2015年01月07日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新2)

2015年1月5日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、ヨルダンの国立国際保健規約(IHR)は、2014年12月25日に新たに中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染症1例の発生を報告しました。

症例の詳細情報

70歳男性。サウジアラビア国籍を持たないQuriat(クライヤト)市の住民です。12月20日に発症し、21日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。患者は医師の指示に従わず自己退院し、22日に個人病院があるヨルダンに向かいました。患者は、26日に入院していたクライヤト市の病院に戻され、入院しています。ラクダの生乳の摂取歴もあります。発症前14日以内に他のリスクファクターに暴露されたことはありません。現在は重篤な容態で人工呼吸器を着けています。

これらの症例に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

また、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)はWHOに以前報告したMERS-CoV患者3名のうち1名の死亡を追加報告しました。

世界的には、WHOは、945名の検査確定したMERS-CoV感染症例と、少なくとも348名の関連死の報告を受けています。

WHOからのアドバイス

WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO.Global Alert and Response(GAR):
Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV)- Jordan. 5 January 2015
http://www.who.int/csr/don/05-january-2015-mers-jordan/en/