2015年06月29日更新 ヒトと動物に共通するインフルエンザ感染症の概況 (更新5)

2015年6月23日付けで、世界保健機関(WHO)からヒトと動物に共通するインフルエンザ感染症の概況が公表されています。

鳥インフルエンザA(H5)ウイルスのヒトへの感染

2003年から2015年6月23日までに、16か国から鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染者842人が検査で確認されたことが公表されました。このうち、447人が死亡しています。

2015年5月1日の更新以降に、新たに鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染者2人が検査で確認されたことが、エジプトからWHOに報告されました。2人ともFayoum(ファイユーム)行政区域からの報告です。1人目は3歳の女児で、6月8日に発症し10日に入院しました。2015年6月16日にインフルエンザA(H5N1)への感染が検査で確認されました。2人目は2歳半の男児で、6月13日に発症し16日に入院しました。2015年6月20日にインフルエンザA(H5N1)への感染が検査で確認されました。二人とも家禽との接触があり、オセルタミビルを投与され、治療されています。

OIEからの報告によれば、インフルエンザA(H5N1)、A(H5N2)、A(H5N3)、A(H5N6)、A(H5N8)といったさまざまなサブタイプのインフルエンザA(H5)が、西アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北米の鳥から検出されています。これらのインフルエンザA(H5)ウイルスは、ヒトに感染を引き起こす潜在力をもっていますが、これまでのところ、インフルエンザA(H5N1)ウイルスのヒトへの感染と2014年以降に中国で発生した3人の患者へのインフルエンザA(H5N6)ウイルスの感染を除いては、ヒトへの感染は報告されていません。

鳥インフルエンザA(H5)ウイルスに対する全体的な公衆衛生上のリスク評価

鳥インフルエンザウイルスが家禽の間で流行しているときには、散発的にヒトへの感染または小規模の集団感染が、感染した家禽やウイルスに汚染された環境下、特に家庭で家禽と接触する際に、発生することがあります。そのため、さらなる患者が散発的に発生しても予想外でありません。

最近、動物の間で鳥インフルエンザA(H5)が発生したことのない地域で、既存のインフルエンザA(H5)ウイルスや新たなA(H5)ウイルスにより家禽の間に鳥インフルエンザの集団発生が急速かつ大規模に拡がりをみせていることにともない、動物部門およびヒトにおける公衆衛生部門でも警戒体制を強化する必要があります。公衆衛生では、潜在的な危険に対して地域社会で警戒を強化することが人々の感染を阻止する重要な要素です。もし人に感染が起こっても発見できるように、ウイルスの伝播性や感染性が変化しても直ぐに検出できるように、サーベイランスは強化される必要があります。

非季節性のインフルエンザウイルスによるヒトへの感染

中国での鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染

WHOへの報告によれば、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスへの感染が、少なくとも死亡者271人を含む患者672人で検査確認されています。最近報告されている患者の大半は、生きた家禽が売られている市場などの感染した生きた家禽やウイルスに汚染された環境との接触機会と関係しています。インフルエンザA(H7N9)ウイルスは、患者が発生している地域での家禽とそれらが飼われている環境からは継続的に検出されています。過去にヒトから分離されたウイルスと比較して、最近の患者から分離されたウイルスに大きな遺伝子変異は認められていません。これまでの情報は、人と人との間で簡単に伝播するものでないことを示唆しています。

鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに対する全体的な公衆衛生上のリスク評価
全体として、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに対する公衆衛生上のリスクは2015年2月23日の評価から変わってはいません。

エジプトでの鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスのヒトへの感染

鳥インフルエンザA(H9N2)に2人の患者が感染していたことを検査で確認したとの報告を、WHOはエジプトから受けました。2人はカイロ行政区域に住む7歳の女児と9か月の女児で、インフルエンザ様疾患のサーベイランスの中で発見されました。両患児の症状は軽く、抗ウイルス剤の投与も、入院もしませんでした。1人は家禽との接触があり、もう1人は家禽の感染物が置かれた環境に接触したと考えられました。

彼女らは、エジプトから報告された鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスに対する2人目と3人目の感染者です。鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスは、エジプトでは家禽の間では広く流行していることが知られています。

鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスに対する全体的な公衆衛生上のリスク評価
このウイルスは、アジアや中東の家禽の間で流行しているため、さらなる患者や小規模の集団感染が発生する可能性はあります。このウイルスは、人と人との間で簡単に伝播することはなく、臨床症状も軽い傾向にあるようです。そのため、現在、このウイルスが地域レベルで流行し、公衆衛生に衝撃を与える可能性は低いと考えられています。

インフルエンザA(H1N1)変異ウイルスのヒトへの感染

前回のリスク評価以降、インフルエンザA(H1N1)変異ウイルスによる患者1人への感染がアメリカ合衆国からWHOに報告されました。2005年12月以降、アメリカで検出された人での感染者は合計18人になりました。患者は成人で、発症し、入院し、2015年4月に感染からの合併症のため死亡しました。患者は家畜場で働いていましたが、発症前の週に豚との直接の接触は報告されていません。この患者との接触者におけるさらなる患者の発生もありません。これは2015年に、アメリカ合衆国でインフルエンザA(H1N1)変異ウイルスに感染した初めての患者です。そして、このウイルスに感染した初めての死亡者です。

鳥インフルエンザA(H1N1)変異ウイルスに対する全体的な公衆衛生上のリスク評価
アメリカでは豚の間でこのウイルスが流行しているために、さらなるヒトへの感染や小規模の集団発生が起こるかもしれません。これまでのところ、ヒトでの感染は潜在的に感染した豚の集団個体と濃厚な接触の機会があったことと関係しています。現在、このウイルスが地域レベルで流行し、公衆衛生に衝撃を与える可能性は低いと考えられています。

出典

WHO.Influenza at the human-animal interface, Monthly Risk Assessment Summary.
Summary and assessment as of23 June 2015.
http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/Influenza_Summary_IRA_HA_interface_23_June_2015.pdf?ua=1[PDF形式:358KB]