2015年01月19日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新3)

2015年1月15日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)は、2015年1月3日から5日の間に新たに中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染症3例の発生を報告しました。また、2015年1月16日の情報によりますと、オマーンの国立国際保健規約(IHR)も、2015年1月7日から10日の間に新たに2例の発生を報告しました。このうち、1例は死亡しています。

症例の詳細情報

サウジアラビアのIHRから

  1. 1.69歳男性。Najiran(ナジュラーン)市の住民で、2014年12月23日に発症し、翌年1月2日に入院しました。患者には基礎疾患があります。患者の隣人はラクダを飼育していました。しかし、彼自身はラクダに触れたことも、その生製品を食べたこともありませんでした。発症前14日のうちに、彼はイエメンに旅行していました。それ以外には、14日以内にリスクファクターとの接触機会はありません。現在は安定した状態ですが、隔離病棟にとどまっています。
  2. 2.76歳男性。Taif(ターイフ)の市民で、2014年12月26日に発症し、31日に入院しました。彼には基礎疾患があり、しばしばラクダとも接触し、生製品も食べていました。それ以外には、14日以内にリスクファクターとの接触機会はありません。現在は、重篤な容態でICUに収容されています。
  3. 3.45歳男性。Damman(ダンマン)市の住民で、2014年12月31日に発症し、翌年1月1日に入院しました。彼に基礎疾患はありませんでした。また、友人のラクダ牧場をしばしば訪れていましたが、ラクダとの直接の接触はありませんでした。それ以外にも、14日以内にリスクファクターとの接触機会はありません。安定した状態ですが、隔離病棟にとどまっています。

また、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)はWHOに以前報告したMERS-CoV患者1名の死亡を追加報告しました。

オマーンのIHRから

  1. 1.32歳男性。Dakhelyia(ダーヒリーヤ)県の住民で、2014年12月27日に発症し、翌年1月5日に入院しました。患者には基礎疾患はありました。また、ラクダ、ヤギ、ヒツジの牧場を所有しており、頻繁に動物と接触していました。それ以外には、発症までの14日以内にリスクファクターと接触機会はありません。現在はICUに収容されましたが、1月7日に亡くなりました。
  2. 2.31歳女性。ダーヒリーヤ県の住民で、2015年1月8日に発症し、9日に入院しました。患者には基礎疾患はありません。彼女は、上記のMERS患者の家族内接触者です。家族はラクダを所有していましたが、この患者にはラクダとの接触はありませんでした。現在は安定した状態ですが、隔離病棟にとどまっています。

両国ともに、これらの症例に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

世界的には、WHOは、950名の検査確定したMERS-CoV感染症例と、少なくとも350名の関連死の報告を受けています。

WHOからのアドバイス

WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典