2015年09月24日更新 ウエストナイル熱の発生-ポルトガル

ウエストナイル熱は脳炎を起こすウイルス感染症です。このウイルスは蚊によって媒介され、感染した人のおよそ20%が発熱、頭痛、筋肉痛などの症状を起こします。1%未満の低い割合ですが、重症の脳炎も起します。50歳以上の人が重症になりやすいとされています。有効なワクチン、治療法はなく、流行地域では蚊に刺されないことが重要です。

2015年9月17日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、ポルトガルでウエストナイル熱が発生しています。詳細は以下のとおりです。

ポルトガルの国際保健規約(IHR)国家担当者は2015年9月14日にウエストナイル・ウイルス(WNV)感染症患者を確認したことをWHOに報告しました。患者はAlmancil(アルマンシル、ローレ自治区)の町に住む71歳の男性で、最近の旅行歴はありません。彼は、7月20日に神経症状のため入院しましたが、8月4日には完全に回復し、病院を退院しました。

IgMおよびIgGのセロコンバージョンが、8月7日と19日の時間をおいた2つの検体で確認されました。最初の検体はリアルタイムPCR法で陰性でした。9月14日に採取された検体は、中和試験でWNVに対して陽性でした。

ポルトガルでは、以前にも3人の可能性の高い患者(2004年に2人、2010年に1人)が報告されており、WNVの存在は以前から知られていましたが、欧州連合(EU)におけるWNVの症例定義を満たした確定患者は初めてのことです。

公衆衛生における取り組み

地方と地域の保健行政当局は、必要となる疫学、血清学および臨床上の調査を行いました。食品・獣医部門の行政当局は、地方および地域レベルで地域の動物に対する疫学、血清学および臨床上の調査を行いました。

9月3日には、ポルトガルの国家当局は、Algarve(アルガルヴェ)地方のFaro(ファロ)とLoulé(ローレ)の自治区で、ウマに3つのWNVの感染源があることを国際獣疫事務局(OIE)に知らせました。

ポルトガル国家当局は、以下の予防措置を実施しています。

  • 一般の人々と医学専門家に向けた国家としての報道の発表
  • 血液、血液成分及び移植の安全性を確認するための行動
  • 血液に注意喚起する旨の通知の配信
  • 蚊の駆除活動の準備

背景

ウエストナイル・ウイルスは、フラビウイルス科に属し、日本脳炎抗原の複合体をもつフラビウイルス属のひとつです。ウイルスは、通常、アフリカ、ヨーロッパ、中東、北米、西アジアに分布します。 WNVは、主に感染した蚊に刺されることで人に感染伝播します。ヒト、ウマ及びその他の哺乳動物では、全てに感染が成立します。人にウイルスが感染すると神経疾患を引き起こし、死に至らせる可能性があります。馬に使用できるワクチンはありますが、人に対して使用できるワクチンはありません。

蚊に刺されないための対策

  • 可能な限り、しっかりと網戸がとりつけられているか、エアコンが備わっている、または、蚊をしっかりと駆除している場所での滞在を検討してください
  • できるだけ皮膚の露出部を少なくする長袖のシャツ、ズボンを着用してください
  • 流行地域で屋外にでかける場合や網戸が備わっていない建物にいる場合、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤の皮膚の露出部への使用を考えてください
    (使用する際は、注意事項をよく読み指示された使用法を守ってください。濃度が濃く、肌に炎症を起こす物もあります。日焼け止めは、虫よけよりも先につけて使用してください。順番を間違えると効果が弱まります。)
  • 肌が敏感な子ども、とくに乳児での虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。炎症を起こすことがあります。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳で被うことを考えてください。

心配な場合には早めの受診を

  • 海外で発熱などの症状が出たら、早目に医療機関を受診してください。
  • また、帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当者にご相談ください。帰国後に発症した場合や、症状が良くならない場合は、お近くの医療機関を受診してください。受診方法については検疫所や保健所でも相談することができます。
  • 医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

感染症情報:ウエストナイル熱

出典

WHO.West Nile virus- Portugal.Disease outbreak news. 17September2015.
http://www.who.int/csr/don/17-september-2015-wnv/en/