2014年11月25日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新46)

2014年11月21日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)担当者から10月12日から16日の間に中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染症5例の発生が追加報告されました。このうち2例は死亡しています。

症例の詳細情報:

  1. 1.女性看護師、42歳。サウジアラビア国籍を持たないTaif(ターイフ)市の住民です。患者は10月13日に発症し、10月14日に入院しました。この患者は検査で確定診断された患者の看護を担当したことがありました。患者には基礎疾患がありました。ラクダとの接触やラクダの生製品を摂取したことはなく、患者は発症までの14日間に旅行もしていませんでした。現在、彼女は隔離されていますが、容態は安定しています。
  2. 2.男性、60歳。ターイフ市民です。患者は10月14日に発症し、その日のうちに入院しました。患者には基礎疾患がありました。この患者は検査で確定診断された患者が透析を受けた同じ部屋で、10月8日に透析を受けていました。患者はラクダとの接触やラクダの生製品を摂取したことはなく、患者は発症までの14日間に旅行もしていませんでした。患者は10月15日に死亡しました。
  3. 3.男性、82歳。Hawtah Bani Tamim市民です。患者は10月3日に発症しました、彼は5日にAlkharj(アルカルジ)市内の病院を受診し、同市に6日間滞在しました。その後、Riyadh(リヤド)へ車で移動し、10月11日にリヤドで入院しました。患者には基礎疾患がありました。動物との接触歴はありませんが、居住地は多数のラクダ農場のある地域でした。加えて、患者は発症までの14日間にラクダの生乳を飲んだことがありました。患者は発症までの14日間に旅行はしていません。現在、患者の容態は安定しています。
  4. 4.男性、44歳。リヤド市民です。患者は10月7日に発症し、11日にリヤド市内の病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日間にラクダとの接触やラクダの生製品を摂取したことはありませんでしたが、頻繁に動物と接触したことがあり、14日間の中でDammam(ダンマーム)市に旅行していました。現在、患者はICUに収容されています。
  5. 5.男性、70歳。Al Huwaya町の住民です。患者は10月8日に発症し、10日にターイフ市内の病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。患者は動物と接触したことがありました。ただし、発症までの14日間にラクダとの接触やラクダの生製品を摂取したことはなく、旅行もしていませんでした。患者の容態は重篤となり、ICUに収容されましたが、10月28日に死亡しました。

これらの症例における家族内および医療従事者に対して、接触者の追跡が行われています。

上述の2例の死亡例を含む5症例は、前回のMERS-CoVに関する疾患流行ニュース(11月7日発)でも報告されていました。このため、合計症例数および死亡数に変更はありません。WHOは、世界で少なくとも331例のMERS-CoV関連死を含む909例のMERS-CoV検査確定症例の報告を受けています。

WHOからのアドバイス
WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を押さえるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準予防策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防策を行う必要があります。

今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考えるべきです。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという常識的な衛生手順をしっかりと守るべきです。

食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO, Global Alert and Response(GAR)
Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV)-Saudi Arabia, 21November2014
http://www.who.int/csr/don/21-november-2014-mers/en/