2016年03月30日更新 ジカウイルス発生状況について -ドミニカおよびキューバ

2016年3月29日付けで公表されたWHOの情報によりますと、PAHO/WHO(汎米保健機構/世界保健機構)はドミニカおよびキューバでのジカウイルス感染症を報告しました。

報告の詳細

ドミニカ

2016年3月15日に、ドミニカの国際保健規則(IHR)国家担当者は、初めてのジカウイルス国内感染症患者をPAHO/WHO(汎米保健機構/世界保健機構)に報告しました。

患者は、28歳女性です。3月1日に症状を発し、3月4日に病院を受診しました。症状は、眼窩後疼痛、前頭部痛、軽度の結膜炎、胸と腕に発疹でした。ジカウイルスへの感染が、カリブ海保健機関(CARPHA)地域下にある基準実験施設でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法検査によって確認されました。患者には、最近の国外への渡航歴はありません。他の家族や隣人で症状のあるものは報告されていません。

ドミニカの公衆衛生当局が以下の対策を行っています。

  • 患者の居住地および職場並びに空中散布処理を含めた環境周辺への調査と対策の実行
  • 官民両面からの住民への教育プログラムの強化
  • 国家規模での蚊の駆除キャンペーンの継続
  • 医療従事者に対する情報伝達の継続
  • 国や地域の人的・物的資源の動員

キューバ

2016年3月16日に、キューバ保健省はプレスリリースを通じて初めてのジカウイルス国内感染症患者を報告しました。

患者は、ハバナ州ハバナ中央部に住む21歳男性です。患者には、国外への渡航歴はありません。3月7日に、彼は頭痛、眼窩後疼痛、結膜炎で発症しました。3月9日に、患者は病院を受診し、そこで血液検体を採取されました。3月14日に、ジカウイルスへの感染が熱帯医学ペドロ・コウリ研究所でのPCR法検査によって確認されました。

キューバ保健当局が以下の対策を行っています。

  • 社会的なリスク情報の伝達の実施
  • 媒介する蚊の駆除対策の強化と、蚊の繁殖場所の除去

WHOによるリスク評価

ジカウイルスの国内感染患者の発見は、これまでに感染の発生のなかった地域(ドミニカおよびキューバ)にもウイルスが地理的に広がっていることを示しています。新たな国からの国内での感染伝播の報告による全体でのリスク評価には変更ありません。有力な媒介昆虫であるネッタイシマカおよびヒトスジシマカなどのヤブカ属が生息する地域におけるジカウイルスの拡がりは、世界中のさまざまな地域にこれらの蚊が広く地理的に分布していることが重大であることを示しています。WHOは、利用可能な最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を監視し、リスク評価を行っていきます。

WHOからのアドバイス

人の居住地での媒介蚊が繁殖する地の近くは、ジカウイルス感染に対して大きな危険因子となります。感染の予防と制御は、感染源の抑止(繁殖地の除去および環境改善)を通して媒介蚊の繁殖を減らすことと、媒介蚊と人との接触機会を減らすことに依存します。これらは、自然及び人工の貯水池で蚊の幼虫が生息できる場所の数を減らし、リスクのある地域で蚊の成虫個体数を減らし、防虫剤、網戸、戸や窓の遮断、長袖の衣服の着用など感染防御を行うことで、達成できます。ネッタイシマカおよびヒトスジシマカなどのヤブカ属(感染伝播において主となる媒介昆虫)は日中に活動するため、昼寝をしている人、特に幼児と子ども、病人および高齢者には、保護のために防虫処理された蚊帳、また防虫処理されておらずとも、その中で休息することが重要です。
感染流行の発生中は、WHOによって作成された技術要綱にしたがって、飛来する蚊を殺すために殺虫剤の空中散布が実施されることがあります。技術的な記述がある場合には、比較的大きな貯水容器を処理するために(WHOの農薬評価事業計画が推奨する)適正な殺虫剤が幼虫の殺虫剤として使用されることもあります。
危険性の高い地域を旅行する人々、特に妊娠中の女性では、防蚊対策への基本的な注意が払われるべきです。具体的には、防虫剤の使用、明るい色で長袖の上下衣服の着用、確実に蚊が部屋は入るのを防ぐための網戸の設置などがあります。

性交渉を通じてジカウイルスが感染伝播するリスクは極めて限られてくると考えられていますが、WHOは、基本原則に基づいて以下のことを勧めています。

  • ジカウイルス感染症に罹患した患者とその性的パートナー(特に妊婦)は、ジカウイルスには性交渉による感染伝播するリスクが潜在していることから避妊対策やより安全な性交渉についての情報を入手しておくべきであり、可能ならばコンドームが準備されるべきです。ジカウイルスへの感染が懸念される無防備な性交渉を行った女性、妊娠を希望していない女性も、緊急避妊のための支援や相談を容易に利用できる環境を備えておくべきです。
  • 地元でのジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域に住んでいるか又は、そこから戻ってきた妊娠女性の性的パートナーは、妊娠期間中は性交渉において、より安全な性行為を行うか性行為を控える必要があります。
  • ほとんどのジカウイルス感染者は無症状です。そのため、以下の注意が必要です。
  • ジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域に住んでいる男女は、より安全な性行為を行うか性行為を控える必要があります。
  • ジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域から戻ってきた男女は、少なくとも帰宅後4週間はより安全な性行為を行うか性行為を控える必要があります。

ジカウイルスに関する考慮とは別に、WHOは、HIVや他の性感染症への感染、また望まない妊娠を防ぐために一貫して正しくコンドームを使うことを含めた、より安全な性行為の実践を進めています。

WHOは、ジカウイルスを発見するためにルーチンで精液を検査することは推奨していません。
WHOは、現在利用できる情報に基づく限り、ジカウイルスが流行する国への旅行と貿易への制限を推奨してはいません。

出典

WHO.Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 29 March 2016
Zika virus infection- Dominica and Cuba
http://www.who.int/csr/don/29-march-2016-zika-dominica-and-cuba/en/