2015年06月22日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新40)

2015年6月20日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、タイの国立国際保健規約(IHR)担当者は、6月18日に、この国で初めての中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)患者1人が確認されたことを報告しました。

症例の詳細情報

75歳男性。オマーン人で治療のためにオマーンからタイに来ました。患者は6月10日に発症し、オマーンの病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。患者は症状が改善しないため、治療のためにタイに行くことにしました。患者は家族3人とともに飛行機に乗り、6月15日にバンコクに到着しました。タイに到着したときには、患者も家族も発熱の申告をしませんでした。患者は6月15日に入院し、18日に検査でMERS-CoVに陽性であることが判明しました。6月18日に、患者と家族3人は隔離のために別の医療施設に移されました。現在、患者は安定した状態です。

公衆衛生上の取り組み

タイの国家保健当局は以下の公衆衛生対策を行っています。

  • 患者が最初に入院した病院における感染予防と制御の対策の検証と強化
  • 家族と医療機関における接触者追跡の実施
  • 緊急指令センターに加えて、対策準備と対策チーム編成の立ち上げ

この事例に関する情報は、関係するタイとオマーン両国で共有しています。

世界での発生状況

WHOは、世界で2012年9月以降に検査で確定したMERS-CoV感染患者1,334人の報告と、少なくとも関連する死亡者471人の報告を受けています。

WHOからのアドバイス

WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

感染の予防と制御の対策には、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐことが重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

食品に対する衛生習慣には注意深くあるべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO.Global Alert and Response(GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV)- Thailand. 16 June 2015.
http://www.who.int/csr/don/20-june-2015-mers-thailand/en/