2016年07月21日更新 腸管出血性大腸菌の発生について-イギリス

2016年7月20日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、イギリスの国際保健規則(IHR)国家担当者は、7月1日に、イングランドとウェールズでのシガ毒素産生性の腸管出血性大腸菌O157ファージ34型の流行をWHOに報告しました。

流行の詳細情報

最初、大腸菌O157患者の報告の増加が、6月21日にサウスウェストのイングランド公衆衛生(PHE)センターによって確認されました。この(患者の)増加を調査するために、6月22日に流行の感染制御チームが召集され、6月24日には、この(患者の)増加に関係する最初の検体で、血清型O157ファージ34型、eae遺伝子(インチミン遺伝子:腸管粘膜接着因子)及びベロ毒素に対する1遺伝子を除くベロ毒素遺伝子2因子陽性のベロ毒素産生性大腸菌を確認しました(以後、流行株と定義)。

6月27日には、全国的に流行株による著しい患者数の増加が確認され、この感染は全国規模の流行と宣言されるとともに、感染が管理されました。全遺伝子配列データの解析によって、分離された株が同じ群内にあることが確認されました。この流行株は、現在、イギリスの畜牛に保菌されている遺伝子株ではなく、最近、地中海地域を旅行した人々で確認されている配列に極めて近いものでした。これは、流行株が感染輸入されたものの可能性のあることを示唆しています。

7月14日現在、患者158人が特定され、そのうち105人が診断確定、53人が感染の可能性が高いと分類されました。これらの患者のうち4人が、まだ病院に入院しています。患者7人で、溶血性尿毒症症候群(HUS)の徴候が報告されました。患者2人が死亡しています。2人では死因として大腸菌感染が記載されていました。

患者は、大多数(91%)がイングランドからですが、イギリス全土に及んでいます。流行は、出張介護や在宅介護施設と繋がる多数の小規模集団での発生によって特徴づけられています。入院患者の割合(40%)が高くなっています。患者は、多くが女性(75%)で18歳以上(91%)(年齢幅は1歳から98歳)です。患者の発生の始まりは、2016年5月31日からで2016年7月5日に及びます。

複数の解析研究の結果から、ミックスサラダの葉、特に、カフェやレストランなどの飲食施設からのサラダの葉の消費が感染と関係しているという証拠が出されています。サラダ製品のサンプル採集と細菌検査が続けられていますが、現在、すべての結果はベロ毒素産生性大腸菌O157に対して陰性でした。

公衆衛生上の取り組み

感染対策としては、さらなる調査結果が出るまで、少数の卸売業者ではミックスサラダ製品に何種類もの輸入された葉野菜を加えることが中断されています。

サウスウェストのイングランド公衆衛生(PHE)センターは、欧州疾病予防管理センター(ECDC)や食品基準庁と欧州委員会と協力しながら、流行の発生源を特定する活動を行っています。また、PHEは、住民向けの感染予防情報を提供し、調査を継続しながら、それらの情報を発信しています。

WHOによるリスクアセスメント

感染源は確認されていませんが、流行がベロ毒素産生性大腸菌O157ファージ34型を原因としていることは確認されました。ベロ毒素産生性大腸菌O157は、1994年から2016年までに患者734人が確認され、その分離株の中で、ファージ34型4は、7番目に多いファージ型でしたが、毎週、春から夏にかけて発生が週2.35人に上昇するものの、平均すると1週間に複数の患者は報告されていません。したがって、観察された(患者数の)増加は著しいものです。同じような(患者数の)増加は、他のヨーロッパ各国からの報告はなく、同じ株はイギリス以外の国では報告されていません。現時点では、流行はイギリスに限られています。WHOは、入手できる最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を評価し、リスクアセスメントを続けています。

疾患の背景

大腸菌は、人間にも恒温動物にも腸管内で普通にみられる細菌です。ほとんどの大腸菌株は無害です。しかし、腸管出血性大腸菌のようないくつかの菌株には、食品由来の重症の疾患を引き起こす可能性があります。

出典

WHO.Emergencies preparedness, response.Disease outbreak news. 20 July 2016
Enterohaemorrhagic Escherischia coli- United Kingdom
http://www.who.int/csr/don/20-july-2016-ehec-uk/en/