2016年06月27日更新 黄熱の発生状況(更新8)
2016年6月23日付けで、WHOより黄熱の発生状況が公表されています。ここでは、概要、リスク・アセスメント、感染対策を取り上げます。アンゴラ、コンゴ民主共和国、ウガンダ、その他の国での個別の発生状況も掲載されていますので、詳細は原文でお確かめください。
概要
- アンゴラでは、2016年開始以降、報告される患者数が増加しています。6月17日現在、確定患者861人を含む疑い患者3,294人が報告されています。報告された死亡者数は347人となり、そのうち115人は確定患者から報告されました。疑い患者は全ての州から報告され、確定患者は18州のうち16州、123地域のうちの79地域から報告されました。
- 集団予防接種キャンペーンは、ルアンダ州から始まり、現在では、感染が発生している他の地域のほとんどを網羅するまでに拡大しています。最近は、国境地域にこのキャンペーンの焦点が当てられています。ワクチン接種を拡大させる努力が続けられているにもかかわらず、ウイルスの流行は続いています。
- コンゴ民主共和国(DRC)では、2016年6月20日現在、確定診断患者68人と死亡者75人を含む疑い患者1,106人が報告されています。国内5州の22衛生行政地域から報告されました。確定患者68人のうち、59人はアンゴラからの感染輸入患者で、2人は森林型黄熱患者、7人は国内感染患者でした。
- 調査活動への取り組みが強化され、DRCでのワクチン接種キャンペーンが感染の発生しているキンシャサとコンゴ中部州で集中して行われています。
- ケニア(確定患者2人)、中国(確定患者11人)の2か国では、アンゴラから持ち込まれた黄熱の確定患者が報告されました。これは、予防接種を受けていない旅行者を介して国際的にリスクが拡大していることを強く示唆しています。
- 現在、6か国(ブラジル、チャド、コロンビア、ガーナ、ペルー、ウガンダ)では、アンゴラの流行と関係のない黄熱の流行や散発例が報告されています。
- 2016年5月19日に招集された緊急委員会(EC)からの助言に基づき、事務局長は、アンゴラとコンゴ民主共和国における都市型黄熱の流行が国家体制で活動を結集し国際支援を強化することを確保すべき公衆衛生上の深刻な事態であると判断しました。しかし、この事態は、現時点では国際的に脅威となる公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)には該当しないとも判断しました。
図1.黄熱患者の分布図[アンゴラ、コンゴ民主共和国]
※アンゴラが6月17日現在、DRCが6月21日現在
リスク・アセスメント
- アンゴラの集団感染は以下のような理由で大きな懸念があります。
- 1,100万人以上の人々がワクチン接種を受けているという事実があるにもかかわらず、地域での感染が持続しています。
- 地域での感染はルアンダ州を含む人口が密集する12州で報告されています。
- 流行は、新たな州および新たな地域へ拡大しています。
- 近隣諸国への拡大のリスクが高まっています。国境では、実質的に社会生活および経済活動が国境を越えており、自由に行き来できるため、さらなる感染伝播のリスクを排除できません。ウイルス血症となった旅行者には、地域感染を確立させるリスクが、特に、たくさんの媒介する蚊が生息し、感染を受けやすい住民が住んでいる国ではそのリスクが、あります。
- 国内感染患者が報告されていない他州でも、地域の感染伝播が確立されるリスクがあります。
- カビンダ(アンゴラの飛び地)のように感染が波及し難い地域でも感染が続いていることを疑わせる高い指標が示されています。
- 調査活動の強化が必要で、さらなる調査活動の体制強化が計画されています。
- コンゴ民主共和国(DRC)では、流行が既に3州に拡がっています。利用できるワクチンに限りがあり、キンシャサには大きなアンゴラ人の地域集団が、そして、アンゴラとDRCとの間は流動する人々が存在するとともに、媒介するシマカ属の蚊が生息し活動していることを考えると、流行は、特に、カサイ、カサイ中央、ルアラバなどの他州に及ぶ可能性があります。
- アンゴラやコンゴ民主共和国でのウイルスは大半が主要都市に集中しています。しかし、両国ではその他の地方への感染伝播と地域内の感染伝播に対するリスクがあります。また、このリスクは、国境を接する国々、特に、黄熱に対するリスクが低いと分類されている国々(ナミビア、ザンビア)において、そこには黄熱ワクチンを接種していない住民、旅行者や外国人労働者がいるために、拡大の可能性が高くなっています。
- チャド、ウガンダ及び南米大陸の一部の国(ブラジル、コロンビア、ペルーなど)も、黄熱の集団発生や散発的な患者発生に直面しています。これらの発生事例はアンゴラの流行発生とは関係ありませんが、黄熱ワクチンの限られた備蓄に新たな歪みを生む可能性のあるこれらの国ではワクチンが必要です。
感染への対策
- 黄熱に関する緊急委員会(EC)が、WHO事務局長によって招集され、国際保健規則(IHR 2005)に則り2016年5月19日に開催されました。緊急委員会(EC)からの助言に基づき、事務局長は、アンゴラとコンゴ民主共和国における都市型黄熱の流行が国家体制で活動を結集し国際支援を強化することを確保すべき公衆衛生上の深刻な事態であると判断しました。しかし、この事態は、現時点では国際的に脅威となる公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)には該当しないとも判断しました。
- 現在の黄熱の流行に関する情報がWHOのウェブサイトで更新されています(http://www.who.int/features/qa/yellow-fever/en/)。
- 一連の情報では、ワクチンの備蓄、ICG(黄熱ワクチン供給国際調整グループ)の支援体制、ワクチンの供給量および分別投与によるワクチン使用法の潜在性などについて述べられています。
- WHOの予防接種に関する専門家の戦略的諮問委員会(Strategic Advisory Group of Experts: SAGE)は、標準用量の1/5の使用量でも12か月間以上にわたり感染から保護できることが示されていることの科学的根拠を検討し始めました。この分別投与として知られる投与方法が、ワクチンが不足する可能性のある現況においては緊急的な使い方として検討されています。
- アンゴラでは、予防接種キャンペーンがルアンダ州で2月の初めに始まり、ベンゲラ州とウアンボ州でも4月半ばに開始され、さらに、5月16日にはCuanza Sul(クアンザ・スル)、Huila(ウイラ)、Uige(ウイジェ)の各州で始まりました。予防接種キャンペーンはCuango(クアンゴ)の地域でも始まり、ヌンダ・ノルテのChitato地域でも計画されています。
- 6月11日の時点で、ICGは9つの州(ビエ、クネネ、ベンゲラ、ウイラ、クアンザ・ノルテ、ウイジェ、ナミベ、クアンザ・スル、クアンド・クバンゴ)の12地域でワクチンを接種するために、黄熱ワクチン230万回分を承認しました。
- 集団予防接種のために、243,690回分のワクチンが、サイーレ州で国境を接するSoyo地域に送られることになっています。集団予防接種のキャンペーンは今週開始される計画です。追加された1,036,500回分の黄熱ワクチンが受けとられ、Coango、Chitato、Soyo地域に使用が指定されています。ルンダ・ノルテ州の)国境地域にあるChitatoとCoangoで集団予防接種キャンペーンが進められています。
- DRCでは、11の衛生地域での予防接種キャンペーンが6月4日に終了し、接種者は約210万人に達しました。キンシャサとKwango州で新たに感染が発生している衛生地域でのワクチン接種キャンペーンのために、新たなワクチンの要求がICGに求められました。
- ウガンダでは、対策のための集団予防接種キャンペーンがKalangala(カランガラ県)で行われ、住民の93.5%がワクチン接種を完了しました。ワクチン接種率は、マサカ県で88%、ルクンギリ県で97%となっています。
- ICGを通じて緊急に対応できるワクチンの数は520万本となっています。すでに流行への対策に割り当てられたワクチンの本数は含まれていません。
出典
WHO.Situation Report, Emergencies. 23 June 2016
Situation Report; Yellow fever
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/246113/1/yellowfeversitrep-23Jun2016-eng.pdf?ua=1[PDF形式:816KB]