2016年04月22日更新 ジカウイルス発生状況について -ペルー

2016年4月21日付けで公表されたWHOの情報によりますと、4月17日にペルーの国際保健規則(IHR)国家担当者は、性交渉によりジカウイルスに感染した患者を確認したことをPAHO/WHO(汎米保健機構/世界保健機構)に報告しました。これは、この国で初めてのジカウイルスに感染した患者です。

報告の詳細
患者は、リマ県に住む32歳の女性です。3月28日に発症しました。患者に、ペルー国外への旅行歴はありません。彼女は発症前に、ジカウイルスの感染が発生する国を旅行(2月26日~3月14日)し、帰国したパートナーと予防措置を行わないままに性交渉を行いました。そのパートナーは、3月16日に発症しました。そのパートナーの血清、尿、精液から採取された検体が国立衛生研究所で検査され、ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法検査によってジカウイルスに陽性であることが確認されました。

3月30日と4月6日に採取された女性の血清および尿検体も、国立衛生研究所でRT-PCR)法検査によってジカウイルスに陽性と判明しました。

患者の居住地域で行われた昆虫調査では、媒介する蚊は発見されませんでした。

公衆衛生上の取り組み
ペルーの保健当局は、次のような対策に取り組んでいます。

  • ジカウイルスが流行している地域を旅行してきた者が帰国後にジカウイルス感染症に関連する症状が現れた場合に、医療支援を受けるための受診を進めること
  • 感染輸入された患者および国内感染者を速やかに発見するために疫学調査を強化すること
  • 昆虫の調査活動を実施すること

WHOによるリスク評価
性交渉の後に感染が成立した患者の散発的な発生は、過去にも文献で報告されています。ウイルスは主に蚊に刺されることを通じて人々に伝播していくので、これらの性行為感染による患者が、全体でのリスク評価を変化させることはありません。強い媒介能をもつシマカ属の蚊が生息する地域にジカウイルスが世界規模で拡がる危険性は、地理的に世界の様々な地域にこれらの蚊が広く分布していることを考えると、かなり高いです。WHOは、利用可能な最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を監視し、リスク評価を行っていきます。

WHOからのアドバイス
人の居住地での媒介蚊が繁殖する地の近くは、ジカウイルス感染に対して大きな危険因子となります。感染の予防と制御は、感染源の抑止(繁殖地の除去および環境改善)を通して媒介蚊の繁殖を減らすことと、媒介蚊と人との接触機会を減らすことに依存します。これらは、自然及び人工の貯水池で蚊の幼虫が生息できる場所の数を減らし、リスクのある地域で蚊の成虫個体数を減らし、防虫剤、網戸、戸や窓の遮断、長袖の衣服の着用など感染防御を行うことで、達成できます。ネッタイシマカおよびヒトスジシマカなどのヤブカ属(感染伝播において主となる媒介昆虫)は日中に活動するため、昼寝をしている人、特に幼児と子ども、病人および高齢者には、保護のために防虫処理された蚊帳、また防虫処理されておらずとも、その中で休息することが重要です。

感染流行の発生中は、WHOによって作成された技術要綱にしたがって、飛来する蚊を殺すために殺虫剤の空中散布が実施されることがあります。技術的な記述がある場合には、比較的大きな貯水容器を処理するために(WHOの農薬評価事業計画が推奨する)適正な殺虫剤が幼虫の殺虫剤として使用されることもあります。

危険性の高い地域を旅行する人々、特に妊娠中の女性では、防蚊対策への基本的な注意が払われるべきです。具体的には、防虫剤の使用、明るい色で長袖の上下衣服の着用、確実に蚊が部屋は入るのを防ぐための網戸の設置などがあります。

性交渉を通じてジカウイルスが感染伝播するリスクは極めて限られてくると考えられていますが、WHOは、基本原則に基づいて以下のことを勧めています。

  • ジカウイルス感染症に罹患した患者とその性的パートナー(特に妊婦)は、ジカウイルスには性交渉による感染伝播するリスクが潜在していることから避妊対策やより安全な性交渉についての情報を入手しておくべきであり、可能ならばコンドームが準備されるべきです。ジカウイルスへの感染が懸念される無防備な性交渉を行った女性、妊娠を希望していない女性も、緊急避妊のための支援や相談を容易に利用できる環境を備えておくべきです。
  • 地元でのジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域に住んでいるか又は、そこから戻ってきた妊娠女性の性的パートナーは、妊娠期間中は性交渉において、より安全な性行為を行うか性行為を控える必要があります。
  • ほとんどのジカウイルス感染者は無症状です。そのため、以下の注意が必要です。
  • ジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域に住んでいる男女は、より安全な性行為を行うか性行為を控える必要があります。
  • ジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域から戻ってきた男女は、少なくとも帰宅後4週間はより安全な性行為を行うか性行為を控える必要があります。

ジカウイルスに関する考慮とは別に、WHOは、HIVや他の性感染症への感染、また望まない妊娠を防ぐために一貫して正しくコンドームを使うことを含めた、より安全な性行為の実践を進めています。

WHOは、ジカウイルスを発見するためにルーチンで精液を検査することは推奨していません。

WHOは、現在利用できる情報に基づく限り、ジカウイルスが流行する国への旅行と貿易への制限を推奨してはいません。

出典

WHO.Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 21 April 2016
Zika virus infection- Peru
http://www.who.int/csr/don/21-april-2016-zika-peru/en/