状況報告です。ロードマップの体系では、報告は3つのカテゴリーに分類されます。3つのカテゴリーとは、広範囲に及ぶ深刻な伝播が生じている国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、初期の症例が生じた国、あるいは局所的な伝播が生じている国(ナイジェリア、セネガル、アメリカ合衆国)、活発な伝播力をもつ地域に隣接する国(ベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、ギニアビサウ、マリ、セネガル)です。この流行からは独立してエボラの流行が発生しているコンゴ民主共和国における状況の概要は補足に記載しています。

1. 広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国

ギニア、リベリア、シエラレオネでの流行の拡大傾向が続いています(表1)。

ギニア

ギニアでは、先週報告されたエボラウイルス病の新規確定症例数がおよそ100例に上り、感染が持続しています。この数週間のギニアでの流行は3つの地域[首都コナクリ、マセンタ、Gueckedou(ゲケドゥ)]での流行に由来します。これらは流行の発端となった地域です。ゲケドゥで報告された新規の確定症例および可能性の高い症例は、それぞれ4例と6例で過去4週間にわたり少数で安定していますが、同じ期間にマセンタから報告された新規症例数は15例から71例と変化しています。コナクリでは疫学40週での確定症例と可能性の高い症例が計15例報告されており、流行は危険な状態で続いています。N'Zerekore(ンゼレコレ)地方では疫学40週に20例の新規症例が報告され著しい増加を示しました。ギニア東部、コートジボワールとの国境近くにあるローラ地区では初めてエボラウイルス病の発生が報告されました(確定例3例;図4)。隣接地区であるベイラでは、前週に最初の確定症例が報告されています。

表1 ギニア、リベリア、シエラレオネにおける可能性の高い症例、確定症例、疑い症例の総数

図.ギニア、リベリア、シエラレオネにおける可能性の高い症例、確定症例、疑い症例の総数および死亡者数

注釈:リベリアでは診断確定例よりも多くの死亡例の方報告されているために77例多くなっています★。さらに、シエラレオネでも可能性の高い症例での死亡が86例多くなっています★★。シエラレオネから今週報告された追加の死亡者数275例は病院の記録からの後向き調査の結果によるものです。データは、ギニア、シエラレオネの各保健省から10月5日付けで、リベリアの保健省から10月4日付けで報告された公式情報に基づいています。これらの数値は継続されている再分類、遡っての調査、利用できる検査結果の検討によって変わることがあります。

リベリア

リベリアでは引き続きデータ収集に影響を与える深刻な問題が起きています。この国の担当者および研究施設スタッフから得られた証拠からは、新規の症例の過小報告が広がっていることは疑う余地もありません。リベリアの状態、特に首都モンロビアでは毎週々々悪化の一途を辿っています。過去3週間、毎週モンロビアからは新しい可能性が高い症例または疑いのある症例が凡そ200例も報告されているのに、毎週の確定例は数例にとどまっています。これら疑い症例のかなりの割合がほとんど疑いもなくエボラウイルス病の実態数であり、過去3週間の確定症例報告数の低下は臨床現場からの調査データと検査結果との照合が遅れていることを反映しています。非常に厳しい環境の中で、データ取得の問題に対する努力が緊急性をもって続けられています。やがて数値が上方修正される可能性があります。マルギビ地区は新規の確定症例および可能性の高い症例の高い数値(先週は31例)での報告が続いています。一方、グランドケープマウント地区では3週間ぶりに新たな症例が報告されました。ギニアのゲケドゥとの国境近くにあるロファでは前週の確定症例と可能性の高い症例の合計数が12例で先々週の39例と比較して減り続けています。これは実際の減少を示しているようです。

シエラレオネ

全国的に、シエラレオネの状況は過去7週間に毎週報告された新規の症例数の増加を示し、状況は悪化し続けています。首都フリータウン、さらにはBombali(ボンバリ)の隣接地区、ポートロコおよびモヤンバでは、過去7週から8週にわたり症例の急激な増加が報告されてきました。ボーとTonkolili(トンコリリ)の各地区でも同期間に新たに確定および可能性の高い症例の増加が報告されています。対照的に、過去4週の間、Kailahun(カイラフン)からの新たな症例報告(疫学第40週で3例)、Kenema(ケネマ)からの報告(疫学第40週で5例)は新規症例数が少なくなっています。これらの地域では、以前は高いレベルでの流行が報告されていました。担当者からの報告では、これが確かめられる前にはさらなる調査が必要とされるけれども、この発生率の低下は正真正銘の低下傾向を示していることを示唆しています。

医療従事者の感染について

多数のエボラウイルス疾患への感染が医療従事者で続いており、大きな懸念材料となっています。10月5日現在、401名の医療従事者がエボラウイルス病に感染し、232名が死亡しています(表2)。

医療従事者の感染

※ナイジェリアは広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国としては分類されていません。データは、ギニア、シエラレオネの各保健省から10月5日付けで、リベリアの保健省から10月4日付けで報告された公式情報に基づいています。これらの数値は継続されている再分類、遡っての調査、利用できる検査結果の検討によって変わることがあります。

地理的分布

図4は広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国における症例の位置を示しています。以前に症例が確認された8地区(ギニアの7地区、シエラレオネの1地区)では10月5日以前の過去21日間に症例は報告されていません。ギニアでは、ロファ地域で新たに感染確定例が3例報告されました。

図4、広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国における症例の位置

※データは、ギニア、シエラレオネの各保健省から10月5日付けで、リベリアの保健省から10月4日付けで報告された公式情報に基づいています。この地図上で使用される境界と示されている名称および呼称は、いかなる国、領土、都市や地域の法的な関係についてWHOが見解を発表しているものではありません。また、その国々あるいはその国境や境界の範囲に関して、地図上の点線と破線はまだ完全な合意にいたっていない可能性があるためにおおよその境界線を表しています。

2.初期の症例が生じた国、あるいは局所的な伝播が生じている国

3か国(ナイジェリア、セネガル、アメリカ合衆国)では広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国から入国してきた症例が報告されています。

ナイジェリアでは、EVDによる20例の感染例と8例の死亡例がありました。セネガルでは1例の流入がありました。この症例は死には至っておらず、疑い以上の症例もでていません。

2014年9月30日、WHOとアメリカ地域事務局はアメリカ合衆国で初めてエボラ出血熱が発生したことを発表しました。患者は、最近、西アフリカへの渡航歴のある成人で、合衆国に到着後、およそ4日を経過した9月24日にエボラ出血熱に一致する症状を発症しました。患者は9月26日にダラスのテキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院を受診し、28日に隔離病棟に入院となりました。検体はアトランタにあるCDCに検査のために、また、テキサス州立の検査室にも同様の目的で送付されました。結果は、いずれも、エボラ陽性でした。現在、48人の接触者が経過観察を受けています。

表4 ナイジェリア、セネガル、米国におけるEVD症例(2014年10月5日時点)

表4.ナイジェリア、セネガル、米国におけるEVD症例(2014年10月5日時点)

データは保健省により報告された公式情報に基づいています。これらの数値は継続されている再分類、遡っての調査、利用できる検査結果の検討によって変わることがあります。

3.エボラへの暴露を迅速に検出し対応するための各国の準備状況

2014年の西アフリカでのエボラウイルス疾患の発生に関して、IHR 2005に基づいてWHOの統括責任者による2回目の緊急委員会が招集されました。この会議は、インターネットを使って、2014年9月16日から2014年9月21日まで緊急委員会委員とアドバイザーとが参加して行われました。委員会は、すべて国が想定される状況に対する個々人の十分な訓練を通して、準備の補強、計画の確認、そして現在の準備状況を点検しなければならないと、強調しています。

委員会は、エボラウイルス病の流行の影響はないものの流行国に隣接する国々では早急に原因不明の発熱や熱性疾患による死亡に対して調査体制の確立、エボラウイルス病に対する質の高い診断検査体制の確立、健康な医療従事者が適切なIPC(Infection Prevention& Control)手順を知り、訓練を受けることの確認、エボラウイルス病症例の治療および接触者の監視能力をもつ対応チームの早急な確立、を強調しています。流行国に隣接する国々への準備体制の評価が進められています。

委員会は全ての国がエボラ症例の発見、調査、治療の準備が行われる必要性にも言及している。これはエボラウイルス病に対する質の高い検査施設への確実な交通手段と、おおよそのところでは、国際空港に到着する既知のエボラ感染地域または原因不明の発熱性疾患が流行する地域を通る主な都市から渡航してくる旅行者を管理する能力をも含んでいます。

補足

コンゴ民主共和国でのエボラ流行
2014年10月5日現在、コンゴ民主共和国(DRC)で70例のエボラウイルス疾患(確定診断例30例、可能性の高い症例26例、疑い症例14例)が報告されています。医療従事者8例を含む43例が死亡例として報告されました。

816名の接触者が21日間の観察期間を完了しました。現在も観察中の305名の接触者全員(100%)が10月5日の段階で健康であることを確認されています。この流行は、ギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネでの流行との関連はありません。

参考情報1

診断の定義については、エボラ対応に関するロードマップ(更新6 添付2)を参照してください。

出典

WHO, Situation reports:Ebola response roadmap,
Situation report,8 October 2014
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/136020/1/roadmapsitrep_8Oct2014_eng.pdf?ua=1[PDF形式:1.4MB]