2016年03月11日更新 国際保健規則に基づくジカウイルスおよび神経疾患と新生児奇形の増加に関する第2回緊急委員会のWHO声明

国際保健規則(2005) (IHR 2005)に則り、ジカウイルスの感染が発生した幾つもの地域で小頭症やその他の神経障害患者が集団発生していることについて、第2回の緊急委員会が事務局長によって招集されました。会議は、2016年3月8日[ヨーロッパ中央時間]13:00から16:45まで電話会議で開催されました。

WHO事務局は、2016年2月1日に事務局長により発行された一時勧告を実施した際の活動と、ジカウイルスの流行と時間的な関連性を持っている小頭症およびギラン・バレー症候群(GBS)の集団発生について、情報を整理し委員会に提出しました。委員会には、ジカウイルス感染症、小頭症およびGBSとの間にある因果関係の可能性について、観察研究、比較研究および実験研究からの追加データも提供されました。

ブラジル、カーボヴェルデ、コロンビア、フランス、アメリカ、エルサルバドルなどの加盟国も、ジカウイルスの感染が発生している地域での小頭症、GBSおよび神経疾患について情報を提供しました。

委員会は、ジカウイルス感染症が発生する中での先天奇形や神経疾患の症例報告1報、症例集積研究の複数報、GBSの症例対照研究1報と小頭症のコホート研究1報について加盟国および学術機関からの新しい情報を議題に取り上げました。このことは、各国からのデータから、この関係性におけるさらなる証拠を生み出すために、また、あらゆる矛盾を解明するために、さらなる研究が必要であることを強化しました。委員会は、小頭症やその他の神経障害患者の集団発生が、国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)に当てはまることを助言しました。

委員会は、IHR(2005)に則り、国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態に対処するために、事務局長が検討すべき点として以下の進言を行いました。

小頭症、その他の神経疾患、およびジカウイルス

  • 小頭症とGBSを含むその他の神経疾患の新たな集団発生とジカウイルスとの関係に対する研究が強化されることが必要です。
  • 特に、遺伝子配列が異なるジカウイルス株による臨床上の影響を観るための追加データの収集、小頭症の神経病理の研究、その他の感染地域やより直近の感染地域でのさらなる症例対照研究およびコホート研究、これらに特別な注意が向けられることが必要です。
  • 不顕性感染の割合を含め、特に、妊娠およびウイルス排出の持続性に関して、ジカウイルス感染症の自然経過に関する研究が促進される必要があります。
  • ジカウイルスの伝播が分かっているものの、このような障害の集団発生がみられていない他の地域で、小頭症およびその他の神経障害の発生率についても後ろ向き研究および前向き研究が実施される必要があります。
  • 研究は、小頭症およびその他の神経障害の集団発生がみられたことに対し、その他の原因因子もしくは共通因子についても探求を続ける必要があります。
  • このような研究を促進し、最も迅速に確実に結果を得るために、以下のことが挙げられます。
    • 小頭症とGBSの調査活動は、特にジカウイルスの伝播が知られている地域とリスクのある地域で、統一化され、 強化されることが必要です。
    • 研究は「先天性ジカウイルス感染症」に対して潜在する症例定義の作成から始めることが必要です。
    • 小頭症および/またはGBSの発生率の上昇とジカウイルスへの感染に関係する臨床、ウイルス学、および疫学上のデータが、これらの事態の国際的な理解を促進し、感染制御への努力の国際支援を導き、さらなる研究と医薬品開発を優先的に行うために、速やかに共有されることが必要です。

サーベイランス(調査活動)

  • ジカウイルス感染症の調査活動とその通報には、流行地域で統一された患者定義と診断定義を強化することが必要です。新たな感染地域では次項で記載されているように媒介蚊の駆除対策が行われる必要があります。

媒介昆虫である蚊の駆除

  • 媒介種の蚊の特定とその殺虫剤への感受性を含む、媒介昆虫の調査活動が、リスク評価と媒介する蚊の駆除を強化するために強調される必要があります。
  • 媒介する蚊の駆除と適切な個人保護対策が、ジカウイルスとの接触リスクを軽減するために積極的に推進され、実施される必要があります。
  • 各国は、長期に亘って媒介蚊への対策を強化する必要があります。また、WHO事務局長は、この問題により上手く関わっていく方法として、IHR体制を利用して、次の世界保健総会(WHA)にこの問題を議題とすることを検討すべきです。

リスクに対する相互の情報交換

  • ジカウイルスの感染が発生する国においては、住民の懸念への対処、地域の住民参加の強化、報告体制の向上、媒介昆虫の制御の確実な実施と個人防護具対策の確実な履行に対して、リスクに対する相互の情報交換を強化する必要があります。
  • これらの対策は、国民の認知度、および知識と情報の適切な評価に基づく必要があります。リスクの情報交換対策の影響度は、彼らの情報の受容の方向と彼らへの影響の向上をはかるために、厳密に評価されるべきです。
  • 妊娠可能女性、特に妊娠女性は必要な情報や接触機会を軽減するための資料を確実に入手できるようにする必要があります。
  • 性行為感染のリスクとそのリスクを軽減するための情報は、ジカウイルスの流行が報告されている地域に住んでいる人、その地域から帰ってくる人が利用できるようにすべきです。

医療支援

ジカウイルスと接触機会のあった妊娠女性は相談を行い、最新かつ正確な情報、国の実施対策および政策方針に基づいて出産に備えて経過が見守られるべきです。

  • 既にジカウイルスの流行が知られている地域では、医療保健サービスが、神経症候群および/または先天奇形に潜在する増加に備えられるべきです。

渡航時の対策

  • ジカウイルスが流行する国と地域への渡航および貿易に対する一般的な制限は行うべきではありません。
  • 妊娠女性は、ジカウイルスの流行が続いている地域へは旅行しないように助言されるべきです。ジカウイルスの流行が続いている地域に住んでいる、または、その地を旅行してきた性的パートナーをもつ妊娠女性は、安全な性行為を確保するか、妊娠期間の性交渉を控えるべきです。
  • ジカウイルスが流行する地域への渡航者には、蚊に刺される可能性を減らすために、その潜在的なリスクと適切な対策に関する最新のアドバイス情報が提供されるべきです。そして、帰宅時には、その後の感染リスクを下げるために安全な性交渉を含めて適切な措置がとられるべきです。
  • 世界保健機関(WHO)は、ジカウイルス感染に関連するリスクの特性及び期間に関する情報を更新しながら、旅行中のガイダンス情報を定期的に新しくしていく必要があります。
  • 空港では、媒介昆虫の制御に関するWHOの標準勧告が、IHR(2005)に合わせながら実施されるべきです。各国は、航空機の昆虫駆除を検討する必要があります。

研究、製品開発

  • ジカウイルス感染症の新しい診断法の開発は、調査活動と感染制御対策、特に妊娠の管理対して促進を図るために、優先して行われるべきです。
  • 新しい媒介昆虫の制御に対する研究、開発および評価は、特に緊急性が求められるべきです。
  • 中期的には、ジカウイルス・ワクチンおよび治療に対する研究と開発への努力が強化されるべきです。

この助言に基づき、事務局長は、2016年2月1日に国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態を宣言しました。事務局長は、委員会の助言を承認し、IHR(2005)に則り、一時勧告としてこれらを発行しました。事務局長は、これらの助言した委員と顧問らに感謝の意を表しました。

出典

WHO.Media center news.WHO Statements. 8 March 2016
WHO statement on the2nd meeting of IHR Emergency Committee on Zika virus and observed increase in neurological disorders and neonatal malformations
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2016/2nd-emergency-committee-zika/en/