2015年03月09日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新12)

2015年3月6日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国際保健規約(IHR)担当者は、2015年2月23日から25日の間に、新たな中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染患者10人の発生を報告しました。

症例の詳細情報

  1. 1. 56歳男性。Afif(アフィーフ)市の住民で、2月2日から別の疾患で入院中、2月22日に発症しました。患者は2月17日に、MERS-CoV感染が検査確認された患者(2月23日、No.36として報告)と同じICUに収容されていました。しかし、患者は治療を別の医療担当者から受けていました。患者は頻回に親戚や友人による見舞いを受けていました。現在、患者はICUで重篤な容態です。
  2. 2. 84歳男性。Al-Oyuon市の住民で、2月21日に発症し、2月22日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日以内に既知のリスクファクターとの接触歴があるかについては調査中です。現在、患者はICUで重篤な容態です。
  3. 3. 24歳女性。リヤド市の住民で、1月31日から別の疾患で入院中、2月19日に発症しました。患者はMERS-CoV感染が検査確認された患者(2月16日、No.4として報告)と同じ病院に入院していました。しかし、患者は治療を別の医療担当者から受けており、疫学的にもその患者との接点はありませんでした。患者は頻回に親戚や友人による見舞いを受けていました。現在、患者はICUで重篤な容態です。
  4. 4. 80歳男性。リヤド市の住民で、2014年8月14日から別の疾患で入院中、2月21日に発症しました。患者はMERS-CoV感染が検査確認された患者(2月23日、No.4として報告)と同じ病院に入院していました。しかし、その患者との直接の接触機会はありませんでした。患者は頻回に親戚や友人による見舞いを受けていました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者はICUで重篤な容態です。
  5. 5. 83歳男性。Alrass(アルラス)市の住民で、2月16日に発症し、2月17日に入院しました。患者は、同日、医学的アドバイスを無視して自己退院しました。(その後)患者は2月21日に別の医学的アドバイスを求めてリヤドに移動し、同日に病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日以内に既知のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者はICUで重篤な容態です。
  6. 6. 75歳男性。リヤド市の住民で、2月12日に発症し、2月22日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日以内に、既知のリスクファクターとの接触歴があるかについては調査中です。現在、患者はICUで重篤な容態です。
  7. 7. 45歳男性。サウジアラビア国籍を持たない(非サウジ国籍)ナジュラーン市の住民で、2月13日に発症し、2月20日に入院しました。患者に基礎疾患はありません。患者はMERS-CoV感染が検査確認された患者(2月23日、No.17として報告)との接触機会がありました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は感染病棟の陰圧室に収容され、安定した状態です。
  8. 8. 65歳女性。非サウジ国籍のジッダ市の住民で、2月17日に発症し、2月22日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日以内に既知のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者はICUで重篤な容態です。
  9. 9. 50歳男性。非サウジ国籍のリヤド市の医療従事者で、2月13日に発症し、2月20日に入院しました。患者には喫煙歴はありましたが、基礎疾患はありませんでした。患者はMERS-CoV感染が検査確認された患者(2月23日、No.10として報告)の治療をしていました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は感染病棟の陰圧室に収容され、安定した状態です。
  10. 10. 62歳女性。非サウジ国籍のリヤド市の医療従事者で、2月16日に発症し、2月18日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。患者はMERS-CoV感染が検査確認された患者(2月23日、No.10として報告)の治療をしていました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は感染病棟の陰圧室に収容され、安定した状態です。

サウジアラビアの国際保健規約(IHR)担当者は、以前に報告されたMERS-CoV患者2人の死亡をWHOに報告しました。患者は2月23日に報告されたNo.19、37です。

これらの症例に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

世界的には、WHOは、1,040人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも383人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス

WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO.Global Alert and Response(GAR):
Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV)- Saudi Arabia. 6 March 2015
http://www.who.int/csr/don/6-march-2015-mers-saudi-arabia/en/