2016年06月29日更新 人畜共通インフルエンザ感染症の発生状況
2016年6月13日付けで、世界保健機関(WHO)からヒトと動物に共通するインフルエンザ感染症の概況が公表されました。しばらく発生していなかったインフルエンザA(H5N1)の感染例が発生していますので、インフルエンザ(H5)の記事を抜粋して掲載いたします。
要約
- 新たな感染事例:今回の更新で、新たにインフルエンザA(H5N1), A(H5N6), A(H7N9),A(H1N2)の人への感染が報告されました。
- リスクアセスメントの結果:人と動物に共通する既知のインフルエンザ・ウイルスによる全体としての公衆衛生上のリスクには、変化はありません。動物由来のウイルスによる人への感染は可能性が低いとはいえ、動物を起源とする(インフルエンザの)人への感染は想定されます。
- 報告:新たなインフルエンザ亜型によって引き起こされる全ての人への感染は、国際保健規則(IHR、2005)にしたがって、報告の義務があります。これには、如何なる動物のウイルスも流行していない季節性のウイルスも含まれています。これらの報告からの情報は、今後も、人と動物とに共通するインフルエンザのリスクアセスメントを知らせていくために続けられます。
鳥インフルエンザA(H5)ウイルスのヒトへの感染
現在の状態
新たに鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスの人への感染が検査で確認されたとWHOに報告されました。エジプト・ダカリーヤ県に住む50歳の男性で、2016年5月2日発症しました。患者は、その症状のために、5月10日に肺炎で入院し、オセルタミビルを投与されましたが、5月16日に亡くなりました。患者は、屋内での健康な家禽および農場での集められた糞尿に対して明らかに接触がありました。接触者の調査および追跡では14日以内に新たな患者は報告されていません。鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスはエジプトの家禽に常在しています。
2003年以降、16か国から人における鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染者851人が検査で確認され、WHOに報告されました。このうち、死亡者は450人でした。
この報告では、新たにA(H5N6)ウイルスの人への感染も検査で確認され、WHOに報告されました。中国・湖南省に住む50歳男性で、2016年5月23日に発症しました。彼は5月24日と28日に村の診療所を訪れました。(しかし)、病院に搬送され、報告された時には重篤な容態でした。この患者との濃厚接触者において、さらなる患者は報告されておらず、患者が曝露したウイルスの感染源の調査が続けられています。この患者から得られるウイルスの追加情報が期待されます。
2014年以降、中国からは、鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスの人への感染が検査で確定された患者が死亡者6人を含めて14人、WHOに報告されています。
中国の家畜衛生当局によれば、インフルエンザA(H5N6)ウイルスが、この数か月、この省のあらゆる地方において家禽の中から検出されています。
その他のインフルエンザA(H5)ウイルスは、人に対して感染を引き起こす可能性がありますが、これまでに患者の報告はありません。OIE(国際獣疫事務局)からの報告によれば、さまざまなサブタイプのインフルエンザA(H5)が、西アフリカ、ヨーロッパ、アジアの鳥から検出されています。家禽におけるインフルエンザA(H5N1)ウイルスの流行は、2014年以降、カメルーンで発生しており、いまでも報告が続いています。これまでのところ、この西アフリカでの流行に関連した人への感染は確認されていません。
リスク評価
- 1.人における鳥インフルエンザA(H5)ウイルスにおける新たな感染者が発生する可能性:
人におけるほとんどの感染者は、感染した家禽または生きた家禽を扱う市場などのウイルスで汚染された環境を通してA(H5)ウイルスと接触していました。ウイルスは、動物及び環境の中で検出され続けているため、さらに、人における感染者は予想の範囲内です。 - 2.鳥インフルエンザA(H5)ウイルスの人から人への感染の可能性:
A(H5)ウイルスの小規模の集団感染が、医療従事者などを含めて、これまでにも報告されていますが、これら以外のA(H5)ウイルスは人から人へ感染を持続的に起こす能力を獲得していないことを、現在の疫学的およびウイルス学的な根拠は示唆しています。 - 3.渡航者により鳥インフルエンザA(H5)ウイルスが国際的に広がる危険性:
もし、流行地域から国境を越えて旅行する者がいれば、旅行中又はその到着後に他の国で感染者が発見されるかもしれません。このような事例が発生しても、このウイルスは、簡単に人から人への直接感染を起こす能力がなく、地域レベルで感染が拡がるとは考えられていません。
出典
WHO.Monthly Risk Assessment Summary, Influenza. 13 June 2016
Influenza at the human-animal interface
http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/Influenza_Summary_IRA_HA_interface_06_13_2016.pdf?ua=1[PDF形式:357KB]