2016年05月11日更新 黄熱の発生状況(更新)

2016年5月5日付けで、WHOより黄熱の発生状況が公表されています。ここでは、概要、リスク・アセスメント、感染対策を取り上げます。アンゴラ、コンゴ民主共和国、ウガンダ、その他の国での個別の発生状況も掲載されていますので、詳細は原文でお確かめください。

概要

  • 2015年12月後半に、黄熱の集団発生が発見され、2016年1月20日にダカール・パスツール研究所によって確認されました。その後、黄熱患者の急激な増加がみられました。
  • 5月4日現在、アンゴラでは、277人の死亡者を含む2,149人の疑い患者が報告され、そのうちの661人が検査によって確定診断されたことが報告されました。ルアンダ州でのワクチン接種キャンペーンにもかかわらず、ルアンダ州のほとんどの地域およびこの他にも5つの州で、黄熱ウイルスが未だに流行しています。
  • コンゴ民主共和国(確定患者37人)、ケニア(確定患者2人)、中国(確定患者11人)の3か国では、アンゴラから感染輸出された黄熱患者が報告されました。ナミビアでもアンゴラから感染輸出された黄熱の疑い患者が報告されました。これは、予防接種をしていない旅行者を通して国際的にリスクが拡大していることを強く示しています。
  • コンゴ民主共和国(DRC)の保健省は、2016年3月22日に、アンゴラと関係する黄熱患者を報告しました。DRC政府は、4月23日に、公式に黄熱の流行発生を宣言しました。5月4日までに、DRCでは感染の可能性の高い患者5人と確定診断患者39人が報告されました。このうち、37人はコンゴ中部州(旧バ・コンゴ州)とキンシャサで報告されたアンゴラからの感染輸入患者で、2人はキンシャサのNdjili(ヌジリ)とコンゴ中部州Matadi(マタディ)で報告された国内感染患者です。キンシャサとコンゴ中部州で現地感染した可能性のある感染者が、少なくとも10人分類されないままに、検査結果を待っています。
  • ウガンダの保健省は、2016年4月9日に、Masaka(マサカ)県で黄熱患者が報告されました。5月4日までに、マサカ、Rukungiri(ルクンギリ)、Kalangala(カランガラ)の3県で、黄熱患者7人が検査確認されました。その後の結果によれば、これらの集団感染はアンゴラとは疫学的に関係していません。
  • アンゴラやコンゴ民主共和国でのウイルスはほとんどが主要都市に集中しており、森林においてサルの間で増殖していた黄熱ウイルスの循環の延長線上で各都市に持ち込まれた可能性があります。

リスク・アセスメント

  • アンゴラの集団感染は以下の理由で大きな懸念が残されています。
    • ほぼ600万人がワクチン接種を受けているという事実があるにもかかわらず、ルワンダ
      州で国内感染が持続しています。
    • 国内感染はルアンダ州を含む人口が密集する6つの州で報告されています。
    • 近隣諸国への拡大のリスクが高くなっています。既に、中国、コンゴ民主共和国、ケニア
      でアンゴラを旅行してきた確定患者が発生しています。国境では、実質的に社会生活お
      よび経済活動が国境を越えて、自由に行き来できるため、さらなる感染伝播の危険性を
      排除できません。ウイルス血症となった旅行者は、地域感染の確立、特に、適度に媒介
      する蚊が生息し、感染を受けやすい住民が住んでいる国ではリスクをもたらします。
  • 4月の現地調査からは、コンゴ民主共和国には黄熱の地域感染のリスクが非常に高いと結論付けられています。利用できるワクチンが限られているため、キンシャサにある大きなアンゴラ人の地域集団、アンゴラとDRCと間に存在する流動性、媒介するシマカ属の蚊の生息と活動性を考えると、注意深く厳重に発生状況を監視する必要があります。

感染への対策

  • 予防接種キャンペーンが、最初、ルアンダ州で2月の初めに、ベンゲラ州とウアンボ州で4月半ば開始されました。データはこれら3つの州でのワクチン接種率が不十分であることを示しています。
  • DRCとウガンダは、GAVI Alliance(ワクチンと予防接種のための世界同盟)の適格国となるため、これらの国にはGAVI Allianceによって予防接種キャンペーンが行われる予定です。
  • 170万本のワクチンが、間もなくアンゴラに支給され、さらに70万本が黄熱ワクチンの提供に関する国際調整グループ(ICG)に要請されています。
  • 220万本のワクチンおよびその付属機器が5月中旬までにDRCに到着する予定です。
  • 黄熱に対する国際メディアの注目度は、まだ最小限に留まっています。しかし、アンゴラは、国内で感染制御対策を実施するために、関係する情報を発信し公開してきました。この他にも報道では、旅行時におけるワクチン接種の確認やこの病気の拡散防止に焦点を当ててきました。
  • WHOは、流行に関する質問に共同歩調で対処するために情報の発信や情報源に関して国連を通してリーダーシップをもって情報伝達の指示を与えました。

出典

WHO.Situation Report, Emergencies. 5 May 2016
Situation Report; Yellow fever
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/205947/1/yellowsitrep_5May2016_eng.pdf?ua=1[PDF形式:397KB]