2014年11月12日更新 太平洋地域における麻しんの流行状況について (更新3)

麻しん(はしか)は、麻しんウイルスによって起こる病気です。空気感染、飛沫感染、接触感染によって、人から人にうつります。その感染力はウイルスの中で最も強く、麻しんを発症している人と同じ部屋にいるだけで(空気)感染することがあります。また、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、肺炎や脳炎などの重い合併症を起こすこともあります。

世界保健機関(WHO)西太平洋事務局(WPRO)から発行された流行状況についての最新情報によりますと、2014年においてフィリピン、ベトナムなどの東南アジア地域およびオーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニアなどの南半球太平洋地域で高頻度で麻しん患者が報告されています。

2014年1月から9月までの累積確定患者数では中国が45,234人、フィリピンが17,893人、ベトナムが5,281人と多く、日本は415人でした。人口100万人あたりの患者発生率(年間での予想)が高いのは、フィリピン239.1人、パプアニューギニアで119.9人、ニュージーランドで75.8人でした。日本は4.4人でした。

図.麻しんの流行状況

麻しんは非常に感染性の高いウイルス性疾患です。世界では、安全で効果的なワクチンがあるにもかかわらず、青少年の主要な死亡原因となっています。WHOは2020年までに麻しんと風疹を撲滅するという目標を立て、世界規模でのワクチン活動計画を展開しています。

麻しんは10-12日の潜伏期間の後、高熱、鼻汁、口腔内のアフタ(コプリック斑)が現れます。症状が治まってきた頃に、顔から始まり、頸、胸から下方へと広がる発疹が出てきます。もっとも重篤な合併症は、失明、脳炎、急性呼吸器感染です。

2000年に562,000人の麻しんによる死亡者は、2012年には122,000人(78%減)まで減りましたが、それでも、アジアやアフリカの一部を中心に発展途上国では日常生活の中にある病気です。毎年2,000万以上の人が感染しています。

1960年代以降、ワクチンが使用され、それは安全、安価でかつ効果的なものとなっています。WHOは感染を受けやすい子供そして接種が禁忌とされていない大人にはワクチンを接種することを勧めています。全ての国で、全ての子供たちに種類を問わずワクチン2回接種が行われることが当然のこととなるべきです。

麻しんは予防接種で予防することができる病気ですが、予防効果を確実にするためには、2回の接種が必要です。現在、1歳と小学校入学前1年間の子どもに対して、計2回の定期の予防接種が行われています。海外の麻しんの流行がみられる地域へ渡航する前には、母子健康手帳などで、予防接種歴を確認してください。麻しんに罹かかったことがない方で、麻しんの予防接種を受けたことがない方や1回しか接種していない方、または予防接種を受けたかどうかがわからない方は、渡航する前に、早めに医師に相談してください。

◆感染症別情報:麻しん

出典

WPROExpanded programme on immunization
Measles-Rubella Bulletin, volume 8 Issue 10 June 2014
http://www.wpro.who.int/immunization/documents/measles_rubella_bulletin/en/

参考

WHO, Immunization, Vaccines and Biologicals: Measles
http://www.who.int/immunization/diseases/measles/en/

FORTH最新ニュース
麻しんについて(ファクトシート)(2月13日)
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/02131151.html

厚生労働省
麻しん(はしか)に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/index.html

国立感染症研究所
感染症情報麻疹
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html