2016年06月17日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新18)

2016年6月16日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

概要

  • 国際保健規則(IHR 2005)に則り、小頭症やその他の神経障害患者、並びにジカウイルス感染症に関して、第3回の緊急委員会が事務局長によって招集され、2016年6月14日に電話会議で開催されました。委員会は、ジカウイルス感染症が小頭症やギラン・バレー症候群(GBS)の原因であることについて国際的な学術上の同意が得られたことを確認し、その結果、ジカウイルスと関係する先天障害およびその他の神経障害が国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)に該当することで一致しました。現在のジカウイルスの流行状況における既存の証拠に基づけば、このウイルスは世界中に広がり、媒介する蚊が生息する地域では新たに感染伝播の連鎖を確立させることができることが分かっています。委員会は、オリンピックとパラリンピックに関連する潜在的なリスクに焦点を当てて、ブラジルから提出された情報、アルボウイルス、感染症の国際的な拡がり、旅行医学、人々の対象の集まり、生命倫理に関して専門的な助言者から提供された情報について討議しました。委員会は、オリンピックとパラリンピックにおいて、ブラジルが大会を開催するのは冬期であり、デングウイルスやジカウイルスのようなアルボウイルスの国内での感染伝播の程度が最小となるであろうことや、さらに感染伝播のリスクを下げるべく大会期間中は開催地での媒介蚊への対策が強化されることから、ジカウイルスがさらに国際的に広がる可能性は極めて低いと結論づけました。
  • 6月15日現在、蚊の媒介によってジカウイルスの感染伝播が、合計60の国と地域で報告されています。蚊の媒介による感染伝播の内訳は以下のとおりです。
    • 46か国で、2015年以降に初めてジカウイルスの流行発生が発生しました。これらの国では、これ以前に流行が発生した証拠はなく、現在も蚊による感染伝播が続いています。
    • 14か国では、2007年から2014年までにジカウイルスの感染伝播が報告されました。これらの国では、現在も感染伝播が続いています。
  • 4つの国と地域では、2007年から2014年までに流行の発生が報告されましたが、現在は終息しています。これらの国と地域は、クック諸島、フランス領ポリネシア、チリのイースター島、ミクロネシア連邦のヤップ島です。
  • 10か国(アルゼンチン、カナダ、チリ、フランス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、ペルー、ポルトガル、アメリカ合衆国)でジカウイルスの人から人への感染伝播が起きていた証拠が報告されています。感染経路は性交渉によるとみられています。
  • 6月15日までの1週間に、蚊から人への感染伝播も、人から人への感染伝播も、新たに報告された国はありません。
  • 2016年6月15日までに、ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される小頭症やその他の中枢神経奇形が、12の国と地域(ブラジル、カーボヴェルデ、コロンビア、エルサルバドル、フランス領ポリネシア、マーシャル諸島、マルティニーク、パナマ、プエルトリコ、セルビア、スペイン、アメリカ合衆国)から報告されています。小頭症が報告された者のうち3人は、ブラジル(セルビア、アメリカ合衆国)およびベネズエラとコロンビア(スペイン)への渡航歴のある母親から生まれました。さらに、(感染の発生する3か国を渡航しているため)ラテンアメリカの何処の国で感染したかが正確に判別できない新たな事例が1例あります。
  • エルサルバドルで、初めて、ジカウイルス感染症が関係する小頭症1例が確認されました。
  • 最近、ホンジュラスに行った母親からの小頭症とその他の神経学的異常を有する症例があり、現在、アメリカ合衆国でジカウイルス感染症に対する検証を行っています。
  • 6月15日現在、カーボヴェルデでジカウイルス感染症の既往が血清学的に確認された小頭症およびその他の神経学的異常が合計で6例報告されています。
  • ジカウイルスの感染が発生している現状において、13の国と地域で全国的にギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。
  • グアドループで、重症の神経学的状態を伴うジカウイルス感染症患者3人が診断されました。
  • カーボヴェルデでジカウイルスの流行を起こしたウイルスの遺伝子配列は、このウイルスはアジア系統に属し、ブラジルで流行しているウイルスと同じであるということが示されました。この発見の正確な意味付けは、これから決定されるところです。
  • これまでの調査に基づけば、ジカウイルスが小頭症やGBSの原因であるということで、学術的に意見が一致してきています。
  • 2016年2月に、世界における感染の予防と制御の戦略が、WHOによって対策戦略の基本骨格に基づき開始されました。この国際的な公衆衛生上の緊急事態に対処するためにWHOと国内外の加盟国や支援組織が共同で行っている主な活動のいくつかは、中間報告が公表されています。現在、2016年7月から2017年12月までの戦略の改訂作業が、支援組織と共同で作成されており、6月中旬には公開される予定です。
  • WHOは、ジカウイルスの発生状況の中でのさまざまな話題に関する新たな助言や情報を作成しています(http://www.who.int/csr/resources/publications/zika/en/)。企業を支援し、計画的なリスクの情報伝達、地域活動を支援するために、WHOは、最新の資料、ニュースおよび情報源を公表し、オンラインで入手できるようにしています(http://www.who.int/risk-communication/zika-virus/en/)。

リスク・アセスメント

カーボヴェルデ共和国でのアジア系統(ウイルス)の存在意義は未だ不明ですが、全体として、世界でのリスク評価に変更はありません。ジカウイルスは媒介能力をもつ蚊が生息する地域で、地図の上で拡がりを続けています。いくつかの国やその国の一部の地域では、ジカウイルス感染症の患者が減少する傾向が報告されていますが、警戒体制を強化しておくことが必要です。利用できる証拠に基づいて、現段階で、WHOは全体として流行が弱まる傾向にあるとはみていません。

出典

WHO.Situation Report, Emergencies. 16 June 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/242439/1/zikasitrep-16Jun2016-eng.pdf?ua=1[PDF形式:647KB]