2016年02月15日更新 ギラン・バレー症候群の発生 -コロンビアおよびベネズエラ

2016年2月12日付けで公表されたWHOの情報によりますと、2016年1月30日から2月2日にかけて、コロンビアとベネズエラの国際保健規約(IHR)国家担当者から国内でたくさんのギラン・バレー症候群(GBS)患者が記録されたことがPAHO/WHO(汎米保健機構/世界保健機構)に報告されました。

報告の詳細

コロンビア

2015年第51週から2016年第3週にかけて、ギラン・バレー症候群(GBS)患者86人が報告されました。コロンビアでは、年平均242人のGBS患者(月平均19人、週平均5人)が登録されています。この5週間に記録されたGBS患者86人は、これまでの6年間の患者数から予想される平均の3倍に上っています。

報告の第一報では、報告されたGBS患者86人全員がジカウイルス感染症と一致する症状を発現していました。情報を入手できた患者58人のうち、57%が男性で、94.8%が18歳以上でした。

ベネズエラ

2016年1月1日から1月31日にかけて、時間的・空間的にジカウイルスに一致するギラン・バレー症候群(GBS)患者252人が報告されました。患者は、国内のほとんどの州で記録されており、主にマラカイボ地方Zulia(スリア)州で66人が確認されています。

スリア州のGBS患者での予備的分析では、患者66人のうち30%​​が45~54歳、29%が65歳以上で、61%が男性、39%が女性でした。スリア州のGBS患者の76%で、ジカウイルス感染症に一致する病状経過が、神経学的症状の発症前に認められました。患者の65%が関連する基礎疾患をもっていました。患者は、血漿交換および/または免疫グロブリン療法で治療されました。数人の患者では、国民健康省(the Ministry of Popular Power for Health)によって作成された治療プロトコールに基づいて、医学的に両治療の併用が適応されました。

ジカウイルス感染症が、基礎疾患がなく致死的であった患者を含む3人の患者から、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法検査で確認されました。他の神経疾患を有する3人の患者でも生物学的に(感染が)確認されました。

(昨年)11月下旬から2016年1月28までに、ジカウイルス感染症192人が逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法検査によって検査確認されました。患者192人のうち、110人(57%)は、スリア州からの発生です。

WHOのリスク評価

ジカウイルス感染症は、ベネズエラで報告されたGBS患者3人で検査確認されましたが、コロンビアではどの患者からも感染は(検査)確認されていません。GBSを発症する原因は確立されていませんが、エルサルバドルとブラジル(1月21日と2月8日にWHO掲載)でも類似の増加が観察されてきています。GBSと関連するまたは潜在的に関連することが知られている、潜在的に直前の感染症が果たす役割を特定するためには、さらなる研究が必要です。

WHOは、ジカウイルスの影響を受けた又は影響を受ける可能性のある加盟各国に次のことを促しています。

  • 神経疾患、特にGBS患者の発生率とその傾向を調査し、予想されるベースライン値に対する変化を識別すること
  • GBS患者が突然に増加することによって生じる追加負担の中でも医療施設を運営するために、十分な患者管理プロトコールを作成し、実施すること
  • 医療従事者間で問題意識を高め、公共と民間の領域で公衆衛生サービスと臨床医の間の連携を確立し、さらに強化すること

WHOからのアドバイス

人の居住地での媒介蚊が繁殖する地の近くは、ジカウイルス感染に対して大きな危険因子となります。感染の予防と制御は、感染源の削減(繁殖地の除去および環境改善)を通して媒介蚊の繁殖を減らすことと、媒介蚊と人との接触機会を減らすことに依存します。これらは、自然及び人工の貯水池での蚊の幼虫の生息地の数を減らし、リスクのある地域で蚊の成虫個体数も減らし、防虫剤、網戸、戸や窓の遮断、長袖の衣服の着用などの防御を行うことで、達成することができます。ネッタイシマカおよびヒトスジシマカなどのヤブカ属(感染伝播において主となる媒介昆虫)は日中に活動するため、昼寝をしている人、特に幼児、病人および高齢者に対して保護のために殺虫剤で処理された蚊帳を使用すべきことが勧められています。蚊取り線香やその他の噴霧式殺虫剤も蚊に刺される可能性を減らすことができます。

感染流行の発生中は、飛来する蚊を殺すために殺虫剤の空中散布がWHOによって作成された技術要綱にしたがって実施されることがあります。技術的に記載されている場合には、(WHOの農薬評価事業計画による推奨の)適正な殺虫剤が比較的大きな貯水容器を処理するための幼虫の殺虫剤として使用されることもあります。

危険性の高い地域を旅行する人々、特に妊娠中の女性では、防蚊対策への基本的な注意が払われるべきです。これらには、明るい色の、長袖の上下衣服の着用、防虫剤の使用、確実に蚊が部屋は入るのを防ぐための網戸の設置などがあります。

WHOは、現在利用できる情報に基づく限り、ジカウイルスが流行する国への旅行と貿易への制限を推奨してはいません。

出典

WHO.Emergencies preparedness, response.Disease Outbreak News. 12February2016
Guillain-Barrésyndrome- Colombia and Venezuela
http://www.who.int/csr/don/12-february-2016-gbs-colombia-venezuela/en/