2016年04月13日更新 ジカウイルス発生状況について -ベトナム

2016年4月12日付けで公表されたWHOの情報によりますと、2016年4月5日に、ベトナムの国際保健規則(IHR)国家担当者は、国内で感染したジカウイルス感染症患者2人を確認したことをWHOに報告しました。

報告の詳細

1人目の患者は、Nha Trang(ニャチャン)の住民で、2016年3月26日に発熱、発疹、結膜炎、頭痛を発現しました。3 月31日には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法検査によってジカウイルスへの感染が判明しました。検査結果は、4月4日にHo Chi Minh(ホーチミン)市のパスツール研究所と国立疫学衛生研究所でも確認されました。

2人目の患者は、ホーチミン市の住民で、2016年3月29日に発疹、結膜炎、倦怠感を発現しました。3 月31日には、ホーチミン市のパスツール研究所でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法検査によってジカウイルスへの感染が判明しました。4月2日には、検査結果が国立疫学衛生研究所でも確認され、4月4日には長崎大学でも確認されました。

4月4日の時点で、ベトナム32省からジカウイルスの症状のある人の検体1,215本が採取され、衛生疫学研究所、ホーチミン市のパスツール研究所およびニャチャンで検査されました。現在までに、この他にはジカウイルス感染症の患者は確認されていません。

公衆衛生における取り組み

ベトナム保健当局は、次のような対策を取っています。

  • 疾病調査活動と媒介昆虫を制御する活動の強化
  • リスク情報の伝達活動の実施、およびジカウイルスとその他の蚊媒介性疾患を制御するための対策に関する情報の提供
  • 妊婦の健康状態を観察するための対策の実施、およびジカウイルスへの感染の可能性のある胎児の合併症の発見
  • 医療支援体制の需要が増す可能性に備えた産科と小児科病棟などの医療施設への支援
  • ジカウイルス感染症を予防と制御する活動のための適切な資源配分の確保

WHOのリスク評価

これらの患者は、2016年にベトナムでジカウイルス感染症の国内感染者が発見された初めてのことです。この報告で、全体のリスク評価が変更されることはありません。この種の蚊は世界中のあらゆる地域に広く分布していることから、強い媒介能をもつネッタイシマカが生息する地域には、ジカウイルスが世界的に拡がる大きなリスクがあります。WHOは、利用可能な最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を監視しリスク評価を行っています。

WHOからのアドバイス

人の居住地での媒介蚊が繁殖する地の近くは、ジカウイルス感染に対して大きな危険因子となります。感染の予防と制御は、感染源の削減(繁殖地の除去および環境改善)を通して媒介蚊の繁殖を減らすことと、媒介蚊と人との接触機会を減らすことに依存します。これらは、自然及び人工の貯水池での蚊の幼虫の生息地の数を減らし、リスクのある地域で蚊の成虫個体数も減らし、防虫剤、網戸、戸や窓の遮断、長袖の衣服の着用などの防御を行うことで、達成することができます。シマカ属(感染伝播において主となる媒介昆虫)は日中に活動するため、昼寝をしている人、特に幼児、病人および高齢者に対して保護のために殺虫剤で処理された蚊帳を使用すべきことが勧められています。蚊取り線香やその他の噴霧式殺虫剤も蚊に刺される可能性を減らすことができます。

感染流行の発生中は、飛来する蚊を殺すために殺虫剤の空中散布がWHOによって作成された技術要綱にしたがって実施されることがあります。技術的に記載されている場合には、(WHOの農薬評価事業計画による推奨の)適正な殺虫剤が比較的大きな貯水容器を処理するための幼虫の殺虫剤として使用されることもあります。

危険性の高い地域を旅行する人々、特に妊娠中の女性では、防蚊対策への基本的な注意が払われるべきです。これらには、明るい色の、長袖の上下衣服の着用、防虫剤の使用、確実に蚊が部屋は入るのを防ぐための網戸の設置などがあります。

性交渉を通じてジカウイルスが感染伝播するリスクは極めて限られてくると考えられていますが、WHOは、基本原則に基づいて以下のことを勧めています。

  • ジカウイルス感染症に罹患した患者とその性的パートナー(特に妊婦)は、ジカウイルスには性交渉による感染伝播するリスクが潜在していることから避妊対策やより安全な性交渉についての情報を入手しておくべきであり、可能ならばコンドームが準備されるべきです。ジカウイルスへの感染が懸念される無防備な性交渉を行った女性、妊娠を希望していない女性も、緊急避妊のための支援や相談を容易に利用できる環境を備えておくべきです。
  • 地元でのジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域に住んでいるか又は、そこから戻ってきた妊娠女性の性的パートナーは、妊娠期間中は性交渉において、より安全な性行為を行うか性行為を控える必要があります。
  • ほとんどのジカウイルス感染者は無症状です。そのため、以下の注意が必要です。
  • ジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域に住んでいる男女は、より安全な性行為を行うか性行為を控える必要があります。
  • ジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域から戻ってきた男女は、少なくとも帰宅後4週間はより安全な性行為を行うか性行為を控える必要があります。

ジカウイルスに関する考慮とは別に、WHOは、HIVや他の性感染症への感染、また望まない妊娠を防ぐために一貫して正しくコンドームを使うことを含めた、より安全な性行為の実践を進めています。

WHOは、ジカウイルスを発見するためにルーチンで精液を検査することは推奨していません。

WHOは、現在利用できる情報に基づく限り、ジカウイルスが流行する国への旅行と貿易への制限を推奨してはいません。

出典

WHO.Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 12 April 2016
Zika virus infection- Viet Nam
http://www.who.int/csr/don/12-april-2016-zika-viet-nam/en/