2015年06月08日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新31)

2015年6月6日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、韓国の国立国際保健規約(IHR)担当者は6月5日に死亡者1人を含む中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者5人をWHOに報告しました。また、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)担当者は、6月1日から4日に、死亡者1人を含む新たな患者5人の発生を報告しました。

症例の詳細情報

韓国

  1. 1.49歳男性。5月23日に発症しました。彼は、5月14日から入院していました。彼は、6月4日に報告されたMERS-CoV確定患者(No.1)と同室でした。5月31日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。
  2. 2.62歳男性。6月2日に発症し、同日、地方の医療施設の救急救命室を受診しました。彼は5月20日から28日にかけて入院していました。この間に、後にMERS-CoV感染の診断確定が報告された4人の患者と同じ階に入院していました。5月29日に、彼は別の疾患のため地方の医療施設を受診しました。彼は、6月2日に陰圧室に隔離されました。6月3日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。
  3. 3.24歳男性。5月22日に発症しました。患者は、5月22日から28日にかけて、以前にMERS-CoV確定患者2人が入院していた同じ部屋に入院しました。6月4日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。
  4. 4.70歳女性。5月31日に発症しました。彼女の夫の治療を担当していた医師は、6月3日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼女は6月4日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。
  5. 5.45歳男性医師。6月4日に発症しました。彼は、5月14日から27日にかけて別の疾患で入院していました。彼は、MERS-CoVの感染症状を示していませんでしたが、病院でMERS-CoV患者との濃厚接触があったために自宅隔離とされていました。彼は、6月2日に隔離するために別の病院へ搬送されました。6月3日に検査結果が陽性と判明しました。

これらの患者に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

韓国の国立国際保健規約(IHR)担当者は以前に報告されたMERS-CoV患者1人の死亡をWHOに報告しました。5月30日に報告された3番目の患者です。

これまでに、死亡者4人を含む合計41人のMERS-CoV患者が韓国の国立国際保健規約(IHR)担当者から報告されました。41人の中の1人は中国でも確認され、中国の国立国際保健規約(IHR)担当者からも報告された患者です。

サウジアラビア

  1. 1.64歳男性。フフーフ市の住民で、5月20日に発症し、6月1日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。6月3日に MERS-CoVに対する検査で陽性であることが判明しました。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。
  2. 2.50歳男性。サウジアラビア国籍を持たないフフーフ市の医療専門職で、5月22日に発症しました。患者に基礎疾患はありません。6月1日に MERS-CoVに対する検査で陽性であることが判明しました。彼は、5月14日から19日にかけて、5月25日に報告されたMERS-CoV確定患者(No.2)の治療にあたっていました。この他に発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触はありません。現在、彼は無症状のため自宅隔離となっています。
  3. 3.45歳男性。フフーフ市の住民で、5月26日に発症し、29日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。患者は、5月31日に MERS-CoVに対する検査で陽性であることが判明しました。現在、患者は重篤な容態でICUに収容されています。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。
  4. 4.50歳男性。フフーフ市の医療専門職で、5月19日に発症し、25日に入院しました。患者に基礎疾患はありません。5月29日に MERS-CoVに対する検査で陽性であることが判明しました。患者は発症までの14日の間にヒツジと家禽との接触機会がありました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。
  5. 5.54歳男性。フフーフ市の住民で、5月27日に発症しました。患者は、別の疾患のため5月16日に入院し、19日に別の病院に紹介され転院しました。患者には基礎疾患がありました。5月30日に MERS-CoVに対する検査で陽性であることが判明しました。患者は6月2日に死亡しました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。

これらの症例に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)担当者は以前に報告されたMERS-CoV患者3人の死亡をWHOに報告しました。6月4日に報告されたNo.1およびNo.7と5月17日に報告されたNo.5の患者です。

2012年9月以降、WHOには、世界で1,195人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも448人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス

WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典