2016年04月18日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新10)

2016年4月14日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

註:この報告は、調査活動、対策活動、研究活動の3項目で構成されていますが、内容を簡潔に伝えるために、調査活動に内容を絞って掲載しています。詳細は、原文でご確認下さい。

概要

  • 2007年1月1日から2016年4月13日までに、ジカウイルスの感染伝播が合計64の国と地域で記録されました。
  • 蚊の媒介による感染伝播の発生状況は以下のとおりです。
  • 2015年以降、42か国で初めてのジカウイルスの流行が発生しています。これらの国では、以前には流行が発生した証拠はなく、現在も蚊による感染伝播が続いています。
  • 2015年以前に、17か国でジカウイルス流行の発生が報告されました。これらには、現在も蚊による感染伝播が続いている国もあれば、続いていない国もあり、2015年以降に流行の終息が報告された国もあります。
  • 人から人への感染伝播の発生状況は以下のとおりです。
  • 現在、蚊による感染伝播のない状況において、6か国(アルゼンチン、チリ、フランス、イタリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国)で人から人への感染伝播が起きていたことが報告されています。
  • 4月13日までの週に、新たに2か国で蚊による感染伝播が報告されました。ベリーズとセントルシアです。
  • ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される小頭症やその他の胎児奇形が、6か国(ブラジル、カーボヴェルデ、コロンビア、フランス領ポリネシア、マルティニーク、パナマ)から報告されています。また、ブラジルに滞在していたことと関連する2症例がアメリカ合衆国とスロベニアで確認されました。
  • ジカウイルスの感染が発生している状況において、13の国と地域でギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。
  • 増え続ける予備調査の結果に基づけば、ジカウイルスが小頭症やギラン・バレー症候群の原因であるということが、学術的に一致する意見となっています。
  • 世界における感染の予防と制御の戦略が、WHOによって対策戦略の基本骨格に基づき開始されました。この骨格は、調査活動、対策活動、研究活動からなり、この発生状況の報告もこれらの項目に基づいて構成されています。(対策活動、研究活動については原文をご参照下さい)

調査活動

ジカウイルスの発生

  • 2007年1月1日から2016年4月13日までに、ジカウイルスの感染伝播が合計64の国と地域で記録されています。2015年以降、42か国で初めてのジカウイルスの流行が発生しています。これらの国では、以前には流行が発生した証拠はなく、現在も蚊による感染伝播が続いています。2015年以前に、17か国でジカウイルス流行の発生が報告されました。これらには、現在も蚊による感染伝播が続いている国もあれば、続いていない国もあり、2015年以降に流行の終息が報告された国が含まれます。
  • 4月13日までの週に、新たに2か国で蚊による感染伝播が報告されました。ベリーズとセントルシアです。
  • 現在、蚊による感染伝播のない状況において、6か国(アルゼンチン、チリ、フランス、イタリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国)で人から人への感染伝播が起きていたことが報告されています。
  • 2015年10月以降、ジカウイルスがアメリカ大陸で急速に拡大しています。2016年4月13日までに、アメリカ大陸35の国と地域で蚊によって媒介されたウイルスの感染伝播が報告されました。また、3か国では性交渉によるジカウイルスの感染伝播が報告されました。
  • コロンビアでは、2015年10月1日から2016年4月2日までに、61,778人のジカウイルス疑い感染者が報告されました。確定診断された患者数は3,061人になりました。
  • 2007年以降、西太平洋地域17の国と地域から、国内感染によるジカウイルス感染症患者が報告されました。また、ニュージーランドで性交渉による感染1例が報告されました。2016年に、太平洋の9つの島国と地域(アメリカ領サモア、フィジー、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パプア・ニューギニア、フィリピン、サモア、トンガ、ベトナム)でジカウイルスの感染者が報告されました。
  • カーボヴェルデ(アフリカ地域)では、2016年4月11日までに878人の疑い患者の検査が行われ、先行分析で198人からジカウイルスのIgM抗体が検出され、5人からELISA法によるIgM陽性の結果を得ました。妊娠女性113人にジカウイルスの検査が行われ、血清検査と分子検査によってジカウイルスの存在が見つけ出されました。

小頭症の発生

  • ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される小頭症やその他の胎児奇形が、6か国(ブラジル、カーボヴェルデ、コロンビア、フランス領ポリネシア、マルティニーク、パナマ)から報告されています。また、ブラジルに滞在していたことと関連する2症例がアメリカ合衆国とスロベニアで確認されました。
  • ブラジルでは、2015年10月22日から2016年4月9日までに、小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形7,015例が報告されました。これらの7,015症例の調査のうち、3,179例の調査を完了し、1,113例で先天性の感染症が示唆されました。
  • ブラジルで報告された小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形7,015例は、2001年から2014年の間に年平均の小頭症患者数が全国で163例と比べると、急激な増加を示しています。この増加の詳細な説明が、最近発表された論文に掲載されています。
  • 小頭症および/または中枢神経系奇形はブラジル27州のうち21州で確認されました。しかし、報告数の増加は北東地域に集中しています。
  • 小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形が疑われた7,015例のうち、235例が出生時もしくは妊娠中(流産または死産を含む)に死亡しました。このうち50例に先天性の感染症が原因とみられる小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形があり、155例が検討中で、30例が(小頭症および/または先天性感染が関与する中枢神経系奇形の診断基準を満たしていないため)除外されました。
  • フランス領ポリネシアでは、2014年3月から2015年5月までに生まれた子どもの中で、中枢神経奇形をもって生まれた子どもの増加が観察されました。この間に小頭症児8例を含む19例が報告されました。これは、全国の年間平均例数が0~2例であったことに比べ、増加しています。最近発表された研究では、妊娠初期に感染した妊娠女性10,000人あたり95人に小頭症へのリスクがあると見積もられました。
  • カーボヴェルデにおけるジカウイルス感染症流行の発生状況において、小頭症児2例が報告されました。1例目では、母親と新生児から採取された検体で血清中和法検査によりジカウイルスに対するIgG抗体が示されました。2例目では、女性の血清からの予備検査では、ジカウイルスに対するIgM抗体に陽性の結果が得られました。
  • コロンビアから、3月30日に、2016年1月4日から3月20日の間に小頭症の新生児50人が報告されました。この数値は、過去の年平均の予想数(年間140人)に比べて増加を示しています。これまでに、検査された患者のうち7人でRT-PCR法検査によりジカウイルスに陽性と判明しました。

ギラン・バレー症候群(GBS患者)の発生

  • ジカウイルスの感染が発生状況にある13の国と地域では、GBS発生率の増加および/またはGBS患者の間でのジカウイルス感染の検査確認が報告されました。
  • フランス領ポリネシアは、2013年10月から2014年4月にかけて、初めてジカウイルスの流行を経験しました。流行中に、患者42人がGBSで入院しました。これは、過去4年間にフランス領ポリネシアで発生した患者数と比べて、20倍に増加したことを示しています。これらのデータ(症例対照研究)から最近発表された正式な解析で、ジカウイルスの感染とGBSの間に強い相関性が示されました。42人全患者でのジカウイルスへの感染も確認されました。(血清学的調査から判断した)住民におけるジカウイルス感染症の発病率66%に基づいて、GBSのリスクはジカウイルスの感染者1,000人あたり0.24であると推定されました。
  • 2015年には、ブラジル政府がバイーア州でGBS患者42人の発生が報告され、このうち、26人(62%)にジカウイルス感染症と一致する症状の既往がありました。全国でGBS患者1,708人が登録されました。これは発生数の増加が全ての州ではないものの、前年(2014年にはGBS患者1,439人)と比べて平均19%の増加を示していました。
  • コロンビアでは、2015年12月1日から2016年4月2日までにジカウイルスへの感染が疑われる経過をもつ神経症候群患者416人が報告されました。このうち、277人がGBSでした。ポリオの調査活動における報告の中で、2015年9月14日から2016年3月19日までに、ジカウイルス感染症に罹った15歳未満の子ども39人で急性弛緩性麻痺が報告されました。
  • エルサルバドルでは、2015年12月5日から2016年3月22日までに死亡者5人を含む178人の GBS患者が記録されました。一方、2015年より以前の年間平均患者数は169人に過ぎませんでした。患者1人でジカウイルスの感染が検査確認されました。
  • スリナムでは、2016年1月29日に2015年のGBS患者発生数が増加していたことが報告されました。スリナムでは、2015年以前におけるGBS患者発生の登録は毎年平均で4人でしたが、2015年には患者10人が報告され、2016年には最初の数週でGBS患者4人が報告されました。2015年に報告された患者のうち2人でRT-PCR法検査によってジカウイルスへの感染が確認されました。
  • ベネズエラでも、GBS患者発生数の増加が報告されました。2015年12月12日から2016年3月9日までに、GBS患者578人が報告され、うち235人がジカウイルス感染症の症状を示していました。2016年に、患者6人からRT-PCR 法検査によってジカウイルスが確認されました。
  • ドミニカ共和国では、2016年1月1日から3月12日までに、ジカウイルス感染症様の既往をもつGBS患者11人が報告されました。患者のうち6人は15歳未満の子どもで、残りのうち5人は50歳以上でした。ジカウイルス感染症が、GBS患者1例(国家行政区に住む1歳児)から確認されました。患者は順調に回復し、病院を退院しました。
  • ジカウイルスへの感染が検査確認されたGBS患者が、フランス領ギアナ(2人)、ハイチ(1人)、ホンジュラス(1人)、マルティニーク(6人)、パナマ(2人)とプエルトリコ(1人)からも報告されました。
  • 2016年3月に、ジカウイルス感染症に関係するその他の神経障害が2例の報告が公表されました。1例は、グアドループからでジカウイルスに感染した15歳の少女が急性脊髄炎を示しました。もう1例は81歳男性で、脊髄の炎症と、髄膜脳炎、脳と髄膜の両方に炎症が波及する病態を示していました、これらの報告は、ジカウイルスの感染に関係する神経疾患の範囲をより詳しく解明することの必要性を強く示す報告です。
  • 増え続ける予備調査の結果に基づけば、ジカウイルスが小頭症やギラン・バレー症候群および中枢神経(CNS)奇形の原因であるということが、学術的に一致する意見となっています。

出典

WHO. Situation Report, Emergencies. 14 April 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://www.who.int/emergencies/zika-virus/situation-report/14-april-2016/en/