2016年03月28日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新7)

2016年3月24日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

註:この報告は、調査活動、対策活動、研究活動の3項目で構成されていますが、内容を簡潔に伝えるために、調査活動に内容を絞って掲載しています。詳細は、原文でご確認下さい。

概要

  • 2007年1月1日から2016年3月23日までに、合計61の国と地域でジカウイルスへの感染が記録されました。これらの国と地域のうち、現在は4か国で流行が終息したことが報告されています。アルゼンチンとニュージーランドからは最近に性交渉によるジカウイルスの感染が報告されました。そのため、5か国(アルゼンチン、フランス、イタリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国)で、媒介することが知られている如何なる蚊も存在しない中で国内感染が報告されており、性交渉による感染の可能性が高いとみられています。
  • 2014年にアメリカ大陸で初めてウイルスが発見されて以降、ジカウイルスの地理的な分布は着実に拡大しています。ジカウイルスへの感染伝播はアメリカ大陸34の国と地域から報告されました。
  • これまでに、小頭症及びその他の先天奇形の増加はブラジルとフランス領ポリネシアで報告されています。また、ブラジルに滞在していたことに関係する2症例がアメリカ合衆国とスロベニアで確認されています。最近、パナマで小頭症と後頭部神経管欠損症(encephalocoele)があり出産時間後に死亡した新生児でRT-PCR法検査によりジカウイルスに陽性であったことが報告されました。
  • ジカウイルスへの感染が発生する12の国と地域では、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。
  • 観察研究、コホート研究、症例対照研究から積み重ねられている証拠は、ジカウイルスが小頭症及びGBS並びにその他の先天奇形の原因である可能性が高いことを示しています。これらの研究をさらに進めるには、ジカウイルスに感染した後の神経疾患に対するリスクを定量化し、神経疾患と繋がる生物学的なメカニズムを調査することが必要です。
  • 世界における感染の予防と制御の戦略が、対策戦略の基本骨格に基づきWHOによって開始されました。この骨格は、調査活動、対策活動、研究活動からなり、この発生状況の報告もこれらの項目に基づいて構成されています。

調査活動

ジカウイルスの発生

  • 2007年1月1日から2016年3月23日までに、合計61の国と地域でジカウイルスの感染伝播が記録されています。4か国では流行が終息したことが報告されています。また、5か国(アルゼンチン、フランス、イタリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国)で、媒介することが知られている如何なる蚊も存在しない中で国内感染が報告されており、性交渉による感染の可能性が高いとみられています。
  • 2014年末以降、ブラジルでは国内北東地域で発熱性発疹の患者が集団発生しました。2015年5月に(ウイルスRNAに対するRT-PCR法検査にて)ジカウイルスの診断が確認されました。
  • ジカウイルスはアメリカ大陸で急速に拡大しています。2016年3月23日までに、アメリカ大陸34の国と地域でウイルスの国内感染伝播が報告されました。中南米では、2015年10月以降、拡大が報告される割合が速度を増しています。
  • コロンビアでは、2015年10月1日から2016年3月12日までに、55,724人のジカウイルス疑い感染者が報告されました。流行は、2016年2月7日の週にピークに達したようで減少傾向となってきました。確定診断された患者数は2,355人になります。
  • 2007年以降、ニュージーランドの性交渉による1例を含めて、西太平洋地域17の国と地域から、国内感染したジカウイルス感染症患者が報告されてきました。太平洋の6つの島国と地域(アメリカ領サモア、ミクロネシア連邦、フィジー、マーシャル諸島、サモア、トンガ)では、2016年にジカウイルスの感染者が報告されました。
  • カーボヴェルデ(アフリカ地域)では、RT-PCR法検査によって確認された患者は2人だけですが、2015年10月1日から2016年3月6日までに、ジカウイルス感染症の疑い患者7,499人が報告されました。この流行は、2015年11月22日の週にピークとなり、以後は減少してきています。流行は、プライアで始まり、その後、他の行政地域に広がっていったようです。予備調査で確認された対象者の情報では、この流行はアフリカ株のジカウイルスによって発生したことが示されています。現在までに、ジカウイルスへの感染が疑われた妊娠女性165人が経過観察されています。これらの女性のうち44人(27%)が出産しました。

小頭症の発生

  • ブラジルでは、2015年10月22日から2016年3月19日までに、小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形6,671例が報告されました。このうち死亡報告が198例でした。この数値は、2001年から2014年の間に年平均の小頭症患者数が全国で163例と記録されていることとは対照的です。この急激な増加の詳細な説明が、最近発表された論文に掲載されています。ジカウイルスの伝播が確認された15州における小頭症の発生率(10,000生児出生あたり2.8例)は、ジカウイルスの伝播がない4州における小頭症の発生率(10,000生児出生あたり0.6例)を大幅に上回っています。
  • ブラジルで小頭症が疑われると報告された6,671症例のうち2,378例の調査を完了し、907例で先天性の感染症による小頭症および/または中枢神経奇形が示唆されました。
  • 小頭症はブラジル全土で確認されています。しかし、報告数の増加は北東地域に集中しています。
  • 小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形が疑われた6,671例のうち、198例は出生時もしくは妊娠中(流産または死産を含む)に死亡しました。このうち46例に先天性の感染症が原因とみられる小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形があり、130例が検討中で、22例が(小頭症および/または先天性感染が関与する中枢神経系奇形の診断基準を満たしていないため)除外されました。
  • フランス領ポリネシアでは、2014年3月から2015年5月までに生まれた子どもで、中枢神経奇形をもって生まれた子どもの増加が観察されました。全国の年間平均例数0~2例に比べ、この期間には小頭症児8例を含む19例が報告されました。最近発表された研究では、妊娠初期に感染した妊娠女性10,000人あたり95人に小頭症へのリスクがあると推定されました。
  • カーボヴェルデにおけるジカウイルス感染症流行の発生状況において、2016年3月14日に小頭症の新生児が報告されました。母親と新生児から採取された検体のジカウイルスに対する検査結果が待たれている状態です。
  • ジカウイルス感染症と小頭症との間の時間的・地理的関係が一致しており、妊娠女性に対する前向き研究および後ろ向き研究で観察されるジカウイルス感染症と小頭症との関係、さらには死亡胎児の脳組織で繰り返し発見されるウイルスから、ジカウイルスが原因としての役割を果たしている可能性が高くなっています。

ギラン・バレー症候群(GBS患者)の発生

  • ジカウイルスの感染が発生状況にある12の国と地域では、GBS発生率の増加および/またはGBS患者の間でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。
  • フランス領ポリネシアでは、2013年10月から2014年4月にかけて、この国は初めてジカウイルスの流行を経験しました。流行中に、患者42人がGBSで入院しました。これは、過去4年間にフランス領ポリネシアで発生した患者数と比べて、20倍に増加したことを示しています。これらのデータ(症例対照研究)から最近発表された正式な解析で、ジカウイルスの感染とGBSの間に強い相関性が示されました。42人全患者でのジカウイルスへの感染も確認されました。(血清学的調査から判断した)住民におけるジカウイルス感染症の発病率66%に基づいて、GBSのリスクはジカウイルスの感染者1,000人あたり0.24であると推定されました。
  • 2015年には、ブラジル政府がバイーア州でGBS患者42人の発生が報告され、このうち、26人(62%)にジカウイルス感染症と一致する症状の既往がありました。全国でGBS患者1,708人が登録されました。これは発生数の増加が全ての州ではないものの、前年(2014年にはGBS患者1,439人)と比べて平均19%の増加を示していました。
  • コロンビアでは、2015年12月から2016年3月13日までにジカウイルスへの感染が疑われる経過をもつ神経症候群患者352人が報告されました。このうち、248人がGBSでした。これまでのところ、検査では患者でのジカウイルスへの感染または他の原因は確認されていません。2015年9月14日から2016年3月13日までに、ジカウイルス感染症に罹った15歳未満の子ども31人で急性弛緩性麻痺が報告されました。
  • エルサルバドルでは、2015年12月5日から2016年3月5日までに死亡者3人を含む136人の GBS患者が記録されました。一方、2015年より以前の年間平均患者数は169人に過ぎませんでした。患者1人でジカウイルスの感染が検査確認されました。
  • スリナムでは、2016年1月29日に2015年のGBS患者発生数が増加していたことが報告されました。スリナムでは、2015年以前におけるGBS患者発生の登録は毎年平均で4人でしたが、2015年には患者10人が報告され、2016年には最初の3週でGBS患者3人が報告されました。2015年に報告された患者10人うち2人でRT-PCR法検査によってジカウイルスへの感染が確認されました。
  • ベネズエラでも、GBS患者発生数の増加が報告されました。2015年12月12日から2016年2月13日までに、GBS患者578人が報告され、うち235人がジカウイルス感染症の症状を示していました。2016年に、患者6人からRT-PCR 法検査によってジカウイルスが確認されました。
  • ジカウイルスへの感染が検査確認されたGBS患者が、エルサルバドル(1人)、フランス領ギアナ(2人)、ハイチ(1人)、ホンジュラス(妊娠女性1人)、マルティニーク(3人)、パナマ(2人)とプエルトリコ(1人)から報告されました。
  • 最近、他の神経障害が2例報告されました。1例は、グアドループでジカウイルスに感染した15歳の少女が急性脊髄炎を、もう1例は81歳で脊髄の炎症、髄膜脳炎、脳と髄膜の療法に炎症が波及する病態を示していました、これらの報告は、ジカウイルスの感染に関係する神経疾患の範囲をより詳しく解明することの必要性を強く示す報告です。
  • ホンジュラスでは、ジカウイルスへの感染が検査確認された妊娠女性が神経症候群となっています。
  • 小頭症と同様に、西太平洋やアメリカ大陸の国や地域でジカウイルスがGBS発生数の増加の原因となっている可能性が高まっています。

出典

WHO. Situation Report, Emergencies. 24 March 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/204690/1/zikasitrep_24Mar2016_eng.pdf?ua=1[PDF形式:1,065KB]