2016年07月15日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新22)

2016年7月14日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

概要

  • WHOと加盟国は、さらにジカウイルス感染症の感染伝播の発生レベルを特徴付けることで、集団感染や国内感染の発生、並びに蚊の媒介による感染伝播の遮断を構成する要素の定義を確立させました。この分類の定義は、2016年7月7日の発生状況報告から使われています。
  • 2007年以降2016年7月13日現在、合計65の国と地域で蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が報告されています(2015年以降、合計62の国と地域で蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が報告されています)。蚊の媒介による感染伝播の内訳は以下のとおりです。
    • 48の国と地域で、2015年以降に初めてジカウイルスの流行発生が発生しました。
    • 2016年に、国内感染の高い可能性、又は蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が4か国(インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム)から報告されました。
    • 13か国では、2015年までに地域での蚊の媒介によるジカウイルスの感染の証拠が報告されていました。これらの国では、2016年には感染伝播が報告されていないか、流行は終息しています。
  • 2016年7月13日までの週に、新しく蚊の媒介によりジカウイルスの感染伝播が報告された国はありません。
  • 11か国で、ジカウイルスの人から人への感染伝播が起きていた証拠が報告されました。感染経路は性交渉によるとみられています。
  • 2016年7月13日までに、ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される小頭症やその他の中枢神経奇形が、13の国と地域(ブラジル、カーボヴェルデ、コロンビア、エルサルバドル、フランス領ギアナ、フランス領ポリネシア、マーシャル諸島、マルティニーク、パナマ、プエルトリコ、セルビア、スペイン、アメリカ合衆国)から報告されています。また、WHOのアメリカ大陸事務局には、ジカウイルス感染症が発生しているラテン・アメリカに最近になって旅行したことのある母親から生まれた小頭症児が3か国から報告されています。
  • 2016年7月13日までに、アメリカ疾病対策センターは、先天性障害のあった新生児7例とジカウイルスへの感染の可能性のある検査結果をもつ先天性障害による流産5例を報告しました。
  • ジカウイルスの感染が発生している現状において、世界で15の国と地域 (ブラジル、コロンビア、ドミニカ共和国、エルサルバドル、フランス領ギアナ、フランス領ポリネシア、ホンジュラス、ジャマイカ)マルティニーク、スリナム、ベネズエラ、グアドループ、ハイチ、パナマ、プエルトリコ)で全国的にギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。最近、フランス領ギアナでは、GBS患者4人と重症の神経障害患者1人が確認されており、全員からジカウイルスの感染が確認されました。
  • これまでの調査に基づけば、ジカウイルスが小頭症やGBSの原因であるということで、学術的に意見が一致しています。
  • グアドループでは、ジカウイルスへの感染が確認されたギラン・バレー症候群(GBS)患者4人と検査中のGBS患者12人が報告されました。重症の神経症候群患者5人でも、ジカウイルスへの感染が確認され、確定診断に至っていない神経症候群患者11人でも、感染の可能性が高いか、確定診断が行われました。
  • サン・マルタン島でも、ジカウイルスへの感染が検査確認された神経障害患者1人が報告されました。
  • ギニア・ビサウでは、2016年6月29日に、ダカールのパスツール研究所(IPD)で、12検体のうち3検体でPC-R法検査によってジカウイルスへの感染が確認されました。12人の検体は全てジカウイルスIgMに対しては陰性の結果でした。7月1日には、新たに検体4本が遺伝子配列の検査のためにIPDに送られました。現在、結果待ちの状態です。
  • ギニア・ビサウ政府は、この国のWHO事務局の支援を受けて、確認されたこれらの事態に取り組むために、強いリーダーシップを発揮しています。WCO(世界税関機構?)(原文どおり記載)は対策活動に必要となる物資を支援するために基金を役立てました。WHOのギニア・ビサウへの評価の役割として、国の対策能力を強化するために活動の優先順位を明確にすることへの支援が行われています。
  • 2016年7月13日には、アメリカ疾病対策センターはオリンピックで渡航することによるジカウイルス拡大のリスク評価を発表しました。評価では、オリンピックの開催に関連するジカウイルスの国際的な拡大は、4つの国に特別なリスクがあることを除いては、拡大に大きな変化はないであろうと結論づけました。これら4つの国(エリトリア、ジブチ、チャド、イエメン)の住民は、オリンピックでのウイルスとの接触以外には実質的に感染が発生する国を旅行することがないことが理由です。
  • 2016年2月に、WHOによって開始された感染対策に対する世界戦略の基本骨格には調査活動、感染対策、研究が含まれています。この国際的な公衆衛生上の緊急事態に対処するためにWHOと国内外の加盟国や支援組織が共同で行っている主な活動のいくつかは、2016年5月27日に中間報告が公表されています。現在、2016年7月から2017年12月までの改訂された戦略が、6月17日に公表されました。
  • WHOは、ジカウイルスの発生状況の中でのさまざまな話題に関する新たな助言や情報を作成しています(http://www.who.int/csr/resources/publications/zika/en/)。企業を支援し、計画的なリスクの情報伝達、地域活動を支援するために、WHOは、最新の資料、ニュースおよび情報源を公表し、オンラインで入手できるようにしています。(http://www.who.int/risk-communication/zika-virus/en/)。

リスク・アセスメント

全体として、世界でのリスク評価に変更はありません。ジカウイルスは媒介能力をもつ蚊が生息する地域では、地図の上で拡がりを続けています。いくつかの国やその国の一部の地域では、ジカウイルス感染症の患者が減少する傾向が報告されていますが、警戒体制を強化しておくことが必要です。利用できる証拠に基づけば、現段階で、WHOは全体として流行が弱まる傾向にあるとはみていません。

出典

WHO.Situation Report, Emergencies. 14 July 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/246222/1/zikasitrep14Jul16-eng.pdf?ua=1[PDF形式:637KB]