2014年10月20日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について(更新41)

10月16日付けでWHOから公表された情報によりますと、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)担当者は、WHOに中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)に感染した検査の確定症例を追加報告しました。

流行更新情報
2014年9月29日~10月11日、1例の死亡例を含む7例のMERS-CoV感染例がWHOに報告されました。詳細は以下のとおりです。

  • ターイフ(Taif)市の69歳の男性、2014年9月17日に症状を発現しました。この患者には合併症があります。また、動物との接触があったかどうか、生のラクダ由来の食品を摂取していたかについて現在調査中です。
  • ジュバイル(Jubail)市の65歳の男性、2014年9月24日に症状を発現しました。この患者には合併症があります。また、ラクダとの頻繁な接触があり、未殺菌のラクダ乳を頻繁に摂取していました。
  • アルヘナキア(Alhenakiah)市の70歳の男性、2014年9月24日に症状を発現しました。この患者には合併症があります。また、ラクダとの頻繁な接触があり、未殺菌のラクダ乳を頻繁に摂取していました。
  • ゲイヤ(Geiya)市の60歳の男性、2014年10月1日に症状を発現しました。この患者には合併症があります。また、ラクダとの頻繁な接触があり、未殺菌のラクダ乳を頻繁に摂取していました。
  • ハラド(Haradh)市の51歳の男性、2014年9月30日に症状を発現しました。この症例は10月5日に死亡しました。この患者には合併症があります。また、ラクダとの頻繁な接触があり、未殺菌のラクダ乳を頻繁に摂取していました。
  • ターイフ(Taif)市の77歳の男性、2014年10月3日に症状を発現しました。この患者には合併症があります。入院中に感染しました。
  • ナジュラーン(Najran)市のサウジアラビア国籍でない50歳の男性、2014年10月3日に症状を発現しました。この患者は動物との接触はなかったと供述しましたが、非常多くのラクダ農場がある地域に居住しています。

これらの症例については、現在、世帯内の接触者への追跡が行われています。

加えて、以前にサウジアラビアから報告されていたMERS-CoV感染例の4例の死亡についても報告されました。

サウジアラビアで遡って行われた検討により確定した症例
保健省に所属していない病院での検査記録に対して過去に遡って行われた調査により、サウジアラビアの国立IHR担当当局は11例の死亡例を含む19例の追加MERS-CoV感染例について報告しました。追加症例の内訳は、2013年8月に発症した1例、2014年3月に発症した2例、2014年4月に発症した10例、2014年5月に発症した6例です。

サウジアラビアにより報告された追加症例のうち、79%(15人)がサウジアラビア国籍者です。報告症例の16例がジッダ(Jeddah)市に、2例がカルジ(Kharj)市に、1例がダーラン(Dhahran)市に居住していました。年齢の中央値は56歳(年齢分布27~89歳)で、68%(19例中13例)が男性で、報告例の11%(19例中2例)が医療従事者でした。

これら19症例が遡及調査で同定されたことによって、流行パターンや流行動態がこれまでのものから変更されることはなく、全体的なリスク評価についての変更もありません。

加えて、サウジアラビアはWHOに2014年4月11日から6月9日の間に報告された症例の中に1例の偽陽性症例が入っていたことを報告しました。併せて、サウジアラビアは1症例について報告が2回されており、重複があったことを報告しました。

全体として、少なくとも317例の関連死亡例を含む877例のMERS-CoV検査確定感染例がWHOに報告されました。偽陽性例と上述の重複症例は総数から除かれています。

WHOのアドバイス
ハッジ(Hajj)への毎年の巡礼が現在行われていることに伴い、WHOは2014年6月に発出した“MERS-CoV感染症に対する巡礼者へのアドバイス”を確認することを加盟国に奨励しました。

MERS-CoV感染症に対する巡礼者へのアドバイス

現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる経過を辿る症例がみられた場合には慎重に検討するよう推奨しています。

医療施設での感染予防対策管理は、MERS-CoVが拡散する可能性を防止するために必須です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状に特異的なものはなく、患者を常に早期に発見できるわけではありません。そのため、医療従事者は診断に関係なく、すべての患者に対し常に一貫した標準予防策を実施することが重要です。急性呼吸器感染症の症状のある患者に医療を行う際には、飛沫予防対策を追加すべきです。加えて、MERS-CoVに感染した可能性がある患者や確定した患者に医療を行う際には、接触予防策および眼の防護対策を行うべきです。エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防策を行う必要があります。

MERS-CoVについてさらに詳細がわかるまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫機能不全のある人々はMERS-CoV感染で重症化するリスクが高いと見なされます。そのため、このような人々がウイルスの存在する可能性が高い農場や市場、飼育小屋を訪れる際には、動物、特にラクダとの濃厚な接触を避けるべきです。

動物を触る前と触った後には、定期的な手洗いを行う、病気の動物との接触を避ける等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。

また、食品衛生対策を遵守する必要があります。未殺菌のラクダ乳や尿、適切に調理されていない肉を摂取するのは避けるべきです。

WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび現時点での渡航や貿易の制限を行うことは推奨していません。

出典

WHO Global Alert and Response(GAR)
Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV) –Saudi Arabia ,16 October 2014
http://www.who.int/csr/don/16-october-2014-mers/en/