2016年05月18日更新 鳥インフルエンザA(H7N9)の発生状況 (更新7)

2016年5月17日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)は、2016年5月10日に、新たに死亡者4人を含む鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染者11人が検査で確認されたことをWHOに報告しました。

報告の概要

2016年3月23日から4月21日までの報告です。患者の年齢幅は、23歳から69歳までで、中央値は52歳でした。11人のうち、7人(64%)は男性でした。大半(10人、91%)が生きた家禽類と接触する、またはその家禽の解体処理や生きた家禽類を扱う市場と接触する機会をもっていました。患者1人は市場で豚肉を売る仕事をしていました。

患者は5つの省から報告されました。江蘇省(6人)、江西省(2人)、安徽省(1人)、山東省(1人)、浙江省(1人)からです。

1つの集団発生が報告されました。

  1. 1.江西省に住む23歳の男性で、4月1日に発症し、4月8日に入院しました。彼は、生きた家禽を扱う市場で家禽を購入していました。現在、彼は重篤な容態です。
  2. 2.江西省に住む43歳の女性で、4月5日に発症し、4月15日に入院しました。彼女は、市場で解体処理された家禽との接触機会をもっていました。また、23歳男性との接触機会ももっていました。現在、彼女は重篤な容態です。

これら2人の患者は、ともに家禽との接触機会をもっていますが、患者間での人と人との感染伝播を除外できません。さらなる情報が待たれるところです。

公衆衛生上の取り組み

中国政府は以下のサーベイランスと感染制御対策をとっています。

  1. 1.発生サーベイランスおよび発生状況の分析の強化
  2. 2.治療における医学的な全ての努力の強化
  3. 3.住民とのリスク情報の交換と情報の普及の実施

WHOのリスク評価

人におけるほとんどの患者は、感染した家禽との接触またはウイルスに汚染された環境との接触を通してA(H7N9)に感染しています。このウイルスが動物や環境中で検出され続けているため、さらに人での患者が発生することは予想されます。医療従事者が関係する感染も含めて、これまでにも人への感染の小さな集団発生は報告されてきましたが、現在の疫学的・ウイルス学的な根拠からは、このウイルスが人と人との間で感染伝播を維持し続ける能力は獲得していないことが示唆されています。それ故に、地域レベルで感染が拡がるとは考えられていません。

このA(H7N9)ウイルスの人での感染は稀ですが、公衆衛生上に深刻な影響を与える可能性があるものとして、このウイルスおよび/または人への感染率の挙動の変化は検出しておく必要があり、厳密に監視することが必要です。WHOは、疫学上の発生状況を監視し、最新の情報に基づき、引き続きリスク評価を行っています。

WHOからのアドバイス

WHOは、鳥インフルエンザの発生が確認されている国への渡航者に対し、養鶏場への立ち入り、生きた家禽類をさばく市場での動物との接触、家禽を解体する場所への立ち入り、家禽や動物の排泄物で汚染されているとみられるあらゆる物品との接触を避けることを勧めています。渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、食品の安全と衛生習慣の維持に努めるべきです。

WHOは、この事象に関連して、特別な入国スクリーニングおよび渡航や貿易の制限を行うことを推奨してはいません。鳥インフルエンザが懸念される地域を渡航中又は帰国した直後に、渡航者が重症の急性呼吸器症状を発症した場合には、常に鳥インフルエンザウイルスへの感染を鑑別診断として考えておくべきです。

WHOは、国際保健規則(2005)に基づき、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを含むインフルエンザのサーベイランスの強化を継続し、慎重に通常と異なる傾向がみられた症例については検討を重ねることを各国に促しています。さらに、国民の健康に備える活動を続けていくことを求めています。

中国に滞在される方は、今後も情報に注意していただくとともに、手洗いや咳エチケットをこころがけてください。また、鳥に直接触ったり、病気の鳥や死んだ鳥に近寄ったりしないようにしてください。入国の際に、発熱、咳、喉の痛みなどの症状がある場合には検疫所に相談してください。

出典

WHO.Disease outbreak news. 17 May 2016
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus - China.
http://www.who.int/csr/don/17-may-2016-ah7n9-china/en/