2015年06月02日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新26)

2015年5月31日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、韓国の国立国際保健規約(IHR)担当者から、5月30日に新たな中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者1人が報告されました。また、5月22日にカタールの国立国際保健規約(IHR)担当者から、新たなMERS-CoV感染者1人が報告されました。

症例の詳細情報

韓国

12番目の患者は、49歳の男性。5月30日に報告された11番目の患者の夫です。彼は妻が入院中の5月15日から17日に彼女の看病をしていました。この間に、最初の患者と同じ病棟にいました。彼は5月21日に発症し、入院しました。症状が続いたため、その後、隔離の整った国立の施設に搬送されました。5月29日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。この患者に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

カタール

73歳男性。ドーハ市の住民で、5月10日に発症し、症状を治療するために病院を受診し、その日は帰宅しました。5月12日に、患者は症状が悪化したために、同じ病院に入院しました。5月21日のMERS-CoVに対する検査で陽性と判明しました。患者には基礎疾患がありました。患者はラクダとの直接の接触歴はありませんが、家族がラクダの小屋を所有しており、家族にはラクダやヒツジとの接触機会があり、ラクダの生乳を飲んでいました。その他には発症までの14日間に既知のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者はICUで重篤な容態です。この患者に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

世界的には、WHOは、1,150人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも427人*の関連する死亡報告を受けています。

*誤植
WHOには、MERS-CoV関連の死亡者は、最初に報告された427人ではなく、少なくとも431人が報告されています。

WHOからのアドバイス

WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。

他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典