2014年11月25日更新 マダガスカルにおけるペストについて

2014年11月21日に、WHOは2014年11月4日にマダガスカルの保健省からペストの流行の報告を受けたことを公表しました。

概要
最初の症例はTsiroanomandidy(ツィルアヌマンディディ)地区にあるSoamahatamana村の男性で、8月31日に確認されました。患者は9月3日に死亡しました。

11月16日までに合計119症例のペスト患者が確認され、そのうち40人が死亡しています。 肺炎の症状を示したのは、報告された症例のうち2%のみです。

症例は7つの地域の16地区から報告されています。マダガスカルの首都で最大都市であるアンタナナリボでも、2症例の感染が報告され、そのうち1名が死亡していました。現在、(この国では)都市の人口密度が高い上に医療制度が脆弱なことから、ペストが急速に拡大する危険があります。この国では(ペストを媒介するノミが)デルタメトリン(ノミを制御するために使用される殺虫剤)に対する耐性のレベルが高いことが既に確認されており、このことが状況をさらに複雑化させています。

公衆衛生の対策
国の対策担当部隊が、流行を制御するために積極的に活動しています。WHO、マダガスカルのパスツール研究所、アンタナナリボ市、赤十字などの支援者からの協力を得て、マダガスカル政府は流行を制御するために効果的な対策を立て、実行に移しています。アフリカ開発銀行による20万アメリカドルの経済的な支援によって、対策プロジェクトが展開されています。WHOは危機に対する専門技術の支援および人材確保に対する支援を行っています。ペストの感染制御と予防の対策は、感染が流行する地域で徹底的に実施されています。個人用防護具、殺虫剤、散布器具および抗生剤が、流行する地域で利用できるようになりました。

背景
ペストは主に野生の齧歯類に感染するペスト菌(Yersinia pestis)が原因となって起こります。ノミよって齧歯類に次々と広がります。ペスト菌をもったノミに人が咬まれると、通常、鼠径部の腫れ(リンパ節の腫脹)を特徴とする腺ペストとなります。細菌が肺に到達した場合、患者は肺炎(肺ペスト)を発症し、細菌を含む飛沫が咳によって飛ばされて、人から人へ直接感染します。腺ペストは、早期に診断されれば抗生物質での治療で効果があります。一方、肺ペストは最も致死率の高い疾患の一つです。患者は感染後24時間で死に至る可能性があります。死亡率は治療を開始する早さにかかってきますが、分かっていても非常に高いです。

WHOの推奨
WHOは利用できる現在の情報に基づいて、いかなる移動や貿易の制限も推奨してはいません。アンタナナリボなどの都市部では、媒介動物を流行の制御と予防の活動を実行に移すために流行のリスク指標の調査が強く推奨されています。

出典

WHO, Global Alert and Response(GAR)
Plague-Madagascar, 21November 2014
http://www.who.int/csr/don/21-november-2014-plague/en/