2016年02月10日更新 ギラン・バレー症候群の発生 -フランス領マルティニークおよびブラジル

2016年2月8日付けで公表されたWHOの情報によりますと、2016年1月25日にフランスの国際保健規約(IHR)国家担当者はPAHO/WHO(汎米保健機構/世界保健機構)に対してギラン・バレー症候群(GBS)患者2人を報告しました。また、2016年1月22日にブラジルの国際保健規約(IHR)国家担当者は全国レベルで記録されたギラン・バレー症候群(GBS)発生の増加を報告しました。

報告の詳細

フランス領マルティニーク

1. 1人目の患者は、19歳で、(2015年)12月26日に手足の麻痺症状で発症しました。(2016年)1月7日に採取された尿検体が、マルティニークの大学病院での逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法による検査で陽性でした。現在、患者は挿管され、集中治療室で呼吸管理されています。

2. 2人目の患者は、55歳で、1月21日に集中治療室に入院しました。同日、患者から尿検体が採取されました。検体は、マルティニークの大学病院での逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法による検査で陽性でした。現在、患者は呼吸不全のため呼吸管理されています。

ブラジル

病院ベースの調査システムによるデータから、2015年1月から11月までの間に、全国でGBS患者1,708人が登録されたことを明らかとなりました。たくさんの州、特に、アラゴアス(516.7%)、バイーア(196.1%)、リオ・グランデ・ド・ノルテ(108.7%)、ピアウイー(108.3%)、エスピリト・サント(78.6%)およびリオデジャネイロ(60.9%)の各州で患者数の顕著な増加が報告されています。 他の州では、2014年と比べてGBS患者数は安定あるいは減少が報告されました。ブラジルのほとんどの州では、ジカ、チクングニヤ、およびデングの各ウイルスの伝播に襲われています。

WHOのリスク評価

フランス領マルティニーク

この報告は、ジカウイルス感染症とGBSとの因果関係に関するさらなる証拠として提供されています。これら2人の患者は、マルティニークでGBS患者が異常に増加したことを示してはいません。しかしながら、GBSの病因におけるジカウイルスの潜在的な役割を解明するためには、さらなる研究が必要です。

ブラジル

現在、入手できる情報では、観察されたGBS患者発生率の差異を世界とブラジル各州との間で解釈するには不十分です。ブラジルの特定の州でGBS患者の発生率が増加したことの報告に対する潜在的な原因は解明されていません。増加の原因を解明するために、症例対照研究が行われています。これらの研究は、ジカウイルスとGBS及びその他の先天奇形との間で因果関係を裏付ける又は覆す証拠を示す可能性があります。

WHO

WHOは、利用できる最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を調査し、リスクを評価しています。

また、WHOは、ジカウイルスの影響を受けた又は影響を受ける可能性のある加盟各国に次のことを促しています。

  • 神経疾患、特にGBS患者の発生率とその傾向を調査し、予想されるベースライン値に対する変化を識別すること
  • GBS患者が突然に増加することによって生じる追加負担の中でも医療施設を運営するために、十分な患者管理プロトコールを作成し、実施すること
  • 医療従事者間で問題意識を高め、公共と民間の領域で公衆衛生サービスと臨床医の間の連携を確立し、さらに強化すること

WHOからのアドバイス

人の居住地での媒介蚊が繁殖する地の近くは、ジカウイルス感染に対して大きな危険因子となります。感染の予防と制御は、感染源の削減(繁殖地の除去および環境改善)を通して媒介蚊の繁殖を減らすことと、媒介蚊と人との接触機会を減らすことに依存します。これらは、自然及び人工の貯水池での蚊の幼虫の生息地の数を減らし、リスクのある地域で蚊の成虫個体数も減らし、防虫剤、網戸、戸や窓の遮断、長袖の衣服の着用などの防御を行うことで、達成することができます。ネッタイシマカおよびヒトスジシマカなどのヤブカ属(感染伝播において主となる媒介昆虫)は日中に活動するため、昼寝をしている人、特に幼児、病人および高齢者に対して保護のために殺虫剤で処理された蚊帳を使用すべきことが勧められています。蚊取り線香やその他の噴霧式殺虫剤も蚊に刺される可能性を減らすことができます。

感染流行の発生中は、飛来する蚊を殺すために殺虫剤の空中散布がWHOによって作成された技術要綱にしたがって実施されることがあります。技術的に記載されている場合には、(WHOの農薬評価事業計画による推奨の)適正な殺虫剤が比較的大きな貯水容器を処理するための幼虫の殺虫剤として使用されることもあります。

危険性の高い地域を旅行する人々、特に妊娠中の女性では、防蚊対策への基本的な注意が払われるべきです。これらには、明るい色の、長袖の上下衣服の着用、防虫剤の使用、確実に蚊が部屋は入るのを防ぐための網戸の設置などがあります。

WHOは、現在利用できる情報に基づく限り、フランス領マルティニークおよびブラジルへの旅行や貿易への制限は推奨していません。

出典

WHO.Emergencies preparedness, response.Disease Outbreak News. 8February2016
Guillain-Barrésyndrome- France - Martinique
http://www.who.int/csr/don/8-february-2016-gbs-france-martinique/en/

WHO.Emergencies preparedness, response.Disease Outbreak News. 8February2016
Guillain-Barrésyndrome- Brazil
http://www.who.int/csr/don/8-february-2016-gbs-brazil/en/