2016年07月22日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新23)

2016年7月21日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

概要

  • WHOと加盟国は、さらにジカウイルス感染症の感染伝播の発生レベルを特徴付けることで、集団感染や国内感染の発生、並びに蚊の媒介による感染伝播の遮断を構成する要素の定義を確立させました。この分類の定義は、2016年7月7日の発生状況報告から使われています。
  • 2007年以降、2016年7月20日までに、合計65の国と地域で蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が報告されています(2015年以降、合計62の国と地域で蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が報告されています)。蚊の媒介による感染伝播の内訳は以下のとおりです。
    • 48の国と地域で、2015年以降に初めてジカウイルスの流行発生が発生しました。
    • 2016年に、国内感染の高い可能性、又は蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が4か国(インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム)から報告されました。
    • 13の国と地域では、2015年までに局所での蚊の媒介によるジカウイルスの感染の証拠が報告されていました。しかし、これらの国では、2016年には感染伝播が報告されていないか、流行は終息しています。
  • 2016年7月20日までの週に、新しく蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播が報告された国はありません。
  • 11か国で、ジカウイルスの人から人への感染伝播が起きていた証拠が報告されました。感染経路は性交渉によるとみられています。
  • 最近、感染経路を調査中とするジカウイルス感染症患者1人が、アメリカ合衆国から報告されました。患者は、6月に死亡した患者の家族内接触者です。死亡した患者の血液検体からは、他の患者よりも10万倍も高い濃度のウイルスが見つかりました。
  • 2016年7月15日に、初めて、女性から男性への性交渉によるジカウイルスへの感染が経路として記録された患者がアメリカ合衆国から報告されました。
  • 2016年7月20日までに、ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される小頭症やその他の中枢神経奇形が、13の国と地域(ブラジル、カーボヴェルデ、コロンビア、エルサルバドル、フランス領ギアナ、フランス領ポリネシア、マーシャル諸島、マルティニーク、パナマ、プエルトリコ、セルビア、スペイン、アメリカ合衆国)から報告されています。また、WHOのアメリカ大陸事務局には、最近になってジカウイルス感染症が発生している国に旅行したことのある母親から生まれた小頭症新生児が3か国から報告されています。
  • 2016年7月20日までに、アメリカ疾病対策センターから、先天性障害のあった新生児9例とジカウイルスへの感染の可能性のある検査結果をもつ先天性障害による流産6例が報告されました。
  • 2016年7月20日までに、ジカウイルスの感染が発生している現状において、世界で15の国と地域 (ブラジル、コロンビア、ドミニカ共和国、エルサルバドル、フランス領ギアナ、フランス領ポリネシア、ホンジュラス、ジャマイカ)マルティニーク、スリナム、ベネズエラ、グアドループ、ハイチ、パナマ、プエルトリコ)で、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。
  • これまでの調査に基づけば、ジカウイルスが小頭症やGBSの原因であるということで、学術的に意見が一致しています。
  • ギニア・ビサウでは、2016年6月29日に、ダカールのパスツール研究所(IPD)でのPCR法検査によって、12検体のうち4検体でジカウイルスに陽性であることが確認されました。12検体の全てで、ジカウイルスIgMに対する結果は陰性でした。7月1日には、新たに検体4本が遺伝子配列を確定するためにIPDに送られました。現在、結果を待っている状態です。
  • ギニア・ビサウ政府は、この国のWHO事務局の支援を受けて、確認されたこれらの事態に取り組むために、強いリーダーシップを発揮しています。ギニア・ビサウのWHO事務局は対策活動に必要となる物資を支援するために基金を用立てました。ギニア・ビサウへの学術的評価の派遣団が7月最終週に計画されており、流行の調査を支援し、ギニア・ビサウの準備状況を評価することになっています。
  • 2016年2月に、WHOによって開始された感染対策に対する世界戦略の基本骨格には調査活動、感染対策、研究が含まれています。この国際的な公衆衛生上の緊急事態に対処するためにWHOと国内外の加盟国や支援組織が共同で行っている主な活動のいくつかは、2016年5月27日に中間報告が公表されています。2016年7月から2017年12月までの改訂された戦略が、6月17日に公表されました。
  • WHOは、ジカウイルスの発生状況の中でのさまざまな話題に関する新たな助言や情報を作成しています(http://www.who.int/csr/resources/publications/zika/en/)。企業を支援し、計画的なリスクの情報伝達、地域活動を支援するために、WHOは、最新の資料、ニュースおよび情報源を公表し、オンラインで入手できるようにしています。(http://www.who.int/risk-communication/zika-virus/en/)。

リスク・アセスメント

全体として、世界でのリスク評価に変更はありません。ジカウイルスは媒介能力をもつ蚊が生息する地域では、地図の上で拡がりを続けています。いくつかの国やその国の一部の地域では、ジカウイルス感染症の患者が減少する傾向が報告されていますが、警戒体制を強化しておくことが必要です。利用できる証拠に基づけば、現段階で、全体として流行は弱まる傾向にはありません。

出典

WHO.Situation Report, Emergencies. 21 July 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/246241/1/zikasitrep21Jul16-eng.pdf?ua=1[PDF形式:165KB]