2016年05月23日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新15)

2016年5月19日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。

概要

  • 5月18日現在、蚊の媒介によってジカウイルスの感染伝播が、合計60の国と地域で報告されています。蚊の媒介による感染伝播の内訳は以下のとおりです。
    • 46か国で、2015年以降に初めてジカウイルスの流行発生が発生しました。これらの国では、これ以前に流行が発生した証拠はなく、現在も蚊による感染伝播が続いています。
    • 14か国では、2007年から2014年までにジカウイルスの感染伝播が報告されました。これらの国では、現在も感染伝播が続いています。
    • 4つの国と地域では、2007年から2014年までに流行の発生が報告されましたが、現在は終息しています。これらの国と地域は、クック諸島、フランス領ポリネシア、チリのイースター島、ミクロネシア連邦のヤップ島です。
  • 人から人への感染伝播が以下のとおり発生しています。
    • 10か国(アルゼンチン、カナダ、チリ、フランス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、ペルー、ポルトガル、アメリカ合衆国)でジカウイルスの人から人への感染伝播が起きていたことが報告されています。感染経路は性交渉によるとみられています。
  • 5月18日の週には、新たな国と地域として、アルゼンチンから蚊による感染伝播が報告されました。人から人への感染伝播も、新たにドイツから報告されました。
  • ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される小頭症やその他の胎児奇形が、8つの国と地域(ブラジル、カーボヴェルデ、コロンビア、フランス領ポリネシア、マルティニーク、メキシコ、パナマ、プエルトリコ)から報告されています。新たな地域として、プエルトリコからジカウイルスが関係する小頭症症例が報告されました。
  • 小頭症およびその他の神経学的異常に関する2例が、ベネズエラ、スペインで報告され、現在調査されています。
  • ジカウイルスの感染が発生している状況において、13の国と地域で全国的にギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。オランダに帰国した旅行者において、ジカウイルスに関係するGBS患者1例が報告されました。
  • これまでの調査に基づけば、ジカウイルスが小頭症やギラン・バレー症候群の原因であるということで、学術的に意見が一致してきています。
  • 世界における感染の予防と制御の戦略が、WHOによって対策戦略の基本骨格に基づき開始されました。この骨格は、調査活動、対策活動、研究活動で構成されています。この公衆衛生上の緊急事態に対して、鍵となる介入が、WHO、国際支援組織、大陸間地域支援組織および国内支援組織によって共同で行われています。2016年下半期における対策戦略の基本骨格の草案が、5月中旬までに加盟各国に配布され、6月中旬までに決定される予定です。
  • WHOは、ジカウイルスの発生状況における新たな助言とさまざまな論題に関する情報を纏めました(http://www.who.int/csr/resources/publications/zika/en/)。リスクの情報伝達を支援するために、WHOの最新の資料、ニュースおよび情報源を公表し、関係のある集団にオンラインで入手できるようにしています(http://www.who.int/risk-communication/zika-virus/en/)。

リスク・アセスメント

全体として、世界でのリスク評価に変更はありません。ジカウイルスは媒介能力をもつ蚊が生息する地域で、地図の上で拡がりを続けています。いくつかの国やその国の一部の地域では、ジカウイルス感染症の患者が減少する傾向が報告されていますが、警戒体制を強化しておくことが必要です。利用できる証拠に基づいて、現段階で、WHOは全体として流行が弱まる傾向にあるとはみていません。

出典

WHO.Situation Report, Emergencies. 19 May 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://www.who.int/emergencies/zika-virus/situation-report/19-may-2016/en/