2016年08月12日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新26)

2016年8月11日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

概要

  • 2007年以降、2016年8月10日までに、合計69の国と地域で蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が報告されています(2015年以降、合計66の国と地域で蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が報告されています)。蚊の媒介による感染伝播の内訳は以下のとおりです。
    • 52の国と地域で、2015年以降に初めてジカウイルスの流行発生が発生しました。
    • 2016年に、国内感染の高い可能性、又は蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が4か国(インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム)から報告されました。
    • 13の国と地域では、2015年までに地域内での蚊の媒介によるジカウイルスの感染の証拠が報告されていました。しかし、これらの国では、2016年には感染伝播が報告されていない、又は流行が終息しています。
  • 新しく、カリブ海の英国海外領土であるケイマン諸島で、地域内での蚊の媒介によるジカウイルス感染症が報告されました。
  • 2016年2月以降、11の国でジカウイルスの人から人への感染伝播が起きていた証拠が報告されました。感染経路は性交渉によるとみられています。
  • 2016年8月10日までに、ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される小頭症やその他の中枢神経奇形が、15の国と地域(ブラジル、カナダ、カーボヴェルデ、コロンビア、エルサルバドル、フランス領ギアナ、フランス領ポリネシア、マーシャル諸島、マルティニーク、パナマ、パラグアイ、プエルトリコ、セルビア、スペイン、アメリカ合衆国)から報告されました。新しく、カナダで旅行中にジカウイルスに感染したことに関係する先天奇形が1例報告されています。また、WHOのアメリカ大陸事務局管内で15か国のうち4か国から、ジカウイルスの発生のない国で、しかし、最近になってジカウイルス感染症が発生している国への旅行歴のある母親から生まれた小頭症新生児が報告されています。
  • 2016年8月10日までに、アメリカ疾病対策センターから、先天性障害のあった新生児15例とジカウイルスへの感染の可能性のある検査結果をもつ先天性障害による流産6例が報告されました。
  • 2016年8月10日までに、世界で16の国と地域 (ブラジル、コロンビア、ドミニカ共和国、エルサルバドル、フランス領ギアナ、フランス領ポリネシア、ホンジュラス、ジャマイカ、マルティニーク、スリナム、ベネズエラ、グレナダ、グアドループ、ハイチ、パナマ、プエルトリコ)で、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。新しく、グレナダでジカウイルス感染症が関係するGBSが報告されました。
  • ギニア・ビサウでは、2016年6月29日に、ダカールのパスツール研究所(IPD)でのPCR法検査によって、12検体のうち3検体でジカウイルスに陽性であることが確認されました。12例全てが検査ではジカウイルスIgMに対しては陰性でした。新たな患者の追加検体からもジカウイルスに陽性の結果が出ました。7月1日には、4本全ての検体が遺伝子配列を確定するためにIPDに送られました。現在、結果を待っているところです。また、Bijagos(ビジャゴ)諸島で22本の追加検体が採取されましたが、ELISA法、PCR検査法ともに陰性でした。これらの検体は確認検査のためダカールにも送られています。また、新たに12本の検体が採取されました。こちらは、結果を待っているところです。
  • ギニア・ビサウ西部のGabu(カブ州)では、小頭症2例が報告されました。小頭症新生児2例の家族は、ギニア・ビサウ国外へは旅行していません。この2例に関する調査が続けられています。患者を効率的かつ効果的に発見することを確実に実行するために、ジカウイルス感染症患者の定義について、感染地域の医療スタッフおよび他の地域のスタッフにトレーニングすることが計画されています。
  • WHOアフリカ事務局とギニア・ビサウのWHO事務所幹部からのスタッフによる合同調査団が結成され、優先されるべき活動と現状との解離が確認されました。確認事項は、次のようになっています。緊急対策センターの調整機能および指示権限を強化するための新たな財源確保、疫学および昆虫学上の調査体勢の強化、3段階での検査能力の増強、患者発見・地域活動の導入・感染リスクの情報伝達に関するジカウイルス感染症患者の対策の強化、ジカウイルスとその合併症に対する監視、です。
  • ブラジル・リオデジャネイロ中央公衆衛生研究所の地元当局によって、ジカウイルス検査キットが利用できるようになりました。症状のある、選手、ボランティア、観光客、住民には、検査を受けることが促されています。
  • WHOは、ジカウイルスの発生状況の中でのさまざまな話題に関する新たな助言や情報を作成しています(http://www.who.int/csr/resources/publications/zika/en/)。

リスク・アセスメント

全体として、世界でのリスク評価に変更はありません。ジカウイルスは媒介能力をもつ蚊が生息する地域では、地図の上で拡がりを続けています。いくつかの国やその国の一部の地域では、ジカウイルス感染症の患者が減少する傾向が報告されていますが、警戒体制を強化しておくことが必要です。利用できる証拠に基づけば、現段階で、全体として流行は弱まる傾向にはありません。

出典

WHO.Situation Report, Emergencies. 11 August 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/249518/1/zikasitrep11Aug2016-eng.pdf?ua=1[PDF形式:165KB]